梶原有紀子の関西ライブレビュー

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Def Tech

“IAPANA”Tour 2017

Def Tech

梶原有紀子の関西ライブレビュー

Def Tech「“IAPANA”Tour 2017」大阪公演レビュー

Def Tech「“IAPANA”Tour 2017」
10月10日(火)なんばHatch

Def Tech

今回のツアータイトルのIAPANA(イアパナ)とは、ハワイ語で日本を意味する言葉なのだという。Shenが育ったハワイは、日本で生まれ育ち小さな頃からサーフィンに慣れ親しんだMicroも何度となく訪れていた、Def Techにとってとても大切な土地。アルバムをリリースした後のツアーではなく、タイトル通り、純粋に北海道から最終日である11月25日(土)の沖縄まで日本各地をライブして回るジャパンツアー。ステージの上にはMPCプレイヤー、トラックメイカーのKUMAIこと熊井吾郎と、「AIちゃんのツアーDJとして忙しい人だけど、もうAIちゃんに渡さないから」(Micro)と紹介したDJ HIRAKATSU。そしてDef Techの2人の計4人のみ。とてもシンプルで、まるでDef Techの原形を観ているようなステージ。

秋でも冬でも波にノレる「Gone Surfin’」(2015年『Howzit!?』収録)。きらびやかな音の粒が飛び散るEDMのど真ん中を、まっすぐな言葉に託した2人のメッセージが射抜いていく「Marathon」(2013年『24/7』収録)。曲によって自在に彩りを変えてゆく照明は、まさに目が醒めるよう。「Anniversary」(同)は、リリース当時にダブステップならぬ”ラヴ(=LOVE)ステップ”と彼ら自身が名付けたハイパーなダンスチューン。1月から12月まで四季折々の模様を、時に笑いや皮肉も交えながら歌絵巻のようにつづったこの「Anniversary」を聴きながら、まるでこの場に居ながらにして心が身体を飛び出して広い世界を駆けて旅しているような気分を味わっていた。「8枚目のアルバム『8 Eight』から今、だんだん戻っていってるから」と、最初のMCでMicroが話した。最新の楽曲から始まったこの日のライブは、そういうことだったんだ。

ヒップホップ、レゲエ、ハワイアン、ダンスミュージック。彼らの鳴らす音楽はいろんな呼び方ができるけれど、どんな曲にも揺るぎなくあるのが、歌心。歌心のある歌。歌心のあるヒップホップ。歌心を持った2人。

Def Techの音楽には夏が似合うし、海が似合う。ステージの上にはヤシの木もなければサーフボードもないけれど、彼らの音楽の中には夏の夕暮れ時の海辺の景色や、ビーチではしゃぐ男女や、さまざまな風景があり人がいる。それでも、ここ数年アルバムを作っている時期は1月や2月などの寒い季節なのだと笑って話していた。日々の荒波を乗りこなすことの難しさを、サーフィンをモチーフにさりげなく歌った「Catch The Wave」(2006年『Catch The Wave』収録)のイントロで地鳴りにも似た歓声が沸き起こったように、彼らも彼らのリスナーも、瞬間的な楽しさや快楽だけを音楽に求めているわけではない。いい波が来る時もあれば、そうじゃない時もある日々の中で、時にはダイレクトに気持ちをアゲてくれたり、時には何も言わずに隣にいる。そういう距離感でDef Techの音楽と付き合っているんじゃないだろうか。

作品をリリースした後のツアーなら新しい曲とこれまでの曲がどんなふうに交わって聴こえるのかが楽しみで、作品を携えないツアーであれば、何が飛び出すかどんな曲が聴けるのか、予想も興味も果てしない。

12年前の2005年。テレビCMで知ったDef Techの「My Way」を聴くために、彼らの1stアルバム『Def Tech』を買った。それから干支が一周した今もそのアルバムを聴いている。飾ったところのない、手作り感あふれるブックレットの写真やグラフィティ。「My Way」だけが彼らの特別な曲なのではなくて、当時20代前半だった2人のそれまでとその当時の迸るような思いが1枚のディスクに、ページをめくるブックレットにぎっしり詰め込まれていた。この夜のライブで聴いた「My Way」には、たぶん彼らがこれまで何万、何千回と歌ってきたどの「My Way」とも違う鋭さと温かさと力強さがあったし、それはアンコールに聴けた「Town&Country」(2016年『Eight』収録)も、2010年代の「My Way」ともいえる「Uchiaketekure」(『24/7』収録)もそう。

過去を振り返ったり来し方に思いをはせることは後ろ向きな行為なのではなくて、これまで以上に高く跳躍するためにぐっと力を込めて屈む、あの瞬間と同じことなのだと思う。幸せな時はあっという間に過ぎていくその切なさも悔しさも知っているし、何かを壊す力は新しいものを生み出す力だということも彼らの音楽で分かち合えている。後は地に足つけて前に進めばいいだけで、その時に傍らで鳴っているのはDef Techの曲でありShenとMicroの、この世に二つとないハーモニーなんだと思う。(梶原有紀子)

梶原有紀子/関西在住。雑誌『CDでーた』編集を経てフリーに。以降、『Weeklyぴあ 首都圏版』『東京Walker』『Barfout!』他でインタビューやライブレポート。近年は主に『ぴあ関西版WEB』『GOOD ROCKS!』でインタビューなど。執筆を手掛けた書籍『髭(HiGE)10th Anniversary Book 素敵な闇』、『K 10th Anniversary Book Years』、『Every Little Thing 20th Anniversary Book Arigato』(すべてシンコーミュージック刊)発売中。

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