FUJI ROCK FESTIVAL’16

「FUJI ROCK FESTIVAL」は何かと不便なフェスだ。トイレは並ぶしステージ間の距離はあるし、30度を超える日差しに焼かれる日もあれば一日中、雨に打たれっぱなしの日もある。あれ観ようこれ観ようと綿密な予定を立てれば立てるほど、それを100パーセント実現できた試しは一度もない。野外フェスと銘打たれたイベントは数あれど、フジロックは野外どころか山の中。それなりの準備が必要だ。会場に集まるのは音楽好きな人たちだから人はやさしい。そしてもちろん音楽は楽しい。しかし自然は厳しい。だけれど、厳しさだけでなく、吹く風の心地よさや川の水の冷たさ、深緑の色など、自然がもたらす息吹も同時に心と体にしみ込んでくる。いつの間にか不便さには慣れ、その場に本能が反応するような不思議な感動が生まれる。その感動にやられて20年。いまやフジロックを中心に1年を過ごすほど、FRFは私の人生においてスペシャルな存在となっている。

FUJI ROCK FESTIVAL’16

台風が直撃した初年度、富士の麓で開催された1997年は“フェスティバル”というものをまったく理解していなかったうえに、まあなんとかなるだろうという甘い考えで参加したため、認識と準備不足によって大げさでなく死ぬかと思った。その初参加から翌年、打って変わって酷暑のなか開催された東京・豊洲を経て3回目からは苗場へ。「音楽と自然の共生」というフジロックの理念は、ここからようやく根付いていったと思う。これはやはり1回目の壮絶な事実と経験があってこそ。参加者たちも自発的に、何が必要で何が使えて何が相応かなど情報共有をしながら徐々に装備を整えていったわけだが、その順応力には毎年驚かされる。雨がパラつくとさっと身支度をはじめ、会場にはカラフルなレインウェアの花が咲く。フジロックを楽しむことは、アウトドアで過ごすということを知ることだ。どう過ごすかを自分で決める楽しみを知ることだ。そして、想像して体感することだ。

お目当のミュージシャンのライブだけでなく、山の中を歩いて行くと、行く先々で鳴っている音楽との新たな出会いがある。お腹が空いたらご飯を食べ、喉が乾いたら水分を取り、眠くなったら芝生で寝てもいい。ドラゴンドラに乗って山頂に行けば、愉快な着ぐるみと澄んだ空気が迎えてくれる。いつだったか、私はのんびり過ごしすぎてあまりライブを見ずに終わった年もあった。どんな1日にするか、でなく、どんな1日になるか。それくらいの気構えで参加してみると、また違った時間が流れるのかもしれない。

FUJI ROCK FESTIVAL’16

また、200組を超えるラインナップには、フジロックならではのこだわりが込められていることが大きな魅力だ。これまでも若手からベテランまでロックの歴史を辿れるようなステージ構成や、世界各国からのワールドミュージック、ジャムバンドの招聘をはじめ、なんといっても会場にはそこかしこに横たわる音楽文化へのリスペクトであふれている。これはフジロックの思想そのものだ。環境問題や様々な取り組みなども含め、その思想や理念は音楽ファンの心を強く惹きつける。こだわりのないものに惹かれる人などいない。かつてジョー・ストラマーが毎年キャンプで参加し、忌野清志郎があらゆる名義で最多出演を果たし、パティ・スミスが「beautiful」と感嘆し、ストーン・ローゼズのイアン・ブラウンがお客さんとして遊びに来たりする。だいたい、初年度では骨折していたレッド・ホット・チリ・ペッパーズのボーカル、アンソニーが、それでも「出る!」と言って来てくれたフェスなのだ。そのチリ・ペッパーズが、フジロック20周年、最終日のヘッドライナーを飾ってくれることが多くを物語っている。

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ

今回、土曜日のヘッドライナーを務めるベックが「新幹線で帰りたい」という理由で通常のトリの時間が早まったという話には笑ったが(そのおかげで「FRF 20th SPECIAL G&G Miller Orchestra」というスペシャルステージが決まった)、今年は金曜夜の「オールナイトフジ」、土曜夜の「アレックス・パターソン」など深夜のステージも例年以上に大充実。主催・スマッシュの日高社長曰く20周年の今年は「寝ないフジロック」がテーマだそうだ。

日高社長が思い描いた理念をスタッフとともに形にしたフジロックは、いまや参加者それぞれにとっての「私とフジロック」となった。フェスティバルという文化を日本に定着させ、自然の脅威と驚異を同時に体感できるフェス。親子世代での参加も年々増え、今年は中学生以下入場無料(保護者同伴に限り)になったことも好評。7/24(日)1日券に続き、3日通し券・後2日券(土・日)、及び同日の駐車券はすでに完売。残るチケットもいつ売り切れてもおかしくない状況にあるとのこと。多くの来場者が苗場に集まることだろう。トイレ並ぶだろうなあ。おまけに梅雨明けもしていない。ああ、今年も何かと不便で想像力をかきたてられる3日間がはじまる。楽しみで楽しみで仕方がない!(秋元美乃/DONUT)

BECK

ベック

SigurRos

シガー・ロス

「SMASH go round 20th Anniversary」FUJI ROCK FESTIVAL’16

  • 期間:2016年7月22日(金)、23日(土)、24日(日)
  • 会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
  • 時間:9:00開場 11:00開演
  • チケット:現在購入できるチケット、および当日券については公式サイトをご覧ください。

FRFオフィシャルサイト http://www.fujirockfestival.com