DAOKO 2017“青色時代”TOUR

関西ライブレビュー

DAOKO 2017“青色時代”TOUR

guest:大森靖子

2017/02/24(fri) 大阪BIGCAT

guest:大森靖子

梶原有紀子の関西ライブレビュー vol.4

DAOKO 2017“青色時代”TOUR 大森靖子をゲストに迎えた大阪公演をレポート

中学時代にニコニコ動画に投稿した楽曲が注目を集め、高校1年の時にインディーレーベルより作品をリリースし、2015年にメジャーデビューを果たしたラップシンガーDAOKO。彼女が今年2月から3月にかけて行ったツアー『青色時代』は、各地で違った顔ぶれのゲストを迎えて開催された。初日の札幌に登場したのは、THA BLUE HERBのトラックメイカーであるO.N.OのMachineLive。次の仙台ではWiennersを迎え、名古屋公演では女王蜂。3月8日、ファイナルとなった東京公演はさユり。その、興味を惹かれる顔ぶればかりの公演の中でもっとも目を引いたのが、日程的にもちょうど真ん中にあたる2月24日、ゲストに大森靖子を迎えた大阪BIGCATでのライブ。大森靖子のニューアルバム『kitixxxgaia』に収録の「地球最後のふたりfeat. DAOKO」でも共演している彼女たちは、過去にもラジオなどで一緒にトークを聴かせてくれる機会もあったけれど、音楽で、歌で、生のステージで対バンするのはおそらく今回が初。果たして、どれだけの熱量を彼女たちが放つのか。結果から先に言えば、今いちばんナマで触れたかったステージをこの夜観ることができた。この日でしかありえないし、この2人にしか成し得ない凄いモノを2人は見せてくれた。

大森靖子

DAOKOと大森靖子がともにリスペクトする椎名林檎の曲が場内に流れる中、予定時刻の19時ぴったりに、ギターを持って大森靖子がステージに現れた。「私が少女になれるようにピンク色をくれ」と、早口でまくし立てるように、“歌う”というより言葉をちぎっては投げ、ちぎっては投げする「PINK」。何の前置きも断りもなく土足でこちらの中にズカズカと踏み込んできて、「ただ私はわんわん泣きたかった 吠えたかった 歌いたかった」と、歌う。喜怒哀楽そのものを「表現する」というより喜怒哀楽が「そのまま」大森靖子の音楽になって、彼女の体から放たれてゆく。それは、「TOKYO BLACK HOLE」も、ギターの音がまるで彼女の中の叫ぶ少女に寄り添うように強くやさしく響く「オリオン座」も、「呪いは水色」も。1曲の中で、怒りに震えてわななく女にもなれば、ヒネた少女のようなナメた声を出したり、「嫌いな人すらいなくてとてもさみしい」とつぶやいたその数秒後に、「いますぐここで脱ぎます?」と首をかしげて見せたり。そんなふうに歌い終えた後に「ありがと」と、にこっと微笑む顔は、絶対的な少女に見える。彼女の歌の中にあるドシャメシャな世界を、1ミリも不思議に思わない。思わないどころか、その感情のどうしようもない揺れや振れや抑えがたい血のざわめき、他にも諸々全部が生々しくて、痛快で、気持ちがいい。妙な言い方をすれば、その感じが「わかる」。音楽は理解するものではなく感じるものだから、「わかる」は御幣があるけれど、かつて初めて彼女がテレビで歌う姿を見た時に「あ、この感じ。何かわかる」と瞬間的に思ってしまった。その瞬間の快感が、彼女の歌う姿に触れる度にどんどん更新されてゆく。

スタンドマイクから離れ、ギターをつま弾き、お客さんの顔を覗き込むようにしながら歌っている時のまなざしは、自分と自分の音楽を望む聴き手を受け入れる準備はとっくにできているんだということを改めて教えてくれたように思う。「成人式に行けない人が私のファンには多い」と、のちに語っていたけれど、そういうサイレントマジョリティの、時には深い悩みに沈んだ声を「代弁する」というより、「そのままでいいんじゃない?」と言ってのけるような軽さも、彼女の音楽を形作っている大きな要素の一つ。重すぎると飛ぶのは難しいけれど、大森靖子の歌にはその軽さがあるからふわりと聴き手のもとへ届いていける。たぶんこの先2度と、この日と同じステージを見られることはない。この日聴いた弾き語りや、とりとめのない、だからこそいつまで止まらないMCも全部、あの場にいた人たちだけが手にすることができたもので、次に彼女がステージに上がった時は、歌い方も声の発し方も目線も、全部が今日とは違ったその時のものになっている。それこそがリアルで、ライブで、だからこそ生のステージは何よりも面白い。

DAOKO

これまで、GREAT3の片寄明人やm-flo、RHYMESTERのMummy-dなど、さまざまな音楽性を持つアーティストがDAOKOの音楽に惹かれ数々のコラボレート作を生み出してきている。その楽曲は映画やアニメの主題歌、挿入歌にもなり、彼女の歌声はメジャーデビュー以前からすでに広い範囲に届き始めていた。

この日のステージには、映像を投影するための薄い幕が下りていて、そこにはDAOKOの映像や彼女のラップのリリックがグラフィックのように映し出されてゆく。その薄い幕の向こうに、2人のマニピュレーターとDAOKO。ゆったりと体を揺らしながら「高い壁には幾千のドア」を歌う彼女の声は、空から降ってくるようなキリッとしたハイトーン。お客さんはじっと聴き入っている。「ぼく」では、あどけなさを残す声で言葉を繰り出すラップのパートと、対照的に歌のパートでは、その声にポトリと一点、シミのように落ちた激情が一気に広がり、感情が露わになる。その刹那の興奮にフロアも大きな歓声で応える。

「すき」「キライ」「大嫌い」「スキ」を繰り返す「ダイスキ with TeddyLoid」。音楽として聴くと言葉は音になるけれど、漢字やひらがな、カタカナを使い分けて書き綴られたDAOKOの詞が映し出されるのを眺めていると、彼女はラップシンガーであると同時に詩人でもあるのだなと気付く。「なんでもあるけどなんにもない」「歩けど在るけど 何にもないよな気になるの」と歌う「ShibuyaK」。タイトルのKは交差点をあらわしていて、実際に歌の中で「渋谷交差点」と歌われて言われている。世界でも有数の、無数の人が行き交う大都会をど真ん中から活写するように歌う声は、透き通るようにはかない。そのはかなさゆえに、街の喧騒に吸い込まれてしまいそうでいて、その実、消えてしまいそうなのは自分の存在のほうで、はかなげに聞こえたDAOKOの歌声は街の中に浮遊しながらも揺らぐことはない。その、不安定に見えるものの奥にある揺るぎのなさはDAOKOの表現の核になっているんだと思う。この曲に続いて披露した「歌舞伎町の女王」は、言わずと知れた椎名林檎の曲。DAOKOは魔法をかけるようにキラキラしたダンスチューンにカバーして聴かせてくれた。

アンコールの拍手に応え再びステージに登場したDAOKOが、「大阪でしか聴けないものが聴きたくないですか?」と、ここで大森靖子を召喚。彼女のアルバム『kitixxxgaia』で共演した「地球最後のふたりfeat.DAOKO」を披露した。大森靖子が言うには、タイトルの「地球最後のふたり」とは、彼女とDAOKOのことなのだそう。DAOKOはラップはもちろん、2人が声を合わせて歌うパートもあり、熟しきる前の女性性と少女性を持ち合わせた2人の高音が生で絡み合う数秒間は、天晴でもあり無性にワクワクさせられた。自信はそれほどないけれど自尊心はなくしていない。誰とでも合わせられるけど、誰にも染まり切らない。そんな自我を持った2人の歌声は痛くも危うくもあり、時に扇情的でもある。歌い終えた後に安心したのか一気にしゃべり出す2人がおかしかった。DAOKOのツアーグッズであるパーカを着込んだ大森靖子は、「ステージで他のアーティストと共演するのは今日が初めて」というDAOKOに「本当?本当?ありがとう!!」と食い気味に反応する。貴重な饗宴の後、“まだ踊れますよね?踊るぞ!”と、ポップなダンスチューンの「BANG!」。そして「もう1曲歌ってもいいですか?」と最後は「ないものねだり」をウィスパーボイスで。「ありがとう!」と笑顔でステージを去る姿にフロアからは「カワイイ!」という声が飛び交っていたけれど、確かにこの夜DAOKOが見せてくれた初々しい青さはキュートでもあり、改めていろんな表情を持った女性であることを感じた。

誰にも邪魔されたくなくて1人になりたいけれど、1人でいるのは寂しい。人のやさしさに触れると嬉しいけど、自分が誰かに優しくしてあげるその方法がわからない。そんなふうに思う瞬間を抱えて毎日を過ごしている人は、たぶん大勢いる。電車やバスの中で、歩きながら、食事をしながらスマートフォンの画面をじっと覗き込んでいる人の数と同じぐらい。そんな、誰にでもある瞬間、感情のひとつひとつを生々しく鮮やかに切り取りながら、それぞれに違った音楽表現へと昇華しているDAOKOと大森靖子。その表現の中に、自分に響く感情の一端を見つけただけで、「あぁ。私、1人じゃないかも」と思えてなんとなくハッピーになる。イイ歳をした自分がそう感じるのだから、彼女たちともっと世代の近いリスナーであれば、さらに切実に親近感を覚えるのかもしれない。自分も含め、そういう人たちにとって、彼女たちの音楽がこの世界にあってよかったと思う。(梶原有紀子)

 

セットリスト

大森靖子

  • 1.PINK
    2.TOKYO BLACK HOLE
    3.over the party
    4.絶対彼女
    5.エンドレスダンス
    6.I&YOU&I&YOU&I
    7.オリオン座
    8.SHINPIN
    9.呪いは水色
    10.キラキラ

 

DAOKO

  • 1.高い壁には幾千のドア
    2.かけてあげる
    3.ぼく
    4.BOY
    5.FASHION
    6.水星
    7.さみしいかみさま
    8.ダイスキ with TeddyLoyd
    9.ME!ME!ME!
    10.ShibuyaK
    11.歌舞伎町の女王
    12.ゆめみてたのあたし
  • EN.
    1.地球最後のふたりfeat.DAOKO
    2.BANG!
    3.ないものねだり

梶原有紀子の関西ライブレビュー

梶原有紀子/関西在住。雑誌『CDでーた』編集を経てフリーに。以降、『Weeklyぴあ 首都圏版』『東京Walker』『Barfout!』他でインタビューやライブレポート。近年は主に『ぴあ関西版WEB』『GOOD ROCKS!』でインタビューなど。執筆を手掛けた書籍『髭(HiGE)10th Anniversary Book 素敵な闇』、『K 10th Anniversary Book Years』、『Every Little Thing 20th Anniversary Book Arigato』(すべてシンコーミュージック刊)発売中。

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