Drop's 中野ミホの「まほうの映画館」
最終回:「あなたはどんな花になったんだろうね。ハロルドとモード」
みなさんハロー。
あぁ、また今年もこの季節がやってきましたね。十二月。
あと一週間で、クリスマス!
一年でこの時期ほど、慌ただしくて非日常でハッピーなときはないよね!
寒くてもこころは生き生き、うきうきしています。冬大好き。
さて、今月は
わたしが今までの人生で観た中で、最も好きかもしれない!映画について書きます。
なんでそんな急に一番のものを書くかと言いますと
それは……今月で最終回だから!! 涙
うぅ。
では、そんな大切な作品はこちら。
『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』(『Harold and Maude』)です。
1971年、アメリカの作品。
監督はハル・アシュビー、主演はバッド・コート、ルース・ゴードン。
音楽はキャット・スティーヴンス。
主人公ハロルド(バッド・コート)は、裕福な家庭に生まれた19歳の少年。
友達もおらず、母親の前で様々な形の自殺の真似事(けっこうリアル)をすることと、他人の葬式に参列するのが趣味。
母親に買ってもらった新車も霊柩車に改造してしまうし、お見合い相手の前でも自殺のまねをするほどのひねくれ者。
ある日、他人の葬式に参列していたとき、老婦人に声をかけられる。
彼女はモード(ルース・ゴードン)、79歳。ハロルドと同じく見知らぬ人の葬式に参列するのが趣味だが、好奇心旺盛で、生きる力に満ち溢れたキュートな人。
彼女の言葉や行動にふれて、徐々に生きることに希望を見出し始めたハロルド。
やがてふたりは自然に惹かれあっていきます。
そしてモードの80歳の誕生日、ハロルドは彼女にプロポーズしようと計画するのですが……。
という、ちょっと変わった、愛おしいふたりのラブストーリーです。
この作品に出会ったのは、たぶん19歳くらいのとき札幌にいたころによく通っていたミニシアター、「シアターキノ」で、たしか映画館の会員になると映画のポスターとかがもらえたのね。
それで私が会員になったときにもらったポスターを、止めるために外側に巻いてあった紙、それがこの映画の特集上映のチラシだったのです。笑
その時にはもう上映は終わってたんだけれど。
なんか気になって観てみたら、今まで出会ったこともないような素敵な映画だった。
なんだかもう感想を言葉にするのが野暮なくらい、ほんとに宝石みたいな映画だなぁと思う。しますがね。笑
ハロルドは最初は表情もなくて、顔も真っ白で、とにかく“死”に取り憑かれている。
でもほんとは死にたくないし死ねないし、寂しかったんだろうなあ。
それがモードに出会って、いろんな香りや、音楽や、植物を知って。
彼女の言葉や行動からも“生きる”ことのあったかさや楽しさを感じとっていく。
「ぼくは生きてなかったよ。」なんて言うのです。
そして彼女とずっと一緒にいたいと思うようになる。
そのハロルドの気持ちの移り変わりが、すーっと入ってくるんだなー。
キャット・スティーヴンスのギターと歌声と一緒に、純粋に、透明にすーっと。
それはやっぱりハロルドの表情の素晴らしさが大きいなぁ……。
全体的にあったかい冬の昼間みたいな、不思議でキラキラした空気が流れてて、その中で彼が笑ったり泣いたりするだけでこころがきゅーーっとなってしまいます。
ちょっと幼い顔つきなのに手足がすごい長くて、子供と大人の間みたいなちぐはぐな感じがまたとても良いです。
そしてモードは限りなく自由で、ハチャメチャで(人の車を平気で乗り回しちゃう。悪気は全くない。)
自分を持っていて、どんなときも前向き。でも終わりが来ることをちゃんと知っているんだな。
彼女の言葉は強くて、でも繊細。とにかく笑顔がキュートです!
そして戦争にまつわるつらい過去があることは、劇中でちょっとずつわかります。
ハロルドがでんぐり返ししたい、と言って芝生ででんぐり返しし始めるシーンとか、廃材置き場のクレーンの下でピクニックするシーンとか、エメラルドグリーンのトラックに街路樹を乗せて爆走するシーンとか、あとふたりが話してる花畑から画面が引いていくと真っ白なお墓がずーっと並んでるところとか。
言い出したらきりがない素敵なシーンたち。
アメリカンニューシネマの色、なのかなぁ、すごく好きな色をしてます。
ファッションもとてもかっこいい!出てくる車もたまらん。
でもなんといってもやっぱりハロルドの涙が美しい。。
こんな宝ものみたいな涙なんてあっただろうか……と思うほどです。
最後は悲しいんだけど、、ハロルドとモードのそれぞれの選択にまた泣けるし救われます。
誰かを愛する気持ちってやっぱり、未来へ、生きることへつながっていくんだなぁ。
最後ハロルドが車を運転しながら窓から顔を出すシーンとかもう……。涙
ハロルドもモードもどこかに死の影をみていて、他に味方もいなくて、でも世界にふたりだけいれば生きていける、そんなまあるい光みたいな。
だけど甘えじゃなくて、ちゃんと前を向いている!
その空気が明らかに伝わってくる映像と、音楽でもう涙がとまらなくなってしまいます。
うー、このふたりは自分の中での永遠の憧れの恋人かもしれないなぁ。
何気なく、相手の腕や膝に触れる時とか、相手を見るまなざしの優しさがすごく自然で、こんな歳の差なのになんの違和感もなくて、当たり前にとなりにいる。
あぁ、こんな恋って最高だなぁ、こんな恋したいなぁと思います。
なんていうかジャンル分けできない、予想もつかない、永遠にそこであったかく光っているみたいな映画。
みんなが好きかはわからないけど、私はこの映画大好きだなー。
気になったら観てみてくださいね。ぜひ大切なひとと。
というわけで、冒頭でも言ったように最終回……だったのですが、実は、Rock isでの連載は、最終回ということでした!笑
わっはっは〜。
次回からは、DONUTのwebで、気まぐれ更新になりますが、このまほうの映画館を続けさせていただきたいと思っています。
なるべく沢山の映画を観るぞー。観たいぞー。書くぞー。
なのでみなさん、2020年もまほうの映画館をどうぞよろしくお願いしますね。
では、メリークリスマス!&よいお年を〜!
(写真は持ってるDVDと、前に住んでいた部屋に飾ってた大きなポスター、を撮影した写真。笑)
『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』
LIVE INFO
2019年12月20日(金)新宿レッドクロス
中野ミホの「うたかたイン・ザ・ムード」vol.4
OPEN 19:00/START 19:30
出演:中野ミホ(Drop’s)/riyo(koochewsen)/下岡晃(Analogfish)
前売 2,500円/当日 3,000円(1ドリンク別)
2020年2月28日(金)大阪・梅田Shanrri-ra
「Magnet ~北のシンデレラと南のヴィーナス~」
OPEN 19:00/START 19:30
出演:Anly/Drop’s
チケット:3,500円(税込・D代別)
一般発売:2019年12月17日(火)18:00~
各プレイガイドにて発売
5th album 『Tiny Ground』
2019年9月20日(金)リリース
BZCS.1179/2,778円+税
全11曲収録
1. Tシャツと涙
2. EAST70
3. 毎日がラブソング
4. Lost in Construction
5. Cinderella
6. Blue
7. Little Sign
8. アイラブユー
9. 天使とラストシーン
10. 春の羊
11. マイハート