THE COLLECTORS30周年記念イヤー、第2章に突入!
「THE COLLECTORS 30th Anniversary Live “EPISODE I”」が2016年4月16日(土)東京・日比谷野外大音楽堂で行われた。結成30周年を祝うお祭りだ。20周年はほぼ満員。25周年は指定席売り切れ・当日券で立ち見を販売。30周年の今年は、座席・立ち見とも一般発売2分で即完。THE COLLECTORSの人気は年を重ねるごとに右肩上がり。客席の熱量も年を重ねるごとに上昇している。
昔からのファンも多いが、若い男の子のファンも多い。日本人がモッズのマインドを理解するまで30年かかったということか。THE COLLECTORSがやっている音楽は『WHO’S NEXT』期のTHE WHOのような骨太なロック。それを表現するだけの風格を身につけるまで時間が必要だったのか。どちらにしろ「デビューのときの勢いにはかなわない」という常套句はTHE COLLECTORSには通用しない。「30周年野音! 20周年も面白かったけど、25周年も面白かったけど、今日の方が楽しい!」という加藤のMCこそがTHE COLLECTORSなのだ。
1曲めを飾ったのは「NICK! NICK! NICK!」。ライブの後半の盛り上がりを支えてきたロックンロール・ナンバー。デビュー前の87年にリリースされた10インチ・アナログ盤『ようこそお花畑とマッシュルーム王国へ』に収録されている。30年も前の曲だ。2曲めは「虹色サーカス団」。初期の曲を叩き込む。3曲めは「Million Crossroads Rock」。MCをはさみ「GIFT」「ミノホドシラズ」とつづく。ここ数年のTHE COLLECTORSの王道セットリストのベストバージョンといった趣だ。ライブの後半、「the pillowsの山中さわおが一番好きな曲」という加藤ひさしのMCから「僕の時間機械」が演奏され、次にヒットナンバー「世界を止めて」を披露。どうしてこんな中途半端なところに「世界を止めて」が出て来るんだろう。そう思った。MCをはさみ、古市コータローが「ごめんよリサ」をうたい、そのままJEFF(B)、阿部耕作(Ds)、古市コータロー(G)によるインストゥルメンタルに突入。「TOUGH」「百億のキッスと千億の誓い」でクライマックスを迎えた。
そして、このライブの本編を締めたのは懐かしのナンバーでもなんでもなく、最新曲「Tシャツレボリューション」だった。この曲は最新アルバム『言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと』のタイトルナンバー(アルバムタイトルは「Tシャツレボリューション」の歌い出しの歌詞)。「30年前」(「NICK! NICK! NICK!」)から始まって「今日」(「Tシャツレボリューション」)で本編を終わるというストーリー構成だった。30周年を祝うお祭りで「今日」を最後に見せるところに、このライブの意味があった。
周年ライブはたいがい代表曲を集めたセットリストになる。最新アルバムからの曲は1曲か2曲。それもコンサートの中盤に据えると収まりがいい。本来なら30年のキャリアのなかで一般リスナーに一番愛された曲「世界を止めて」で締めるところだが、あえてそうはしなかった。THE COLLECTORSは最も大事なところに一番新しい曲「Tシャツレボリューション」を持ってきた。そういえば、完全に日が沈みきった時間に演奏されたのも最新作からの曲「深海魚」だった。これは偶然だが、前半、喉が本調子ではなかった加藤ひさしのボーカルが完璧になったのは「始まりの終わり」をうたっていたときだ。この曲もまた最新アルバムの作品だ。この日、彼らは、最新作の収録曲10曲中4曲をセットリストにエントリー(もう1曲は「ガリレオ・ガリレイ」)。そのすべてが印象的な場面で登場した。
「最も新しい作品が最高傑作」はロックンロールの理想。ロックンロールとは既成概念を超えていく行為を指す。結成30年のTHE COLLECTORSが最新曲「Tシャツレボリューション」を本編の最後に持ってきたのは、彼らがロックンロール・バンドである証だ。彼らは当たり前のように「未来」を見据え、決して過去にはすがらない。だから観客は20週年のときよりも25週年ときよりも30周年の今の方が盛り上がる。「NICK! NICK! NICK!」で始まり「Tシャツレボリューション」で終わる、このセットリストこそ野音即完のリアリティであり、THE COLLECTORSのリアリティだ。
ところが「Tシャツレボリューション」は「本編最後」の役割だけでは終わらなかった。アンコール1曲めで、加藤ひさし、古市コータロー、JEFF、阿部耕作の4人は再び「Tシャツレボリューション」を演奏しはじめた。「Tシャツレボリューション (リプライズ)」。ザ・ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(リプライズ)」はショウの終わりを告げたが、THE COLLECTORSの「リプライズ」はショウのつづきを告げるファンファーレだった。フロントにコレクターズとカタカナで書かれたTシャツを着た古市コータローが、加藤ひさしに促され、ギターを置き、後ろを振り向くと、そこには「LIVE AT 武道館」という文字が。前方のお客さんから歓声が上がる。その歓声が野音に波紋のように広がっていく。すかさず加藤ひさしが「30周年、ここじゃ終れないよ!」と叫び、2017年3月1日(水)の日本武道館公演をアナウンス。ファンにとってもバンドにとってもこれ以上にない「Tシャツレボリューション」。その瞬間は本当に感動的だった。
日本武道館の告知をTシャツでやろうといいだしたのは古市コータロー。笑いに転ぶ発表の仕方や、もっと大上段に構えた発表の仕方もあったはず。しかしTHE COLLECTORSはどちらも選ばなかった。新しいことはTシャツに書かれた言葉から始まる。「Tシャツレボリューション」のリリックが伝えたかったことを、彼らは自ら実践した。「Tシャツを使って発表するならカッコいいものをつくらないと意味がない」という古市の意向をTANGTANGが具現化。用意された3種類のTシャツは、英語バージョン2種類と古市がステージで着た日本語バージョン1種類。これが最初の「日本武道館公演グッズ」。THE COLLECTORSの新章の始まりの象徴だ。
2017年3月1日の日本武道館は平日公演。当然、週末の方がお客さんは来やすい。地方から来る人にとっても週末の方がいいに決まっている。ところが来年3月31日まで日本武道館の予約はいっぱい。争奪戦のなか、ようやく抽選に当たったのが3月1日(水)。日本武道館は4月から改装に入る予定だという。館内の椅子の配置も変わるかもしれないとのこと。つまりはザ・ビートルズやTHE WHOがやった日本武道館とは雰囲気が変わる可能性も十分考えられる。もしかしたら「ザ・ビートルズやTHE WHOがやった武道館」でやれる最後のチャンスになるかもしれない。平日だけど、やるのかやらないのか。リスクは高いけど、やるのかやらないのか。THE COLLECTORSは「やる」といった。それがすべて。「やる」のだ。ザ・ビートルズが、THE WHOがやったあの日本武道館でやる。THE COLLECTORSが日本武道館公演につけたタイトルは「MARCH OF THE MODS」。言い訳は一切なし。モッズの気骨を見せる。モッズのソウルでロックンロールを鳴らす。これ以上、何もいうことはない。だから「MARCH OF THE MODS」。これがTHE COLLECTORS AT BUDOKANのリアリティなのだ。
「Tシャツレボリューション (リプライズ)」で日本武道館公演を発表したあと、最初に演奏したのが「愛ある世界」。武道館公演発表という大仕事をクリアしたあとの解放感と武道館公演へ向かう決意が同居した「愛ある世界」。この瞬間、「MARCH OF THE MODS」のモードに入ったかのようだった。それとも観ているこちらの気分が高揚していたせいなのか? 最後に演奏された定番の「CHEWING GUM」「僕はコレクター」さえいつもとは違う光景に思えた。いや、そうじゃなくてTHE COLLECTORSが今までと違う光景を見ようとしているのだ、きっと。すべての楽曲が終わったあと、4人がステージ前に並び、深々とお辞儀をした。顔をあげた瞬間、「30th Anniversary」の幕が落ち、「日本武道館 2017.3.1」の文字があらわれた。「THE COLLECTORS 30th Anniversary Live “EPISODE Ⅱ”」がはじまった。(森内淳/DONUT)
セットリスト
NICK! NICK! NICK!/虹色サーカス団/MILLION CROSSROADS ROCK/GIFT/ミノホドシラズ/たよれる男/プリティ・ガール/ガリレオ・ガリレイ/始まりの終わり/深海魚/僕は恐竜/Stay Cool! Stay Hip! Stay Young!/Da!Da!!Da!!!/僕の時計機械/世界を止めて/ごめんよリサ/インスト/TOUGH -all the boys gotta be tough-/百億のキッスと千億の誓い/Tシャツレボリューション/En.Tシャツレボリューション(リプライズ)/愛ある世界/CHEWING GUM/僕はコレクター全24曲
武道館告知オフィシャルコメント
Tシャツレボリューション
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