TONE FLAKES Vol.113

関西ライブレビュー

TONE FLAKES Vol.113

2017/01/14(sat)

Osaka / CLAPPER

2017/01/14(sat)

梶原有紀子の関西ライブレビュー

関西No.1レコードショップFLAKE RECORDS主宰ライブ「TONE FLAKES」で体験した奇跡の夜

TONE FLAKES Vol.113

大阪は南堀江にあるレコードショップ、FLAKE RECORDSは洋邦問わず良い音楽しか置いていない。ビルの一室にある店の壁にはレコード、CDがぎっちり並び、傍らに添えてあるPOPを読んでいるだけでも音が聴こえてきそう。この店は、2013年にアメリカのウェブメディアBuzzfeedが発表した「アナタが死ぬまでに訪れて買い物をするべき魅力的な世界のレコード店27選」にも選ばれている。

そのFLAKE RECORDSが定期的に開催しているライブイベントの記念すべき2017年の第1回目『TONE FLAKES Vol.113』が1月14日(土)心斎橋CLAPPERで開催された。この日は、日本のバンドながらこれまでオーストラリアやヨーロッパ、北欧など主に海外をツアーして周り、NYのレーベルからも作品をリリースしている幾何学模様のジャパンツアーの初日(初大阪公演)と、昨年10月にセルフタイトルの最新アルバムをリリースしたKlan Aileenのリリースパーティー。そこに京都の至宝、Turntable Filmsと、北海道が生んだ平均年齢21歳の超新星、Ancient Youth Clubがゲスト出演した。

AncientYouthClub_a

最初に登場したのは、昨年夏に5曲入りの1stEP『For,Emma』をFLAKEのレーベル、FLAKE SOUNDSからリリースした4人組、Ancient Youth Club。鹿児島在住だった2人と、北海道在住の2人がSNSを通じて交流を深めバンド結成に至った彼ら。ceroやミツメとも音楽的に近距離にある彼らは、拠点である北海道の各地はもちろん、東京やここ大阪でも精力的にライブを行っている。昨年よりSoundCloudで公開しているオルタナティブロック色の強い「迷宮少女」は、ライブのオープニングにふさわしい曲。そういった快活な曲もあれば、「stay」のように淡くメロウな曲、映画のようなストーリーを浮かび上がらせる曲など、バンドの持つ魅力をぎゅっと詰め込んだ6曲を聴かせてくれた。4ADレーベル周辺のシューゲイザーやドリームポップと、ボン・イヴェールなどのフォークロックを好む4人の音楽的趣向が溶け込んだ曲も、日本語にこだわった歌詞がしっくりとなじむメロディーも、音の中にくっきりと歌が浮かび上がるボーカルの心地よさも、想像を軽く上回るクオリティ。特に最後の2曲は、陽光溢れる空の下を思わせる「Manhattan」と、夜のとばりが下りた冬空の「Stockholm」というように、それぞれの曲が持っている情景を鮮やかに音で描いてみせてくれた。

turntablefilms_a

続いて京都が生んだハイスペックなフォークロック・バンド、Turntable Films。井上陽介(G&vo)がASIAN KUNG-FU GENERATIONのサポートを務めているのをはじめ、メンバー3人全員がソロや他アーティストのサポートとしても活動している。この日のステージはスティールギター、キーボードのサポートメンバー2人が加わった5人編成。この夜の大阪の冷え込みは厳しく、MCでは雪が降り始めたことに触れて「クソさぶいのに、みんなよう来て。えらいなぁ」と、いつものようにまったりとした口調。それがひとたび演奏が始まれば、抜群の安定感。初の全編日本語詞作品となった最新アルバム『small town talk』からの「Cello」「What you find」、そして、the chef cooks meとのスプリットシングル『Tiding One』から「Pitiful Island」と、ひたすら当たり前のように質の高い良曲、佳曲ばかりを容赦なく鳴らしていく。ザ・バンド、ライ・クーダー、Wilco、コナー・オバースト(ブライトアイズ)あたりにリンクするTurntable Filmsの曲には、フォークやブルース、カントリーの持つ色あせない強靭さが煌めいていて、その曲を熱を込めて演奏しながらも、あくまでも立ち居振る舞いは飄々としている。重厚な曲でさえも時に爽やかに、時に心地よく聴かせてしまうのも、ハイスペックさが成せる技。その持ち味を十二分に知らしめるステージだった。

klanaileen_a

3組目のKlan Aileenは、松山亮(G&vo)と竹山隆弘(Dr)の2人編成になって最初のアルバム『Klan Aileen』を昨年10月にリリース。サウンドチェックを終えた松山が、PAに「ありがとうございます」と片手を挙げ、そのままステージが始まった。最初の一音で世界を変えるバンドって、実はそんなに多くないけれど、Klan Aileenはそういうバンドだった。ギターとドラム。バンドと呼べる最小編成の2人。圧し掛かってくるような轟音。爆音。歌詞のほとんどは平仮名とカタカナで書かれていたはずで、声は聴こえるけれど何を歌っているかはよくわからない。けど、そんなことがどうでもよくなるぐらい、音の圧が心地よい。ゆらゆら帝国、meat eaters、初期ルースターズ、VINES、Pretty Littles…並べて一緒に聴きたいバンドが次々に浮かんでくる。深い酩酊感を覚える「Sleep In A Bright Room」は、曲が終わっても酔いが続いているようで、「pray it loud」のフレーズが祈りのようにも呪いのようにも聴こえる「Astroride」は、フラストレーションを押し流すような静かな音の濁流にいつまでも飲み込まれていたくなる。彼らの曲は、ライブのたびに毎回アレンジが変わるという。知っているはずの曲が毎回ナマの場で違ったものとして鳴り響くなんて、なんという贅沢さ。彼らは現在、東京を中心にライブ活動を行っているけれど、ぜひ関西にも足しげく通って欲しい。そして彼らをまだ知らない人に、Klan Aileenはとんでもなく気持ちよく美しい轟音を鳴らすバンドですよ、と大至急教えたい(自慢したい)。この日会場にいた人はたいていそう思ったに違いない。終わった後の歓声と拍手の大きさがそれを物語っていた。

幾何学模様

圧巻だったのは、最後に登場した幾何学模様。初のジャパンツアーで、大阪での初ライブ。フロアにいるほぼ全員といっていいぐらいほとんどの人が、この日初めて幾何学模様のステージを体験したに違いない。それでも冒頭の「Green Sugar」が終わるのを待たずに、両手を上げて歓声を送る人、演奏に拍手で応える人、指笛を鳴らす人がたくさん。インクレディブル・ストリング・バンドやソフト・マシーンなど、60年代のサイケデリック・ロックやブルース、プログレッシブ・ロックをふっと想起させるダイナミックな幾何学模様の演奏。その演奏に呼応するように、フロアのあちこちで渦巻き始めたいくつもの熱のかたまりが、徐々に合体し、ひとつの大きなうねりになって会場全体に広がっていくのを肌で感じた。その光景にとてつもなくゾクゾクした。これは酔います。ステージの左端にボーカルが位置し、中央にはシタールという配置も独特。長髪を振り乱してヘッドバンギングするようにギターを奏でる姿に、お腹の底からうぉぉっと叫びたくなるような興奮を覚える。今日のライブをオーガナイズしたFLAKE RECORDSのダワさんに感謝の言葉を述べ、最後の曲「Silver Owl」を。それでも続いている拍手と歓声に応えて、本当に最後にもう1曲聴かせてくれた。ギター、シタールのメロディアスな旋律にドラムが加わると、一気に色が鮮やかさを増し景色が変わる。5分、10分を優に超える曲がほとんどながら、初めて聴いたのに遠い昔から知っているような懐かしさを覚えるメロディーに出会い、加速する音に誘われて曲の中にどこまでも潜っていける感覚が気持ちよくて、これがずっと続けばいいのになぁと思っていた。幾何学模様は今後ますます海外での活動が多くなるという。貴重な機会に出会い、素晴らしい音楽体験をすることができたこの日のお客さんは最高に幸せだ。

この日のライブでは、開演前とセットチェンジの間、終演後もライブハウスの中には快適なメロディー、グッドミュージックが途切れることなく流れていて、選曲はもちろんこの日のライブを主宰したFLAKE RECORDSの代表、通称ダワさんこと和田貴博。この日最初に演奏したAncient Youth Clubをはじめ、主宰レーベルからは洋邦不問で質の良い音楽をリリースし、時には海外からバンドを招聘してツアーもやる。

終演後、各バンドの物販スペースには長い列ができていた。行列の前後に並んだ、今日初めてこの場で出会った見知らぬ人と「初めてこのバンドを観て、すごくカッコよくて」とか「家でも曲が聴きたくてCDが欲しい」とか、ライブ後の高めのテンションで会話をする人たち。Klan Aileenのメンバーや、幾何学模様のメンバーたちも、求められて気軽にサインに応じたり、ライブの感想を熱っぽく語るお客さんとフランクに話していた。自分もCDを買って、サインをもらって帰ろうとしたら、たまたま隣のバンドの行列に並んでいる人と目が合って、なぜか同じタイミングで笑いあっていた。特に言葉は交わさないけど、お互いに今夜のハイライトを思い返し、ライブの余韻を抱きしめて帰る。そんな、小さな奇跡のような出来事がこの日のライブではいくつもあった。(梶原有紀子)

セットリスト

Ancient Youth Club

1.迷宮少女
2.Milk
3.Stay
4.Slip out
5.Manhattan
6.Stockholm

 

Turntable Films

1.Cello
2.What you find
3.Pitiful island
4.Summer drug
5.10 days plus one
6.Swollen river
7.Into the water

 

Klan Aileen

1.Ante
2.Fog
3.Sleep In A Bright Room
4.Stop My Life If You Want My Heaven
5.On Your Mark
6.Astroride
7.Adrift
8.Nightseeing
9.離れて
10.死の集まり
11.Happy Memories
12.Fascism

 

幾何学模様

1.Green Sugar
2.Kodama
3.Street of Calcutta
4.Kogarashi
5.Smoke and Mirror
6.Silver Owl

EN
1.Dawn

 

梶原有紀子/関西在住。雑誌『CDでーた』編集を経てフリーに。以降、『Weeklyぴあ 首都圏版』『東京Walker』『Barfout!』他でインタビューやライブレポート。近年は主に『ぴあ関西版WEB』『GOOD ROCKS!』でインタビューなど。執筆を手掛けた書籍『髭(HiGE)10th Anniversary Book 素敵な闇』、『K 10th Anniversary Book Years』、『Every Little Thing 20th Anniversary Book Arigato』(すべてシンコーミュージック刊)発売中。