梶原有紀子の関西ライブレビュー

梶原有紀子の関西ライブレビュー

梶原有紀子の関西ライブレビュー

2017年10月&11月アナログフィッシュ、the band apart、RIZE

アナログフィッシュ「Get it On」
10月21日(土)心斎橋Music Club JANUS

こんなふうに思うことはめったにないのだけれど、アナログフィッシュの久々のライブ「Get it On」に行った時、最初の3曲ぐらいまでを聴いた時点で『もしも今夜、ここでライブが終わったとしても満足した気持ちのまま帰れる』と思えた。それぐらい、1曲1曲の密度が濃かったし、これまで観てきたステージとは一味も二味も違う手ごたえがあった。アナログフィッシュは4月以降、約半年の間ライブ活動を休み、次なるPHASEに突入する準備に入っていた、とMCで話していた。この日のライブは、3人のメンバーにサポートギターが1人加わった4人編成。初めて耳にする新曲もたくさん。これが何とも予想だにしない色や景色を見せてくれて、思わず握った拳に力が入る。まだ知らないことがたくさんあるって素晴らしいな、などと哲学チックなことを思ってしまうのは、アナログフィッシュというバンドが常に批評的な視点を根底に持ちながら豊かな音色を鳴らしている人たちで、彼らの音楽にどっぷりと首まで浸かっているからだろう。「Good Bye Girlfriend」や「There She Goes(La La La)」では特にこの4人編成ならではの、ギターが1本増えたことによる音の多彩さと奥行きの深さを実感する。ライブの翌日は衆議院選挙の投票日でそのことに触れながら、「僕ら、ポリティカルなバンドだから(笑)」と下岡晃(vo&g)が言う。彼を見ているとなぜかR.E.M.のマイケル・スタイプを思い出してしまう。これからも模索しながら進んでいく、とも話していたように思う。模索するっていい言葉。できあがった作品はひとつの結果で、リスナーである自分はそれを受け取って好きなように楽しむけれど、その結果に至る模索過程をこうやってライブで、演奏と音と歌で、それを鳴らす姿で見せて聴かせえもらえることの贅沢さと、それを体感できた喜び。この夜を思い出すだけでも体温がじわっと上がりそう。作品をリリースした後のライブももちろん楽しいけれど、何でもない時に「元気?」と声をかけあうようなライブもあっていい。模索している時に鳴る音も、響く声も、1つの作品でありこの夜の1つの結果だ。お気に入りの服のようにするりとなじむ心地よさと、真新しい靴を履いた時に遠回りして帰りたくなるようなワクワクする感じ。そういう身近な幸福感の連続が、自分の行く先をほの明るく照らしているんだろうなと思うし、アナログフィッシュの音楽にいつもだいたいそういうものを感じる。

the band apart 「Memories to Go release live SMOOTH LIKE BUTTER TOUR」
11月18日(土)心斎橋BIG CAT

アルバム『Memories to Go』を携えたツアーのファイナルだった大阪公演。アルバム冒頭のインストゥルメンタル曲「intro(a broken navigator)」でメンバーが登場し、「ZION TOWN」から「38月62日」まで、まずは『Memories to Go』を曲順通りにプレイ。なんでこんなにもギターの音がきれいなんだろうかとか、曲のちょっとしたニュアンスに「どこかで聴いたことあるかも!」的な既視感を覚えるけど誰にも何にも似ていないバンドだよなとか、たぶん10年、15年前ぐらいに彼らのライブを観た時も同じようなことを思っていた気がする。日本語詞曲が増えた等の変化はありつつも、揺るぎなさや音楽を鳴らす意志の確かさが半端じゃない稀有なバンド。彼らの音楽によって気分が晴れることはあっても逆はほぼありえない安心のブランド。来年で結成20周年になるバンドが「こんばんは。the band apartといいます」と当たり前にあいさつする律義さと面白さ、「こんなに続けてこれたのは、みんなのおかげだよ。やっとわかった」と言える武骨なまっすぐさ。荒井が涼感豊かな歌声で「今宵は 蝉時雨」(「ZION TOWN」)と描き出し、「I’m a broken radio robot」(「38月62日」)というリフレインが空に吸い込まれて終わっていくアルバム『Memories to Go』はこの夏、数あるお気に入りのアルバムの中でもたぶん一番聴く機会が多かった。まったく曲を知らなくても楽しめるライブもいいけれど、アルバムを聴き込んで臨むライブはまた格別に胸躍る。CDで聴く音との違い、生で初めて知る曲の表情やプレイヤーの動き、会場の空気その他全部がその場でしか鳴らない音楽を作っていることに改めて興奮させられた。12月20日に発売される荒井の3rdソロ『Will』、アコースティックセットのthe band aprt(naked)名義による『2』も一足早く聴かせてもらった。やっぱり間違いのないバンドだと思える本当に素晴らしいアルバムだった。

RIZE「RIZE TOUR 2017“RIZE IS BACK”秋季爆雷」
11月18日(土)なんばHatch

RIZEは今年で結成20周年。そのタイミングで7年半ぶりのアルバム『THUNDERBOLT~帰ってきたサンダーボルト~』をリリースし、まさにRIZE IS BACK!座って聴いているだけでこんなにも身体の隅々まで熱くなるものなのかと思うぐらい、2階席の端までもびっしり熱が渦を巻いていた。RIZEとして表立った活動がない期間も金子ノブアキはソロで、KenKenはLIFE IS GROOVEやDragon Ashで、そしてJESSEはThe BONEZで個々に作品を発表し続けステージにも立ち続けている。その3人が集結したRIZEに超えていけないものなんてあるのだろうか。この日はRIZEの元メンバーのu:zoやDragon AshのHIROKI、smorgasの来門によるバンド、ROSがゲスト出演。8人が一緒にステージに上がった瞬間にジワッとこみ上げるものがあったファンも多かったに違いない。JESSEはMCでu:zoがRIZEを脱退した時のことや、K(Pay money To my Pain)にも触れ、さらにアンコールが終わって最後にステージを去る前に金子と肩を組み、「俺が15歳でアッ君が14歳の時にあるイベントで武道館のステージに立って、その興奮のままバンドを組んで、いつか自分たちのお客さんでここをいっぱいにしようぜって話した」と。12月20日の彼らにとって初の日本武道館公演は、20年以上前のまだ中学生だった彼らのその夢が叶う瞬間なのだ。u:zoもPTPも、smorgasや山嵐をはじめRIZEと同じ時代を駆けてきたバンドの存在、これまでの出来事も出会った人も全部がつながっていて、その全部が彼らの音楽の中に溶け込んでいるという事実。その音楽に息づく喜怒哀楽にまみれた人間くささは、時に温かくて時に強く揺さぶりをかけてくる。終演後、金子はこの夜のJESSEを「20年間で今日が一番最高に良かった」と言い、JESSEは「夢を持つことはすげぇ素晴らしいことだとか、想像力を掻き立てることができるようなライブができていたらいいんだけど」と笑っていた。死んでもいいと思えるぐらいの全力で音楽を鳴らし、ありったけの気持ちを言葉で伝える彼らの姿にどれだけ鼓舞され続けているかわからないし、これがある限り生きていけると思う。そういえばJESSEがMCで12月の武道館は最初で最後になるかもしれないと話していた。シリアスな話じゃなく、「モッシュもできない、水も撒いちゃいけない。だから俺ら武道館は1回きりで出禁になるかも(笑)」とのこと。どんなアーティストにとっても1stアルバムは超えられないように「初」と名の付くものは特別だけれど、RIZEの初武道館はいろんな意味で貴重な機会になりそうだ。(梶原有紀子)

梶原有紀子/関西在住。雑誌『CDでーた』編集を経てフリーに。以降、『Weeklyぴあ 首都圏版』『東京Walker』『Barfout!』他でインタビューやライブレポート。近年は主に『ぴあ関西版WEB』『GOOD ROCKS!』でインタビューなど。執筆を手掛けた書籍『髭(HiGE)10th Anniversary Book 素敵な闇』、『K 10th Anniversary Book Years』、『Every Little Thing 20th Anniversary Book Arigato』(すべてシンコーミュージック刊)発売中。

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