ARABAKIのTSUGARUステージで2日にわたって、アルバムを1枚丸ごとカバーするという企画が行われた。自らの作品をステージ上で曲順どおりに再現するライブはよくある。つい先日もブライアン・ウィルソンが『ペット・サウンズ』を再現するライブを行ったばかりだ。ブルース・スプリングスティーンもライブごとに違うアルバムを再現している。今回の企画はそれとは根本的に違う。似て非なるものだ。ARABAKIの企画は、自分たちのアルバムではなく、他者のアルバム(名盤)をカバー(トリビュート)するというものだからだ。今回、白羽の矢が立ったのはサニーデイ・サービスとシアター・ブルック。サニーデイ・サービスが選んだのははっぴいえんどのファーストアルバム『はっぴいえんど』。シアター・ブルックが選んだのはデヴィッド・ボウイの遺作『★(Blackstar)』。どちらも自分たちがリスペクトしているアーティストだ。それだけにステージに至るまでは大変な苦労があったと思う。

サニーデイ・サービス

まずは初日。サニーデイ・サービスが登場。カバーするははっぴいえんどのファーストアルバム『はっぴいえんど』。通称「ゆでめん」。1970年8月にリリース。いうまでもなく日本語のロックを確立したとされる名盤。アメリカン・ロックなサウンドと日本語の歌詞が見事にマッチしている。その頃は日本語のロックはロックじゃないという論すら存在した。日本語の歌詞が来ると、フォークに寄ったり歌謡曲に寄ったりしたものだ。そこをはっぴいえんどは才能とセンスで突破していった。鈴木茂(G)大滝詠一(G,Vo)細野晴臣(B,Vo)松本隆(Ds)というそうそうたるメンバーを考えれば、『はっぴいえんど』が革命的な作品になったのも当然かもしれないが。本人たちも、完成後、日本の音楽シーンに足跡を残せたという手応えを感じたそうだ。

サニーデイ・サービス

しかしながらサニーデイ・サービスが登場する前夜、1990年代において、はっぴいえんどが今のような評価を受けていたかというとそうではない。もはや70年代は遠く、85年以降に登場した日本のロックバンドの大衆化のなかで、はっぴいえんどと音楽リスナーの距離も決して近くはなかった。サブカルシーンでは普遍的な賞賛が存在したが、それを当時のバンドブームに湧く音楽リスナーが共有していたかというとそうではない。そんななか、サニーデイ・サービスは、はっぴいえんどへのリスペクトを全面に打ち出して、登場した。サニーデイ・サービスによってレジェンド・はっぴいえんどの存在はリスナーに近づいた。それが再評価のきかっけになった。逆に、90年代において、はっぴいえんどに着目し、それを自分たちなりに消化し、オリジナルの楽曲を創造したサニーデイ・サービスのセンスは凄いと思うし、そういうことがあったからこそ、曽我部恵一は今の普遍性を獲得し得たのだと思う。

サニーデイ・サービス

この日のメンバーは曽我部恵一(G.Vo)田中 貴(B)鈴木正敏(Ds)木暮晋也(G)高野 勲(Key)の5人。緊張した面持ちで演奏をスタート。1曲目の「春よ来い」から2曲目の「かくれんぼ」……曲順通りに、一曲一曲丁寧に演奏される。アレンジを大きく変更することなく淡々と楽曲に向かっていく。2日目のシアター・ブルックのときもそうだったが、ステージ上にはなんともいえない緊張感が漂っていた。それが普段のライブとは違うことを示していた。オーディエンスも「のり」というより「聴き入る」という状態に近かった。解放感満載の野外フェスで聴き入る。ARABAKIの全ステージのなかで、この時間のTSUGARUだけが異空間を作り出していた。だからこそ、両バンドのファンにとって、たまらないステージになったと思う。普段のライブではお目にかかれないパフォーマンスだ。10曲目の「はっぴいえんど」、11曲目の「続はっぴーいいえーんど」が終わったとき、ステージには安堵感が覆った。その瞬間、聴き入っていたオーディエンスからは万雷の拍手が。まるでクラシックのコンサートの終わり方のようだった。アンコールは「はいから・びゅーちふる」。最後は緊張感をあざ笑うかのように、人をくったような選曲で、オーディエンスをなごませた。ちなみにこの曲は、1971年11月に発表されたはっぴいえんどのセカンドアルバム『風街ろまん』に収録されている。(森内淳/DONUT)

セットリスト

2016年4月29日(金)

サニーデイ・サービス<はっぴいえんど『ゆでめん』トリビュートLIVE>

  • 1.春よ来い
  • 2.かくれんぼ
  • 3.しんしんしん
  • 4.飛べない空
  • 5.敵タナトスを想起せよ!
  • 6.あやか市の動物園
  • 7.12月の雨の日
  • 8.いらいら
  • 9.朝
  • 10.はっぴいえんど
  • 11.続はっぴーいいえーんど

 Encore

  • 12.はいから・びゅーちふる

アラバキ16トリビュート・ライブ

サニーデイ・サービス、『はっぴいえんど』トリビュート・ライブ

シアター・ブルック、『★(Blackstar)』トリビュート・ライブ

サニーデイ・サービスPHOTO

サニーデイ・サービス

サニーデイ・サービス

サニーデイ・サービス

サニーデイ・サービス

サニーデイ・サービス

ARABAKI ROCK FEST.16 レビュー

ロック・フェス特集TOP

初日のトリは、サンボマスターとクイーン・オブ・ソウルが熱唱!

ARABAKI ROCK FEST.16の最後を飾ったBRAHMAN「THE COVER」

サニーデイ・サービスがはっぴいえんどのファースト・アルバムをトリビュート!

シアターブルックがデヴィッド・ボウイの遺作をトリビュート!

ロックンロールの救世主GLIM SPANKYがHANAGASAを熱狂の渦に叩き込む!

東北の青空にブルーズを響かせたDrop’s

HEATWAVE×Rei、ベテランバンドと新人アーティストの奇跡のコラボが実現!

 

BAND-MAID×ZIPPO

ZippoとBAND-MAIDがコラボ!メンバー書き下ろしのオリジナルデザインZippoライターを発売

期間限定受注生産&シリアルナンバー入り
予約申し込み:2017年10月16日(月) 22:00まで

READ MORE