ザ50回転ズ、THE BAWDIES、BRADIO、山﨑彩音。 七夕の夜のロックンロール・イベントをリポート
「WILD SIDE ROCK!! supported by Rock is」が七夕の夜に赤坂ブリッツで開催された。出演はザ50回転ズ、THE BAWDIES、BRADIO。オープニング・アクトで山﨑彩音が登場した。音楽性は違うが、3バンドとも、時代性とかよりも自分たちのやっていることこそが一番かっこいいと信じている。ザ50回転ズはおかっぱでラモーンズ。THE BAWDIESはガレージとロックンロールの申し子。BRADIOはフロアのアフロ化を目指す。一昔前は時代にアジャストするのがロックンロールの宿命だったが、現代は音楽を巡る価値観は多様化し、物事が一方向には流れなくなった。ビジュアル系だろうがヘビメタだろうがEDMだろうがヒップホップだろうがソウルだろうがアイドルだろうが均等に存在する。もはやマスなどは存在せず、あるのはコアの集積のみ。時代にアジャストしたロックンロールもアリだし、頑ななロックンロールもアリだ。この日登場したバンドはいずれも後者。「WILD SIDE ROCK!!」とはよく名づけたもので、どのバンドも「WILD SIDE」を歩いている。ROYのMCではないが、振り切らないとロックンロールは鳴らない。逆に言うと、この日はロックンロールしか鳴らないイベントだった。ロックンロールがグツグツ煮えたぎっていた。
そんな自らのスタイルを貫くバンドたちの中で唯一オープニング・アクトの山﨑彩音だけがしなやかな変化を楽しんでいた。なんたって彼女はまだ18歳。歌へのアプローチは日々変わることが許される歳だ。この日のステージでは、アコースティック・ギターをエレキ・ギターに持ち替え、ドラマーを入れてのパフォーマンス。今までのヘビーでスローテンポなソング・スタイルを超えて、ロックンロールの様々なグルーヴにアプローチした新曲を披露した。彼女は今スタジオで新しい曲をセッションしている。そのモードを全面に展開したパフォーマンスだった。欲を言えば、今のモードでヘビーなグルーヴの過去曲をぶっ放せば尚面白かったが、何せ短い持ち時間では「アフターストーリーズ」「恋は夢の中」「ロング・グッドバイ」の3曲を演奏するのが精一杯。とりあえずはニュー・モードのお披露目で終了した。この日の演奏は、彼女にとって、ロックンロールの扉を開けたようなパフォーマンスだったと思う。そこにいたのはシンガーソングライターではなく、ロックンローラーの山﨑彩音だった。本質が外面をも侵食していく瞬間を見た。楽しみなアーティストだ。
BRADIOのパフォーマンスも素晴らしかった。彼らは2010年に結成されたファンキー・ソウルなロック・バンド。メンバーは真行寺貴秋(vo)、大山聡一(gt)、酒井亮輔(b)、田邊有希(dr)の4人。最近メキメキ頭角を現している。まずもって彼らのルックスが最高だ。真行寺貴秋のアフロ、スーツや派手なシャツ。2017年の日常で絶対にお目にかかれない。しかしおそらくBRADIOにとってはこの世の中で一番かっこいいアイテムなのだ。彼らの音楽はそれらを「もしかしたらかっこいいんじゃないか」と思わせる説得力に満ちている。ソウルの一番テンションの高い部分&スイートな部分を切り取って落とし込んだような楽曲たちは、ルックスと相まって、圧倒的な存在感を示す。とくに、この日は、最新アルバム『FREEDOM』のハイ・テンション・ナンバー「Revolution」でスタート。冒頭から、血管がいつ切れてもおかしくないようなパフォーマンスを見せられては「これはアリだな」と思わざるをえなかった。また、オールドなソウルだけではなく、マイケル・ジャクソンからアース・ウィンド・アンド・ファイアまで、ファンキーと名のつくもの全てを貪り食って昇華しようという姿勢もいい。これが昨年Zepp DiverCityを満員にした底力なのか。最後に「Back To The Funk」で客席と一体に。十分すぎる役割を全うしてステージを降りた。
THE BAWDIESにとって、イベントと単独公演の境目はないのかもしれない。ROY(vo&ba)、JIM(gt)、MARCY(dr)、TAXMAN(gt)は冒頭からハイ・テンションのパフォーマンスを披露。ROY曰く「大声が振り切ったところにシャウトがあって、その時にロックンロールが飛び出してくるんです」。その言葉を裏付けるように1曲目の「IT’S TOO LATE」からギアはトップへ。2曲目は「JUST BE COOL」〜「KEEP YOU HAPPY」〜「ROCK ME BABY」〜「JUST BE COOL」のメドレー。BAWDIESはガレージ・ロック・バンドとはいえ、もはやアリーナ級の集客を誇る巨大なバンドだ。しかし会場がどれだけ大きくなろうと、楽曲のガレージ感は変わらない。楽曲を大衆に擦り寄らせることなしに、歌と演奏と楽曲への確信的なアプローチだけで、マニアックなロックンロールを多くの人と共有させたBAWDIES。楽曲に対する、そういった攻めの姿勢はこの日のセットリストにも表れていたように思う。この日、JIMは足を負傷していて椅子に座りながらのパフォーマンス。ところが繰り出すアクションはいつもと同等かそれ以上。何でも「雨の野外イベントで凹んでいる他のバンドを尻目に、50回転ズは雨で濡れたステージを滑走しながらギターを弾いて観客を沸かせた」らしく、それに感動したJIMは自らの苦境を熱狂に変えようと思ったという(と言うかたまに立ち上がっていた)。そういう姿勢がオーディエンスのロックンロール魂に火をつける。それがソウル・オブ・ガレージなのだと思う。最後は「KEEP ON ROCKIN’」。そして恒例の「ワッショイ!」パフォーマンスで終了。
この日のトリはザ50回転ズ。彼らは2004年に結成。2006年に『50回転ズのギャー!!』でデビュー。昨年11月にはデビュー10周年記念のリマスター盤もリリース。ニューヨークでライブも行った。メンバーは“徳島の酔いどれ”ダニー(gt,vo)、“出雲の妖怪”ドリー(ba,vo) 、“浪速のドラ息子”ボギー(dr,vo)。50回転ズはこの10年間、1ミリたりともぶれずにロックンロールを鳴らしつづけてきた。衣装もヘアスタイルも同じ。ライブの「圧」も同じ。下北沢シェルターなんかでライブを見ようものならステージと客席の両方からの「ロックンロール圧」にやられてしまう。いや、例えそこが赤坂ブリッツという広めの空間だろうと関係ない。この日も1曲目の「MONEY! MONEY!」から、かまわず同じ「圧」で攻め立てた。その「圧」は、ラモーンズの馬鹿馬鹿しさにロックンロールの痛快さ・素晴らしさを見出したバンドのエネルギーによって生み出されている。ダニーが言うところの「変拍子も複雑な展開もないストレートなロックンロール」。しかしシンプルなものほど強くて深いものはない。たった3つの楽器と歌から生まれるロックンロール。この10年間、どんな状況下でも自分たちのスタイルを変えなかった姿勢が、このイベントの求心力となっていたのは言うまでもない。最後に50回転ズがデンと構えていたからこそ、BAWDIESもBRADIOも遠慮なく「個」を出せたのだと思う。だからこそ多くのバンドから、オーディエンスから、50回転ズは熱狂的に支持されるのだろう。そのリスペクトが爆発したのがアンコールの「ダンス天国」(ウィルソン・ピケットのカバー)だった。ステージに山﨑彩音、真行寺貴秋(BRADIO)、ROY(THE BAWDIES)の3人を呼び込んでの共演は熱狂度も4倍。いや10倍くらいか。まさに至極のダンス天国。ロックンロールは最高だ、と素直に喜びたくなった。こうやって濃密なロックンロールが鳴り響いた七夕の夜はあっという間に過ぎ去った。イベントは一期一会だが、もう一度、同じメンツで見てみたい。(森内淳/DONUT)
WILD SIDE ROCK!! supported by Rock is
- 2017年7月7日(金)赤坂BLITZ
- ザ50回転ズ/THE BAWDIES/BRADIO
- オープニング・アクト:山﨑彩音
SET LIST
山﨑彩音
- 1.アフターストーリーズ
- 2.恋は夢の中
- 3.ロング・グッドバイ
BRADIO
- 1.Revolution
- 2.Super Wonderful
- 3.Flash Light Baby
- 4.Golden Liar
- 5.Back To The Funk
THE BAWDIES
- 1.IT’S TOO LATE
- 2.MEDLEY(JUST BE COOL〜KEEP YOU HAPPY〜ROCK ME BABY〜3.JUST BE COOL)
- 4.THE EDGE
- 5.HOT DOG
- 6.I BEG YOU
- 7.YOU GOTTA DANCE
- 8.KEEP ON ROCKIN’
ザ50回転ズ
- 1.MONEY! MONEY!
- 2.KILLER
- 3.サンダーボーイ
- 4.サムクックがきこえる
- 5.VINYL CHANGES THE WORLD
- 6.YOUNGERS ON THE ROAD
- 7.ロックンロール・マジック
- 8.おさらばブギウギ
- EN
- 1.ダンス天国with ROY(THE BAWDIES)・真行寺貴秋(BRADIO)・山﨑彩音