ザ・コレクターズ、1年半に渡った30周年イベントが中野サンプラで終了。ライブレビューを掲載
ザ・コレクターズが32本におよぶロングツアーを終了。Rock isではツアーファイナルの中野サンプラザでのライブレビューを掲載。
2017年11月3日、ザ・コレクターズのロングツアーが中野サンプラザ公演で終了。今回は32本というバンド史上最も長いツアーだった。同時に、2016年4月に東京・日比谷野外大音楽堂公演から始まった30周年記念イベントも終了。コレクターズはこの30周年イベントを一連のイベントをお祭りや過去を振り返るきっかけとは捉えなかった。野音や武道館でどうやればベストのステージを見せられるのか。それをひたすら実践した。30周年イベントは、大きなサイズのライブ会場でコレクターズを表現するにはどうすればいいのかを試す絶好の機会だった。野音も武道館も、「大会場におけるロック・バンドの表現とは?」というテーマに真摯に向き合ったライブになった。それは中野サンプラザでも貫かれた。30年間の感動は言葉や態度ではなく歌と演奏で表現した。
お祭り気分の演出をしなかった根っこにはTHE WHOの影響がある。名盤『TOMMY』を初めて全曲再現しようという、まさに祝祭のステージでのロジャー・ダルトリーの第一声は「今日はアコースティックじゃないんだ。残念だったな」。高齢のファンに対する皮肉ともいえるようなMCは祝祭向けではない。しかしそれが粋だと、加藤ひさし(vo)と古市コータロー(gt)はいう。30周年の記念行事のすべてはTHE WHO的な粋で貫かれた。お祭りでお祭りをやらないひねくれ方を誰からも共有されなくとも、それをやるのがTHE WHOでありザ・コレクターズなのだ。もちろんTHE WHOの『TOMMY』再現ライブは素晴らしかったし、コレクターズの30周年のシリーズも素晴らしかった。
それが奏功して、コレクターズはアニバーサリー・シリーズのライブでロックンロール・バンドとしての評価を高めた。ハナからお祭り気分を拒否したこともあって、心配されていた武道館ロスはバンドにもオーディエンスにも訪れなかった。32本のロングツアーはすべての会場で動員が上がった。中野サンプラザの2000枚のチケットは即完した。
場内が暗転したのは17時35分。同時に赤い照明が緞帳を照らす。ゆっくりとカーテンが上がると、THE COLLECTORSの文字をかたどった電飾に灯がともる。舞台下手より山森“JEFF”正之(b)と古沢”cozi”岳之(dr)が、舞台上手より古市コータローが登場した。リハーサルを何度も繰り返した演出だ。1曲目の「地球の歩き方」のイントロで加藤ひさしが登場。いつものようにマイク・スタンドからマイクを抜いてドラムの前に置いた瞬間、「Roll Up The Collectors」ツアーのステージがスタート。コンサートは「ロマンチック・プラネット」「Million Cross Roads Rock」「TOUGH」とつづいた。
結成30年オーバーのバンドともなれば、過去曲にスポットが当たり、新曲はお飾りのような立ち位置になりがちだ。それはローリング・ストーンズでもポール・マッカートニーのコンサートでもそうなってしまう。オーディエンスが求めるのは過去のヒット曲やライブの定番曲だ。しかしこのツアーでは新曲がしっかりフックとして機能していた。
『Roll Up The Collectors』から演奏されたのは5曲。「悪の天使と正義の悪魔」「ロマンチック・プラネット」「That’s Great Future ~近未来の景色~」「希望の舟」「ノビシロマックス」。
2曲目に演奏された「ロマンチック・プラネット」は日本武道館のステージでもオーディエンスを盛り上げる曲として好位置に配置されていた。そしてサンプラザのステージでも、最初にオーディエンスを盛り上げる起爆剤として、その役割を果たした。同じく「ノビシロマックス」も後半の重要なポジションに配置された。「NICK! NICK! NICK!」の熱狂を「ノビシロマックス」で盛り上げ、本編最後の「がんばれG.I.Joe!」へとつなげた。
新曲はライブをやるための口実でも、往年の名曲を引き立てる道具でもない。その新曲がいかにセットリストのなかで重要なポジションをしめるのか。スタジオ・アルバムの収録曲がライブにおいてどう成長していくのか。それを示すのが本来のリリース・ツアーの役割だ。ロック・バンドが歩んでいくなかで起こる至極真っ当な新陳代謝。常に新しい光景をオーディエンスは求めている。そういう当たり前のことをコレクターズはやり続けていることが何よりも頼もしい。
なかでも「希望の舟」はこのステージのクライマックスだった。コレクターズらしいロックの大きなグルーブとダイナミズムを携えた楽曲だ。加藤ひさしの情感豊かなボーカルとドラマチックな演奏、そして古市コータローの感情のこもったギターサウンドがコンサートをピークに持っていく。「希望の舟」は、歌のつくりは違うが、「青春ミラー」に匹敵するようなロック・アンセムへと成長した。
コンサートはアルバム『青春ミラー』収録曲でレアな楽曲「孤独な素数たち」、赤と青のライティングで見せた「悪の天使と正義の悪魔」「That’s Great Future ~近未来の景色~」「Stay Cool! Stay Hip! Stay Young!」「問題児」とつづき、MCをはさんで「カラス」「希望の舟」へとつづいていく。
そういえば、最初のMCで古市コータローが22年ぶりの中野サンプラザ公演だといっていた。加藤ひさし曰く「22年前は1階席の最後方と2階席は空席だった」そうだ。ということは、現在の人気は若かりし頃を上回っているということか。その理由は何なのだろうか。近頃はパワーのあるロック・ナンバーをストレートに歌うバンドは数えるほどしかいなくなった。だから、逆に、コレクターズのロックンロールは個性的に映っているのかもしれない。最近、18、9歳のミュージシャンと話す機会が多いのだが、彼らの音楽性が意外とシンプルなロックに向かっている。EDMやミクスチャーを経て、オーディエンスが求めるロックの風景も変わってきているのかもしれない。そこにコレクターズの音楽はハマっているとも考えられる。そういえば客席にはバンド志向の若い男のオーディエンスも増えた。真面目にモッズ道を歩んできたことがこの結果をもたらしていることだけは確かだ。作品は作家を救うというが、まさにそれがコレクターズの現在地だ。
感動的な「希望の舟」のあと、MCをはさんで古市コータロー歌唱の「マネー」、そしてインストゥルメンタルへ突入し、「東京虫バグズ」「NICK! NICK! NICK!」「ノビシロマックス」とつづき、最後は「がんばれG.I.Joe!」で本編を終了した。アンコールは「世界を止めて」と「僕はコレクター」。最後にセットリストには入っていなかった「恋はヒートウェーブ」でしめくくった。
そうそう、本編終盤に突入する直前のMCでは来年のコンサート・スケジュールが発表された。これを忘れてはいけない。コレクターズは2018年、渋谷クラブ・クアトロで毎月1回、12ヵ月連続でライブを行う。これはバンドが3年もあたためていた企画。事務所がなくなり、彼らが路頭に迷ったとき、最初に手を差し伸べたのがクラブ・クアトロだった。以来、コレクターズはクアトロ・マンスリーという企画を立ち上げ、毎回違うセットリストを駆使し、3ヵ月〜6ヵ月の公演をほぼ毎年のように行ってきた。今回の企画はいよいよ本当のクアトロ・マンスリー。もちろんこの12回のライブは毎回違うセットリストで臨む。バンドに加入して1年も経っていないcoziにとっては地獄の試練が待ち受けている。コレクターズにとっては日本武道館公演に匹敵するくらいに大事な企画。30周年シリーズの次はホーム・グラウンドへの恩返しと原点回帰という意味もある。30周年シリーズが終わったけれど、コレクターズの季節はつづく。(森内淳/DONUT)
- セットリスト
- 01.地球の歩き方
02.ロマンチック・プラネット
03.MILLION CROSSROADS ROCK
04.TOUGH
05.孤独な素数たち
06.悪の天使と正義の悪魔
07.That’s Great Future ~近未来の景色~
08.Stay Cool! Stay Hip! Stay Young!
09.問題児
10.カラス
11.希望の舟
12.マネー
13.インスト
14.東京虫バグズ
15.NICK! NICK! NICK!
16.ノビシロマックス
17.がんばれG・I・Joe! - En
18.世界を止めて
19.僕はコレクター
20恋はヒートウェーヴ