関西No.1ラジオ局とリスナーの幸福な関係が生み育んだ音楽フェス
関西が誇るNo.1ラジオステーションFM802が、「番組にリクエストされるアーティストのステージを、ラジオリスナーに生で観てもらいたい」という想いのもと2002年に生まれ、今年で第14回目を迎えたライブイベント『REQUESTAGE』。
ユニークなイベントタイトルには、リスナーから寄せられた「ライブで聴きたい曲」のリクエストを、出演アーティストがセットリストに組み込む、「REQUEST」と「STAGE」が掛け合わされている。全国各地で様々なライブ、イベントやフェスが開催されている中、ラジオ局とリスナーの強い信頼関係や、番組にリクエストやメールを送る中でつながった「ラジ友」たちが一堂に会し、一緒になって楽しみ盛り上げようとする心意気にあふれた『REQUESTAGE』は、他にはない独特の空気を持ったライブイベントといえる。今回、開催される『REQUESTAGE14』にお部屋探しのCHINTAIが協賛として参加。そこで、CHINTAIが運営する音楽メディア「Rock is」でこのイベントを取材することにした。
会場に入ると、巨大な大阪城ホールのアリーナに、周囲をぐるりと360度お客さんが取り囲む形でステージが組まれている。アリーナのどこに立っていても、またスタンド席に座っていてもどこからもステージが見やすい。
この日、トップを飾ったのはASIAN KUNG-FU GENERATION。ステージ上方のモニターにカウントダウンの数字が映し出される。これまで14回中8回の最多出場を誇るバンドの登場を前に、MCの大抜卓人が「さぁ、立って!立って!自由に音楽を楽しむ準備は出来ていますか?」と場内に聞けば、大きな声援が沸く。その雰囲気を楽しむように、いつも通りの恰好でいつも通りの4人がステージに現れた。オープニングの『Re:Re:』はもともとは10年以上前の曲ながら、テレビアニメの主題歌として今年初めよりオンエアされ、再び耳にする機会が増え、それを機に彼らを知ったリスナーも多い。続く『リライト』もリリース以来10年以上にわたって人気の高い曲で、どちらもイントロが鳴った瞬間、跳び上がる勢いで反応する人の姿もたくさん。「新しい曲をやります」と紹介した『Right Now』は、ギターがザクザクと切り込んでくる、どこまでも疾走していく曲。そのスピードに乗せて「何を欲しがっているんだ」と、ギターから離した両手を持て余すようにして後藤が歌う。巨大なステージでも、たぶん小さなライブハウスでも、ありのままの姿で深くて広い世界観を持ったロックを奏でる彼らの姿は、とてもストイックに映る。「今日はどうもありがとう!最後まで楽しんで帰ってください」と言い、最後に『今を生きて』を披露。歌い終えるともう一度「ありがとう」と言い、背後のスタンド席にも深々と一礼をして4人はステージを後にした。
続いて登場した大原櫻子は、今回が『REQUESTAGE』初出場。バンドを引き連れ、目にも鮮やかな衣装に身を包んだ彼女が、大きなアコースティックギターを手に『明日へ』をアカペラで歌いだした瞬間、大阪城ホールが晴れやかな櫻子カラーに染まった。太陽のようなエネルギーを放出するその歌声は、はつらつとしていて伸びやか。ステージ上のモニターに映し出されるお客さんたちの表情も、キラキラ輝いている。一年ぶりに立ったと言う大阪城ホールの場内をぐるっと見渡し「すっごく広いですね!」と声を弾ませる。フロアの反応に「お客さんがアットホームでうれしい!」と返しながら、この日が初披露となった新曲『大好き』を聴かせてくれた。甘さと切なさとが混ざり合った気持ちを、澄んだ歌声で聴かせるこの曲は、彼女自身も作詞に参加したという。続いて、「夢に向かって頑張っている人の背中を押すことが出来たら」と話し、歌った『瞳』。終わりがあって始まりがあって、そして心は強くなれる――そう歌いかける彼女の歌声に、13000人がじっと耳を傾け、かみしめるように聴き入っていた。最後は、とびっきり楽しい曲『Happy Days』を「みんなで歌って踊ろう!」と、まずはダンスのレクチャー。教える彼女も、踊るフロアも息ぴったりで、本番では「みんな上手~!」と感激の面持ち。さわやかな風が吹き抜けたようなステージだった。
虹のようにカラフルな照明に照らされて登場したのは、ファンキー加藤。DJの鬼頭由芽がその名を呼んだ瞬間から大きな拍手と歓声が轟く。彼も今年『REQUESTAGE』初登場。「世界中に響くような大きな力はないけれど 永遠に続くような音楽を探したい」という彼の心情をそのまま刻み付けた1曲目『MUSIC MAGIC』の4つ打ちのリズムに、フロアのお客さん達もジャンプで応える。「逢いたかったぜ!」と声を張り上げ、「まっすぐまっすぐ、あなたの心に向かって元気になる歌を歌います」と宣言し、『輝け』を。ステージから左右に伸びた通路を目いっぱい動き回り、スタンドのリスナーと手を取り合う近さまで動き回りながら歌う。自叙伝のような歌詞が耳を引く新曲『ブラザー』に続き、「最後は『ちっぽけな勇気』!」と言った瞬間から、地鳴りのような歓声と手拍子が起こる。その大音量の中で、「13000人、幸せになれ。魂込めて歌います」と告げた声はとても静かだった。いつでも明るく楽しいことばかりの人生なんて、ありえない。だからこそ、強く希望を願いそれを歌にして、マイク1本でこの場にいる13000人のハートをぎゅっとつかんで離さない彼の歌のパワーは、底知れない。歌いながら、いつのまにかアリーナに飛び込んだ彼が、お客さんの中を歩きながら手を取り、肩を叩いて歌う。「一緒に歌って!」と声を掛けるのは、彼自身がきっと自分の想いを歌にしてメッセージを送ることで生きる力を得てきた実感があるからだろう。とても感動的なステージだった。
2011年にFM802からのラブコールに応えて初登場して以来。5年ぶりの出演となった彼らを紹介するべく、DJの落合健太郎が「みんな、限界を超える準備は出来てるか?」と叫べば、UVERworldを待ち望む嵐のような大歓声が巻き起こる。オープニングの『Collide』を歌い終えてTAKUYA∞が会場に向かって言ったのは、機材のトラブルでステージ上の音がイヤモニターに反映されておらず、「僕たちの耳には何も聞こえない」と。「だからみんなの声だけ聴かせてくれよ。これがライブ!UVERworldの真骨頂をばっちり食らわせてやるから!」と、なんとも痛快で頼もしい。続く『雫HERE』の歌詞にある通り、まさに世界の中心は今、彼らと私たちが立つこの場所だ。『PRAYING RUN』の歌詞が、頭上のモニターに映し出される。会場が“La la la”と声を合わせて歌っている間、両手で固く強くマイクを握りしめて歌うTAKUYA∞の姿はまさしくタイトルの通り、祈りを捧げているようにも見える。「こういった場所では、自分たちの詩と言葉でちゃんと想いを届けたいから」と、リスナーのリクエストに応える『REQUESTAGE』ならではの試み同様に、TAKUYA∞がメンバーのリクエストを集計したところ見事第1位に輝いたという『在るべき形』を次にプレイ。世界がどうあろうと、自身の信じた道をひたぶるに進むことの正しさをこの曲は教えてくれる。バンドの持つ熱、音楽の持つ力、それらを少しも欠けることなく伝えようとする想い。お互いがお互いの最大値を引き出し、それらが一つのまぶしい光になってホールを包んでいるような、素晴らしい30分間だった。
7年ぶりに『REQUESTAGE』登場となったポルノグラフィティに「お帰りー!」の声もあちこちから飛ぶ。「今夜は最高の、忘れられない夜にしましょう!」と岡野昭仁が言い、1曲目の『今宵、月が見えずとも』を歌う合間にも、何度も「大阪!」「ありがとう!大阪」と声を掛ける。「めっちゃ盛り上がっとるねぇ!ええ感じですよ!今日はやっちゃうよ!」と岡野が声を掛けるたびに、大きな歓声とともにまるでホームタウンに帰ってきたような温かさが広がる。その空気を感じ取った彼らから、「嬉しいから、いち早く新曲を皆さんに届けたいと思います」と初披露となる新曲『THE DAY』をプレゼントしてくれた。岡野のハイトーンが鮮やかに耳に飛び込んでくる、「これぞポルノグラフィティ!」と言わんばかりの疾走感あふれるロックチューンだ。続く『オー!リバル』や、さっき聴かせてくれた『サウダージ』に代表されるラテン調+抒情性、ストーリーが映像のように頭の中に広がるドラマ性も、彼らの音楽の大きな持ち味の一つ。「大阪のみんなが元気で良かった。その元気を、九州のみんなにエールとして送り届けてあげて」と伝え、最後は誰もがジャンプした『ハネウマライダー』。終わってみれば、横綱級の貫禄と誰をも納得&満足させる圧巻のステージだった。
ラストを任されたのは、Superfly。9年前、デビューから1か月を待たずに初めて『REQUESTAGE』に登場した彼女が、いよいよ今夜を締めくくる。DJの大抜卓人の「One&Only Our Final Star!」との熱のこもったアナウンスに導かれ、おなじみカーティス・メイフィールドの曲『Superfly』に乗せてメンバー、そして越智志帆が万雷の拍手に迎えられる。ブルージーで骨太な音に乗せた『マニフェスト』で、いきなりソウルフルな歌声を浴びせかける。迫力のある歌声やステージングとは裏腹に、MCとなると誰もが「志帆ちゃん!」と親しみを込めてステージに声を掛けたくなる気さくなトークも微笑ましい。「今までたくさんのイベントに出させてもらったけど、思い出深いイベントです」と話し、『愛を込めて花束を』、『黒い雫』とタイプの異なる2曲を続けて披露。Superflyの持つソフト&ハードそれぞれの面を見せてくれる。さらに『タマシイレボリューション』では、Superflyの真骨頂ともいえる力強さも。すべてをなぎ倒す強さではなく、あらゆるものを受け止める大きさや聴く人を丸ごと包み込む温かさを備えた強さを、彼女の歌声は感じさせる。「今日初めてSuperflyを見た人どれぐらいいる?」と会場に聞くと、本人も驚くほどたくさんの手が挙がる。自分の周囲にも、さっきまでノリノリで歌っていた男女が元気いっぱい手を挙げている。これもSuperflyの魅力なのだろう。初めてだって何度目だって、その場で反応して一緒に盛り上がれたらそれが何より。「次でいよいよラスト!」と、最後には今日がライブ初披露となるとっておきの新曲『ゴチャゴチャ』を爽快にプレイ。「どうもありがとう!バイバイ!」とステージを後にした。
暗いままの場内に拍手も手拍子も鳴りやまず、それに応え、「アンコールありがとう!」と再びSuperflyがステージに登場。360度ゆっくりと場内を見渡し、「後ろのほうも見えてるよ」と声をかけ、「もうちょっと一緒に歌って騒ぎますか!」と、本当に最後に『Beautiful』を。「世界で一つの輝く光になれ」とエールを贈ってくれるこの曲を最後に聴かせてくれるなんて、とても心憎い。誰もが、ステージから放出された抱えきれないほどの温かい気持ちを受け取り、夢のような顔合わせで彩られたREQUESTAGEの幕は閉じた。
終演後、大阪城ホールの館内を出口に向かっている間、ポルノグラフィティの『ミュージックアワー』を口ずさみながら歩いているグループとすれ違った。ラジオDJとリスナーのやりとりを歌詞に織り込み、わくわくするような曲調に乗せたこの名曲を、まるでライブの余韻を楽しむように歌う彼や彼女はとても楽しそう。
よく考えてみれば、今日出演したバンド、アーティスト達の曲を初めて知ったのもラジオだった。初めて耳にする音楽、これから好きになるかもしれない音楽との様々な出会いを運んでくれるラジオと、その日、その場にいる人だけが味わうことのできる興奮が詰まったライブは、一見まったく別のようで実はとても似ている。ライブと同じように、その時間にラジオを聴いていなければ出会えない音楽もあるからだ。
オープニングのASIAN KUNG-FU GENERATIONからラストのSuperflyまで全6組。終わってみれば、巨大な打ち上げ花火が上がりっぱなしだったアッという間の約5時間。6月18日(土)23:00~放送の「ROCK KIDS 802 SATURDAY」番組内では、この日の模様が特集で放送される。この夜、大阪城ホールを揺るがした熱狂の一瞬一瞬を、ラジオの前でできればボリュームは大きめでじっくりお楽しみください。(取材・テキスト:梶原有紀子)