ARABAKI ROCK FEST.の初日のトリはサンボマスター。場内で一番広いみちのくステージはたくさんの人で溢れかえっていた。その数、1万人。テントエリアの方まで人がはみ出している。今日は晴れたかと思うと雨が降るという猫の目のような天候。日中からなかなか気温が上がらず、寒い1日だった。とくに夜になってからの気温の下がり具合は半端なかった。翌日、おなじみちのくステージのBRAHMAN「THE COVER」に登場した奥田民生は「昨日は寒くてギターが上手く弾けなかった」「今日は夏のようだ」(それでも寒かった)と語っていた。ARABAKI ROCK FEST.が開催されているエコキャンプみちのくは仙台市内からバスで1時間以上のところにある。あまりの寒さに途中でライブ鑑賞を切り上げる人も少なくなかったと思う。にもかかわらず、みちのくステージの前には溢れかえるほどのお客さんが集まった。サンボマスターのステージに対する観客の熱は凍てつく寒さを吹き飛ばすには十分だった。

この日のサンボマスターのステージのテーマは「I love you & I need you TOHOKU SPECIAL!!!」。2016年は震災から5年という節目の年。ヘッドライナーを誰にするか、いろいろな考えがあったと思う。そのなかでサンボマスターが抜擢されたのは、猪苗代湖ズの存在が大きい。猪苗代湖ズは「福島のために歌いたい」と、サンボマスターの山口隆、TOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美、THE BACK HORNの松田晋二、クリエイターの箭内道彦で結成。

サンボマスター

NHK紅白歌合戦にも出場した猪苗代湖ズは震災後のアクションの象徴となった。翌日のトリはBRAHMAN。彼らは震災後、東北ライブハウス大作戦を展開。東北に本当にライブハウスをオープンさせてしまった。活動はそれだけにとどまらず、幡が谷再生大学を立ち上げ、幅広く活動を行っている。今年は震災から5年目。その節目の年に、サンボマスターとBRAHMANが各日のトリをつとめることになった。しかしながら、あえてそれを全面に謳っていないところがARABAKI ROCK FEST.たるところ。あくまで主体は音楽。それ以上でもそれ以下でもない。「それ以上」の部分は、演じるミュージシャンに、そして受け取るオーディエンスに委ねられている。あえて作った距離感が、あえて作った隙間が、参加したミュージシャンやオーディエンスの物語が入り込む余地となる。それぞれがどうやって震災後の物語を紡ぐのか。そこが大事なのだ。これだけたくさんのお客さんが、恐ろしく寒い中、押し寄せたのは、豪華なゲストのおかげだという側面も多分にある。しかしここに集まった以上、このお客さんの心のなかには、それぞれ震災後の物語を抱えていると思う。

サンボマスター

ステージにはサンボマスターが登場。山口隆(Vo,G)が「今まで一番バスが大事だと思っていた。だけどバスより大事なものがある」といい、「バスより大事」と叫ぶ。「バス」とは帰りのシャトルバスのことだ。寒いなか、早く帰りたいと思うお客さんもいるだろう。しかしここにはもっと大事なものがあるという山口なりのアピールだ。「バスより大事」の次に発せられたのは「今が大事」というメッセージ。

サンボマスター

それはいつしか「今、大事」コールへと発展。この「今、大事」というワードがこの日のテーマとなった。「奇跡を起こせよ!」という叫び声と共に、最初のゲスト、キュウソネコカミがステージに招かれる。曲は「ミラクルをキミとおこしたいんです」。1曲目から場内はヒートアップ。1万人が大きくうねる。その勢いのまま、MAN WITH MISSIONのトーキョータナカを呼び込み、やたらハイパーな「できっこないを やらなくちゃ」を演奏。

サンボマスター

サンボマスターの体当たりの演奏が異常なほどの熱を作り上げていた。それがピークに達したのは10-FEETのTAKUMAが登場し、演奏された「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」。キュウソネコカミ、トーキョータナカも加わり、前半のクライマックスへ突入。震災5年目という重いテーマのもとで、彼らがやれることは、歌を届けること、そしてパフォーマンスを届けること、その2つのことに持てる力を振り絞っていた。ある意味、今年のARABAKIでトリを務めることは重責だ。彼らは狂熱のパフォーマンスでそれに応えようとしていた。

サンボマスター

サンボマスター

そしてライブは後半へと突入。ステージに登場したのは東京スカパラダイスオーケストラだ。2014年に新木場コーストで行われたイベント「男どアホウ サンボマスター」でも共演したこの2バンド。演奏されたのは「そのぬくもりに用がある」。一見ミスマッチのように思えるが、ホーン・セクションがサンボマスターのソウルな部分と共鳴し、曲をよりゴージャスにアップデートしていた。

サンボマスター

そして山口隆の「クイーン・オブ・ソウル!」という呼びこみと共に、今夜のゲストのオオトリを迎える。1万人のオーディエンスが冷たい空気を熱く震わす。そこに和田アキ子が登場した。芸能界の重鎮としてではなく、情報バラエティの御意見番としてではなく、「クイーン・オブ・ソウル」として、ARABAKIのステージに上った。ステージに登場した和田アキ子は、寒さのなかでステージを観ている客を和ませようと「デカいから後ろの方でもよく見えるでしょ?」と笑わせる。

サンボマスター

隙のない気遣いに、万人を相手にテレビで闘ってきたタレントのタフネスを垣間見たような気がした。サンボマスター、東京スカパラダイスオーケストラ、和田アキ子でうたわれたのは「あの鐘を鳴らすのはあなた」。サンボマスターもカバーしている名曲。ロック・ファンを前にして、圧倒的な迫力で歌い上げる和田アキ子は、まさに日本の「クイーン・オブ・ソウル」だった。

サンボマスター

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前半でもとにかくやんちゃに暴れるサンボマスターを徹底的に観せる。後半の「そのぬくもりに用がある」と「あの鐘を鳴らすのはあなた」ではソウル魂をストレートにぶつけてくる。サンボマスターが持つ音楽性を、それぞれのテーマに合うゲストを招くことによって、わかりやすく引き出したステージになった。本編最後はサンボマスターの3人で「ロックンロール・イズ・ノット・デッド」を熱演。最後に3人だけのロックンロールを披露し、ステージを降りた。

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そしてアンコール。ARABAKI ROCK FEST.初日の最後を飾ったのは、山口隆、松田晋二(THE BACK HORN)、渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET)、箭内道彦(クリエイター)の福島県出身者で結成したバンド、猪苗代湖ズ。東日本大震災から5年、そしてARABAKI開催直前の熊本地震。福島から東北へ。福島から熊本・大分へ向け、「I love you & I need you ふくしま」を熱唱した。ここに横たわるリアリティは東北のフェスだからこそなし得ることだろうし、そういう役割をあえて引き受けたARABAKI ROCK FEST.とサンボマスターをリスペクトしたい。そして何よりもこのコンサートは、「今、大事」というメッセージのもと、恐ろしく寒いなか、最後までステージを観ていたオーディエンスなしには成立しなかった。1万人の大歓声は福島へ東北へ熊本へ大分へと向かって放たれたのだ。(森内淳/DONUT)

サンボマスター

Photo by ARABAKI ROCK FEST.16 OFFICIAL

セットリスト(ゲスト)

  • 1.ミラクルをキミとおこしたいんです(キュウソネコカミ)
  • 2.できっこないを やらなくちゃ(トーキョータナカfrom MAN WITH MISSION)
  • 3.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ(TAKUMA from 10-FEET/トーキョータナカfrom MAN WITH MISSION/キュウソネコカミ)
  • 4.そのぬくもりに用がある(東京スカパラダイスオーケストラ)
  • 5.あの鐘を鳴らすのはあなた(和田アキ子/東京スカパラダイスオーケストラ)
  • 6.ロックンロール・イズ・ノット・デッド

アンコール

  • 7.I love you & I need you ふくしま(猪苗代湖ズ)

ARABAKI ROCK FEST.16 レビュー

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