THE NEATBEATS

THE NEATBEATS ライブ・アルバム『LIKE THE CAVERN LIVE! REEL NO.3 & NO.4』のライナーノーツを書かせてもらった。今回、Mr.PANの希望でRock isに転載することになった。今回のライブ・アルバムはいろんな意味で画期的な内容になった。Mr.PANの動画インタビューと共に読んでいただければ、と思う。(森内淳/DONUT)

 LINER NOTES


THE NEATBEATSのライヴ盤第2弾は2016年11月26日(土)27日(日)の2日間、新宿レッドクロスで収録された。この2日にわたるワンマンライヴは彼らが「生音ライヴ」と呼んでいるスタイルで行われた。「生音ライヴ」とはPAシステムを介さずに、ギター、ベース、ヴォーカルのアンプから出たそのままの音(ドラムは生音)を聴かせるライヴのこと。PAが存在しなかった60年代初期のビートルズやローリング・ストーンズがやっていたスタイルだ。「生音ライヴ」の難しい点はPAのオペレーターがいないために、全体の音のバランスをバンド側で調整しなければならないところ。プレイヤーは客席で「出音」を聴いているわけではないので、バランスのとれた演奏を聴かせるには、なかなかのハードルだ。

一度「生音ライヴ」の感覚を体得してしまうと、それはバンドにとって大きな武器になる。「生音ライヴ」を観た音楽リスナーは、誰もが音の立体感に圧倒されるに違いない。ひとつひとつの音が弾け、躍っている。本当に素晴らしいサウンドだ。この音の中にいるだけで、音楽リスナー冥利に尽きる、と思えてしまう。PAの平坦な音に慣れたオーディエンスがこのライヴを観たら、カルチャーショックを受けるだろう。60年代、ロックンロールが世界を席巻したのも無理はない。と言うか、この音こそがロックンロールだ。サウンド面のみで言うと、現代のポール・マッカートニーのライヴよりも、ニートビーツの「生音ライヴ」の方が、ビートルズのサウンドを捕まえている。だから、中には「生音ライヴ」にしか来ないお客さんもいるという。

その「生音ライヴ」をニートビーツはライヴ録音すると聞いた時、このサウンドをCDで表現するにはとてつもなくハイグレードなシステムが必要なのではないか、と思った。ところが彼らがレッドクロスに持ち込んだのは50年代のアンペックス(Ampex)製のプリアンプとレコーダーだった。使用するテープは1/4オープンリール・テープ。フルスピードではなくハーフスピードでレコーディング。10インチのテープで1本およそ60分ほど録音できる。それをコンサート当日3本用意した。そのレコーダーはステージ上手側に設置され、60分ごとにMr.PANがステージの途中でテープをかけかえるという実にアナログなレコーディングとなった。

「アンプのスピーカーの前に立てたマイクはBBCセッションで使用されていたものと同じマイクです。それがプリアンプに集まってくるわけですけど、そのプリアンプから1本コードが出てきて、それがアンペックスのレコーダーLINE INに入るわけです」(PAN)

トラック数がひとつということは後でヴォーカルやギターの音を個別に上げたり下げたりはできない。まずこんなことは普通のレコーディングではやらない。半世紀以上前、ビートルズがハリウッド・ボウルのライヴを録音した時ですら、3トラックのレコーダーを使用していた。今は21世紀だ。

「だからライヴのまんま(笑)。調整ができない本当のライヴ・レコーディング(笑)。マスタリングの時点でイコライザーをいじるくらいしかできない。しかも50年代のイコライザーなんで、あらかじめ全部設定されているんです。そこをオンにするかオフにするか。ベース(低音)オンとか、トレブル(高音)オンとか、そういうレベルなんで、全部で3パターンくらいしかない」(PAN)

この古めかしい機材とたったひとつのトラックでは  「生音ライヴ」の立体感は再現できない。そのかわり、本作では「生音ライヴ」のもうひとつの特徴、即ち臨場感や生々しさ、ロックンロールの爆発感が全面に押し出されている。

「ブート感とか海賊盤のような感じを出したかったんですよ。例えば、ビートルズの『Live at the Star Club in Hamburg,Germany 1962』とかヤードバーズの『FIVE LIVE YARDBIRDS』とか。あの感触に持って行きたかった。ロックンロールの性急感と荒くれ感の一番ピークがこのライヴ盤だという」(PAN)

ビートルズの『Live at the Star Club』は非公認のライヴ盤だ。録音状態はひどいものだがロックンロールの爆発力を知る上ではこれ以上にない作品だ。

Star Clubに立ち込める煙草やアルコールまで匂ってくるようだ。本作も同じような特徴を持っている。整った録音しか聴いたことがないリスナーにとっては、もしかしたら伝わりにくいところもあるだろう。しかし多くのロックンロール・リスナーが『Live at the Star Club』にハマっていったように、本作もやがてはロックンロールの問題作として、音楽リスナーに広く認識されるようになると思う。

「『Live at the Star Club…』と『FIVE LIVE YARDBIRDS』。これをわかる人は少ないですよ。クロマニヨンズのマーシー(真島昌利)ぐらいじゃないかな、喜ぶの     (笑)。果たして何人くらいがニートビーツのライヴ盤の良さをわかるのかなっていう。だいぶ玄人受けするライヴ盤になったなぁ、と(笑)。ただ、なんかすごい激しいな、と思われるのは間違いないと思うんですよ。そういう感覚はみんな持ってくれると思いますね」(PAN)

ニートビーツはなぜ2017年にこのような作品をリリースしようと思ったのだろうか。その疑問をMr.PANにぶつけたところ、「40歳あたりを過ぎると、みんなこういう乱暴なことをしなくなると思うんですよね。それをあえてね、やってみたかった」という答えが返ってきた。2日間でおよそ80曲を録音し、その中から40曲ほどがチョイスされた。その選曲の基準も本作のテーマに沿ったものだった。

「普通は一番いい演奏を選ぶじゃないですか。その逆をいこう、みたいな(笑)。ちょっとこれ間違えてるな、みたいなのを選びました(笑)。『FIVE LIVE YARDBIRDS』でも間違えてるからね。キース・レルフがハーモニカのキーを間違えて、途中で切り替えているから(笑)。それぐらいの感じがいいっていうか。だからテープもハーフスピードでまわしたんです。フルスピードでまわすと、この荒くれ感は絶対出ない。歪みも薄くなるし、総合的に言うと雑さが全くないんですよ。ものすごく音質が良くなる。それはなんか違うな、と。だからそういうことも全部わかった上でこの音を狙ったというか。狙い通りですよね」(PAN)

ローリング・ストーンズのブルーズ・アルバム『BLUE & LONESOME』はバンドが次のフェーズに進むための起爆剤としても機能している。本作にも同じような意味合いを見出してしまう。バンド結成20年とはそういう時期なのかもしれない。

「この荒くれ感をリスナーだけではなく、プレイヤーの人にも伝えたい。プレイヤーとしてやっている人たちはこの辺のことを敏感に感じることができると思う。このライヴ盤をカッコいいと言わせたいですね」(PAN)

取材・文/森内淳(DONUT)


THE NEATBEATS『LIKE THE CAVERN LIVE! REEL NO.3 & NO.4』

  • リリース:2017/3/22(水)
  • 品番・価格:MSCD-085/6 MAJESTIC SOUND RECORDS ¥2,600 (税抜)
  • 形式 : 2枚組CD (限定盤)
  • THE NEATBEATS live album『LIKE THE CAVERN LIVE! REEL NO.3 & NO.4』
  • 収録曲:
  • (DISC 1)
    RUN CHICKEN RUN/FARMER JOHN/YAH YAH YAH/明日が来なけりゃいい/YOU CAN’T JUDGE A BOOK BY THE COVER/I WANT YOU/TWISTIN’ TIME WITH YOU/ SWEET CHERRY PIE/I WANT TO BE YOUR DRIVER/YOU’VE GOT WHAT I WANT/オレに任せろ/ TREAT HER RIGHT/BLUE BLUE BLUE/HEY 彼女/(DO THE) GLOBAL TWIST/甘いジュース/YOU’RE SO FINE/噂の男/DON’T YOU JUST KNOW IT MEDLEY/LIES/LITTLE BITTY PRETTY ONE/黒いジャンパー
  • (DISC 2)
    SHAKIN’ THE NIGHT/DR.FEELGOOD/ハートをわたそう/お願いBABY/TWISTIN’ THE NIGHT AWAY/HIPPY HIPPY SHAKE/HAMBURG TWIST/MAMA TALK TO YOUR DAUGHTER/MY BONNIE/SHAKE/I’M GOING DOWN THE LINE/TWIST AND SHOUT/ I’M GONNA SIT RIGHT DOWN AND CRY/KANSAS CITY/ ONE FINE DAY/MASHED POTATOES/I CAN TELL/THAT IS ROCK & ROLL/TWISTIN’ DAY/BABY LET’S GET SHAKE/MY BABE (REHEARSAL TAKE)/HELLO JOSEPHINE (REHEARSAL TAKE) 全44曲

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