梶原有紀子の関西ライブレビュー
BUGY CRAXONEは超えていける。 秋のクアトロワンマンに想いを馳せ、大充実のツアーを振り返る
1997年に北海道で誕生したバンド、BUGY CRAXONE。彼らが今年、結成20周年を記念して、新曲とまさにベストな楽曲ばかりを詰め込んだベスト盤『ミラクル』を1月にリリースした。そのアルバムを携え、全国各地で20周年を祝った「ミラクルなツアー」のセミファイナルとなる大阪公演が4月15日に行われた。
何でそんなことになったのかいまだによくわからないけれど、1曲目の「たいにーたいにー」から涙が止まらなかった。全然、泣ける曲じゃない。むしろ逆で、ガンガンに気持ちがアガるブルース。4人がステージに現れて、フロアにいた人たちがじわりじわりと前に近寄っていって、ギターの笈川司は笑っていて、人混みでちらちらとしか見えないけれどドラムのヤマダヨウイチもたぶん笑っている。ベースの旭司は福々しいばかりのビッグスマイル。
けど、フロントのすずきゆきこは、“いっしょうけんめい いろんな理由をブレイクスルーして”と歌った時、キッと結んだ唇の端っこが震えているように見えた。後半のMCでも話していたけれど、これまでの日々が脳裏を駆け抜けたのだろうか? 意地っぱりの子供が、今にも零れ落ちそうな涙を必死でこらえているようにも見えたし、感傷を吹き飛ばして全身全霊で「たいにーたいにー」のメッセージを伝えようとしているふうにも見えた。
哀しいことや歯を食いしばって越えてきたこと。そういうことがあって“わたしたちはつよくなってきたんだよ”と宣言するように歌った時の、マイクを持っていない方の左腕の手首の血管が浮き出るぐらいにぎゅっと握られた拳。20年分の想いと強い意志とを込めながら、ここからまた私たちは進んで行くんだとすずきの握り拳が言っているように見えた。
ひらがなを多用するすずきの歌詞は、アルバムのブックレットを眺めている分にはとてもソフトで丸っこい印象があるし、その歌は部屋でまたはヘッドフォンで聴いている時にはふんわりしたものに感じられる時もある。けれど、その曲たちがライブの場では時に牙をむき出しにしたり、言葉も出ないぐらいのヘヴィさで迫ってくる。「Come on」の切れ味の鋭さ。「FAST」もそう。ここまでめちゃくちゃに尖って、なおかつセンスのあるビートロックを鳴らせるバンドって、果たして今ブージー以外にいるんだろうか。視界に入る人はみんな手を上げて体を揺らして、コーラスの“FAFARAFAFAFAFAFA!”を大声で歌っている。ガッと胸ぐらを掴まれるようなパワーを持った曲だし、よく聴くと“生きにくいな”とか“唾を吐く”“毒を吐く”と歌っているのに、その激しい音も強い言葉もどれもが不思議なぐらいに温かくて、がっしりと自分の背中を支えてくれる。とんでもないタフさで。
タイトル通り、“なんとなくBe happy!”と大きな声を張り上げるフロアに、すずきは人差し指と親指をくるっと丸い輪にしてOKサインを作って見せる。それはつまり私たちはOKでベリナイスって意味なんだろう。「Lesson 1」でも彼らは歌っている。“YESよりNOよりOKが正解”と。世界中で起きていることも自分の周りで起きていることも、黒か白のどちらかにきっちり分けられることばかりじゃない。その曖昧さを許せるしなやかさ、寛容さもブージーの音楽が持っている魅力の一つだ。
10代の頃、すずきがバンドを始めようと思い立ったのはユニコーンに出会ったからで、そのユニコーンの曲名にある「メイビーブルー」が歌詞に登場する曲「いけないベイビー」は、10代の頃の彼女と今現在の彼女とが交錯する名曲。けど、彼女たちだけじゃなく5年、10年、15年とブージーを聴き続けてきた人も、出し惜しみなしのベスト盤『ラクル』で初めてブージーに触れた人も。この夜、ファンダンゴで初めて動くブージーを見た人も、誰もがこの「いけないベイビー」で歌われているような、うわさ話にワーキャーしたり、理由もなくただやみくもに走りたくなったり壊したくなったり、闇を超えられるんじゃないかって想いを抱いて生きてきた日々があったんじゃないだろうか。男も女も、誰でも。自分ももれなくその一人だ。いまだにもがいてあがいて、出口を見つけ出そうと必死になる気持ちを、“おとなになったし がんばりたいのさ”と、ひらがなだけでつづられた1フレーズにやんわりと解きほぐしてもらっている。
「ロマンチスト」のイントロですずきがフロアに向かって「イエー!大阪!ロマンチストか?」と呼びかけると、その通りだと言わんばかりの歓声。それに応え、くしゃくしゃの笑顔で「だと思ったぜ!」と返すすずきは、どこまでも硬派だ。男勝りというよりも、硬派。これは彼女が生まれ育った北海道という土地が育んだ、根っからの性分も関係しているような気がする。けれどその硬派な彼女が作る歌、書く言葉は、とことん優しい。まっすぐで嘘がなくて、飛び込んでくるヤツはもれなく全部受け止めてしまえるだけの懐の深さがある。
頭の上で手拍子しながらサビを一緒に歌った「ハレルヤ」。本編最後の曲「ブルーでイージー、そんでつよいよ」の冒頭の、「ウィー アー ブージークラクション スペルはヒッチャカメッチャカ」って何度聴いても、歌っても最高だ。そのスペルに負けないぐらい、日々も人生もヒッチャカメッチャカだけど、それでも何とか生きているし、“そんなもんに負けてんなよ”とハッパをかけられている気分。
その曲が終わっても、いつまでも拍手が鳴りやまなくて、4人がステージを降りて、そのバラバラだった拍手が同じ調子の手拍子に変わったところへもう一度4人が現れた。最後の最後に、ザックリと激しく切り込んでくる超高速のパンク「I scream」を。
この夜、ステージの上で1回か2回か3回ぐらい、すずきの声が上ずった瞬間があった。本当は泣いていたのかもしれない。1999年にデビューして、初めて大阪でライブをやった時のことや、自分たちでレーベルを立ち上げた頃のこと。今夜の会場であるファンダンゴで初めてライブをして以来、会場内の壁の落書きが増えていってるとか、対バンしたバンドは元気かなとか、これまでの日々をダッシュで振り返るMCをして感極まったのか、その上ずった声の理由はわからない。ただ、誰かが言った「バンドは解散するよりも、続けるほうが難しい」ってことはたぶん事実で、ブージーのように硬派で群れることをしないで、自分たちの音楽をとことん追求することを諦めないバンドが、20年間カッコいいままで続いてきたことが本当にミラクルで、その事実を心から祝いたい。めいっぱい感謝したい。
ライブの冒頭、「たいにーたいにー」ですずきが振り上げた握り拳に、とてつもない力をもらった気がする。25周年だって30周年だって、“○周年”がなくたって、ブージークラクションはミラクルに輝いているし、彼らの音楽を聴く私たちは自信を持って、胸を張って茨の道を大らかに歩いていける。それでもやっぱり20周年は今年限りだから、アニバーサリーの締めくくりである11月19日には、彼らがデビュー後に初めてワンマンライブをやった渋谷クラブクアトロでもう一度4人に逢いたい。そう、日が経つにつれて思う。当時は「悔しい思いをした」と2000年の初ワンマンを振り返ってすずきは話していたけれど、17年目のクアトロでは、今夜のように“ウィー アー ブージークラクション!”と大きな声で叫んでピースをキメて、ハッピーな気分で20周年を祝えるんじゃないだろうか。(梶原有紀子)
セットリスト
- 2017年4月15日(土)/大阪Fandango

- 1.たいにーたいにー
- 2.ベリナイス
- 3.Come on
- 4.FAST
- 5.いいじゃん
- 6.いいかげんなBlue
- 7.なんとなくBe happy
- 8.のー ふらすとれーしょん
- 9.チャンスをねらえ
- 10.いけないベイビー
- 11.チーズバーガーズ・ダイアリー
- 12.ぶるぶるぶるー
- 13.ロマンチスト
- 14.dreamer
- 15.Lesson 1
- 16.ハレルヤ
- 17.ブルーでイージー、そんでつよいよ
- EN.
- 1.I scream