コレクターズと共演者によるとてもロマンチックな夜
去年、下北沢でやった音楽誌DONUT主催のライブイベント。トップに登場したhotspringがものすごくテンションが高いステージを繰り広げ、その後に登場したバンドはそのハードルを超えようと必死になって、結果、とてもいいイベントになった。そうやってイベントはミュージシャン同士が刺激しあう中で、思わぬ方向に転がっていくことがある。それがイベントやフェスの醍醐味でもある。
ところが12月8日(木)、渋谷TSUTAYA O-EASTで行われたイベントはちょっと様子が違った。「音楽と人LIVE2016 とてもロマンチックな夜〜コレクターズと僕らの前夜祭〜」。出演者はCasablanca、SCOOBIE DO、大木兄弟(バンド・トモフスキー)。そしてコレクターズのステージに飛び入りした百々和宏と山中さわお。彼らは全員が2017年3月1日のコレクターズの武道館公演を盛り上げる目的で集結した。だからひたすらリスペクトの感情だけがそこに横たわっていた。
それは来ているお客さんも同じだった。ライブを観るというよりも、武道館へコレクターズを送り出す壮行会に参加するといった感じだ。ステージに立ったミュージシャンと心情的には同じだ。だから会場はコレクターズ愛に溢れていた。ミュージシャンとオーディエンスが作り出すコレクターズ愛を自らが楽しむといった、この日、自分の好きなバンドだけを観ようと駆けつけた人からすると、「今日のイベント、何かが違うな」とか「自分が応援していたミュージシャンやバンドって、こんなに優しい雰囲気だっけ?」と思ったかもしれない。
まずもってイベントを主催したのが「音楽と人」という音楽雑誌。これも異例中の異例。音楽雑誌がフェスやイベントを主催することは珍しくないが、特定のバンドの1日の興行のためにイベントをやるなんて前代未聞。逆に言うと、30年間、コレクターズ一筋でやって来た加藤ひさしと古市コータローの人徳もさることながら、彼らが発表してきた音楽が後輩ミュージシャンの心をいかに射抜いてきたかという証拠だろう。
トップで登場したのはCasablanca。yoko(noodles)、山中さわお(the pillows)、楠部真也(Radio Caroline)で結成したオルタナ・バンドだ。ギターが2人にドラムが1人のベースレス。「他のバンドに比べ、ベースがいない分、音がスカスカ」(山中さわお)という理由から、ほとんどのイベントでトップを務めている。当サイトのコメントで「なぜピロウズじゃなくてCasablancaで出演するのか?」と自問自答していたが、ピロウズは武道館直前の2月に渋谷クアトロでコレクターズと共演することになっている。
Casablancaはアルバム『Another Story』の楽曲を中心に7曲を披露。オルタナ愛に溢れた演奏で一気に洋楽イベントの世界観へ誘う。その中で彼らはビートルズの「Can’t Buy Me Love」をカバー。ロックンロールのテイストを混ぜながら、ショウを構成していく。最後はアルバム・タイトル曲「Another Story」を決めて終了。「ロビーで武道館のチケットを手売りしようかな」というコメントが印象的だった。これがまんざら冗談ではないところがコレクターズ愛なのだ。
次に登場したのがSCOOBIE DO。「新しい夜明け」「The Thing」を披露したところで「“恋するフォーチュンクッキー”を踊ってモッズと認められました」とコメント。コレクターズもカバーしている「恋はヒートウェイブ」を披露した。「ひとり以上誘って武道館へ」という愛のコメントを残し、デビュー曲「夕焼けのメロディ」でしめた。
そしてバンド・トモフスキー。コレクターズ愛を一生懸命にアピールすることもなく、マイペースで5曲を披露。ところが6曲目に予期せぬ出来事が。ここでコレクターズの「太陽はひとりぼっち」をカバー。なんと彼らはオリジナルよりキーを半音上げて歌うという、そこに何の意味があるのかわからない、もしかしたらそれが大木兄弟の愛のカタチなのかもしれないことをやってのけたのだった。そうかこんな愛情の示し方もあるのか。
3バンドが演奏しただけなのに、ステージは濃密な「愛ある世界」に変貌していた。そして愛ある世界を心底楽しむお客さんがそこにいた。「今日のイベント、なんかおかしいなあ」と思っていた人、おわかりになったでしょうか。愛の力がイベントの雰囲気を変えていたのだ。
いよいよ「僕らの」ザ・コレクターズが登場。「Million Crossroads Rock」「Power of Love」「たよれる男」と演奏。ロックのダイナミズムに徹底してアプローチする三代目リズム隊(JEFF&cozi)による新生コレクターズはまさにBACK TO ROCK、BACK TO MOD。バンドは武道館公演のタイトルである「MARCH OF THE MODS」というテーマへと舵をとっているとしか思えない。今年はいろいろあったけど、ネガティブな状況をポジティブに変える力がここに来て備わったような手応えもある。まさに「TOUGH」の歌詞、そのものだ。
MCを挟んで、今度はコレクターズのカバーコーナーが始まる。まずは自分たちの世代全体へのリスペクトをこめてザ・ブルーハーツの「リンダリンダ」を演奏。ブルーハーツのトリビュートで、参加バンドが敬遠した「リンダリンダ」をコレクターズがカバーした流れと、「たよれる男」の「甲本ヒロト」という歌詞の流れからの「リンダリンダ」なのだと思う。もちろん一緒に歌わせてもらいました。
次に百々和宏がゲストで登場して、THE WHOの「MY GENERATION」を熱唱。言うまでもなくモッズへのリスペクト、モッズ愛が炸裂。「THE WHOをわかっている奴がTHE WHOを歌うといいね」と加藤ひさし。百々和宏へのリスペクトも忘れない。ステージ上の「愛ある世界」がますます濃密なものに。そして山中さわおが登場。コレクターズの「1・2・3・4・5・6・7DAYS A WEEK!」をばっちり決めてくれた。この場面は間違いなくコレクターズ愛の絶頂、ピークだったね。去年のARABAKIにおけるコレクターズ・トリビュートのオーガナイザーにしか出せない、あらゆる意味で、最高のステージだった。
その素晴らしい愛に応えるかのように、コレクターズがこの日のアンコールで「僕はコレクター」を披露。ワンマンライブのアンコール最後の定番曲だが、イベントやフェスではほとんどやらない。「僕はコレクター」は、ワンマンを観に来た人だけが共有できる熱くて貴重な時間だ。その曲を、コレクターズはこのイベントの最後に持ってきた。今日のイベントは本当に特別だった。
愛されるバンド、コレクターズの愛に満ちたイベント「音楽と人LIVE2016 とてもロマンチックな夜〜コレクターズと僕らの前夜祭〜」は終了。前夜祭と呼ぶには早すぎるかもしれないが、年が明けたら60日くらいでその日はやって来る。 本当にあっという間にやって来る。終演後、新しく出来たコレクターズの武道館ポスターを求める長蛇の列が出来ていた。(森内淳/DONUT)
セットリスト
- Casablanca
- 1.Groovy Cony
- 2.My try-on
- 3.Ghost Town
- 4.Can’t Buy Me Love
- 5.Night Camp
- 6.Greeting Song
- 7.Another Story
- SCOOBIE DO
- 1.新しい夜明け
- 2.The Thing
- 3.恋はヒートウェイブ
- 4.アウェイ
- 5.イキガイ
- 6.夕焼けのメロディー
- 大木兄弟(バンドTOMOVSKY)
- 1.ほめてよ
- 2.不在
- 3.真夏
- 4.引越し前夜
- 5.このままでいたいなら
- 6.太陽はひとりぼっち
- 7.我に返るスキマを埋めろ
- THE COLLECTOORS with Guest Vocalists
- 1.MILLION CROSSROADS ROCK
- 2.POWER OF LOVE
- 3.たよれる男
- 4.リンダリンダ
- 5.My Generation(guest/百々和宏)
- 6.1・2・3・4・5・6・7DAYS A WEEK!(guest/山中さわお)
- 7.悪の天使と正義の悪魔
- 8.TOUGH~all the boys gotta be tough~
- 9.NICK NICK NICK
- 10.Tシャツレボリューション
- ENCORE11.僕はコレクター