CHAIの渋谷WWWワンマンライブをレポート
話題沸騰中の NEO ニュー・エキサイト・オンナバンドCHAIが渋谷WWWでワンマンライブを開催。超満員のライブをレポート。
CHAIの東京でのワンマンライブ第2弾はファースト・アルバム『PINK』のリリース・ツアー。前回のワンマンライブが8月18日下北沢ベースメントバー。もちろんソールドアウト。終演後に11月23日のWWWのワンマンライブを発表。キャパは前回の2倍だが前回につづきソールドアウト。わずか3ヵ月でお客さんは倍になったということだ。今や「チケットを入手が困難なバンド」という印象すらある。客層もぐっと広がった。キャリアの長いロック・リスナーと思しき方もちらほら。CHAIはいろんなフェスやイベントに精力的に出たので、その成果があらわれたのだろう。その派手さから話題先行型のバンドに思われがちだが、CHAIは地に足がついた音楽ファンにも支持される素養を持っている。この日、ステージの上から、「来年はもっと大きなところでやりたい」といっていたが、彼女たちの音楽はコアもマスも取り込む力を持っている。
18時半をすぎた頃、場内が暗転。FMのラジオパーソナリティをパロディにした映像が流れ、いくつかの注意事項を説明。スクリーンが開くとステージ上に「CHAI」の文字を型どった電飾が登場。いきなりスケール感がアップ。上昇気流に乗ったバンドの勢いは見ていて気持ちいい。「このまま行くところまで行ってしまえ!」という気持ちが湧き上がる。CHAIのメンバーはマナ(vo,key)、カナ(gt,vo)、ユウキ(ba,cho)、ユナ(dr.cho)の4人。ピンクの服を身にまとい、『PINK』の冒頭を飾る1曲目「ハイハイあかちゃん」からスタート。ハイキックが延髄を撃ち抜くようなリズムとグルーヴが圧倒的な疾走感を伴って会場を覆い尽くす。2曲目は「N.E.O.」。前回のときもそうだったのだが、ライブの冒頭の時点で、彼女たちのルックス云々というストーリーすらどうでもよくなってしまう。可愛いとか可愛くないを超越した「かっこいい」だけがステージの上で躍る。「すべての楽曲をベースラインから作る」というCHAI。オーディエンスはそのグルーヴにただ委ねるだけ。そんなトランス状態が早くも訪れる。開演前は「CHAIって話題だけど、どんなもんだか見てみよう」的な斜に構えた空気も漂っていたが、冒頭の2曲で吹き飛んだ。
4曲目は「ヴィレヴァンの」。コンプレックスもアート化してしまう力は、やがて「刺激がなきゃ自分でヴィレヴァン作りゃいいじゃん」という創造につながっていく。実際にはコンプレックスをアートに変えるのは大変だし、ヴィレヴァンを作るのも大変だ。だけどそれを大変そうに感じさせないのがCHAIの面白いところ。彼女たちのルックスや佇まいがあっての説得力なのかもしれないが、CHAIを見ていると、難しいこともサラッとできてしまうような気がしてくる。6曲目の「ボーイズ・セコ・メン」はCHAIが示す新しいJポップ。インプロビゼーションにも似たファンクとロックでサウンドの渦とJポップのメロディが同居するこの曲は斬新だ。つづいて7曲目のベースレスの「クールクールビジョン」、8曲目のギターレスの「フライド」と洗練された楽曲を叩き込む。本来なら「ポップスの革命」とかいって崇められてもおかしくはない。ところが彼女たちがあまりにもサラッとやってしまうものだから、新しい大衆音楽のようにしか思えない。こがCHAIのCHAIたるところ。「ヴィレヴァン作るのは簡単かも」「コンプレックスをアートに変えるのは簡単かも」。等身大じゃないことを等身大のように見せる。それがCHAIのすごさだ。
9曲目はメロウな「フラットガール」、10曲目にノイジーなロック・ナンバー「ウォーキング・スター」がつづく。ジャンルレスの音楽をのみこんだ『PINK』の楽曲が前回よりも広い音楽の光景を投映する。CHAIは作品を発表するたびに自由度を増す。フリーペーパー「DONUT FREE」でCHAIにインタビューしたときに、彼女たちは「ジャンルは1個に絞れないし、こだわりもない」といった。普通に考えると、イメージの散漫を引き起こしそうだが、ベースから創り出すグルーヴが1個あればCHAIになるだろうという確信(楽観?)が統一感を生み出している。加えて、ピンクの服を着た笑顔の4人組がそこにいれば、なぜかCHAIの世界観は揺るぎないものになる。むしろ、音楽性がどんどん広がり収拾がつかなくなった方が面白いCHAIに出会えるのかもしれない。
かっこいい音楽のなかで漂っていると、突然、終わりがやって来る。CHAIのライブは短いのだ。アンコールを入れて14曲。全体で70分くらいのライブだ。ベースメントバーのワンマンもそうだった。3ヶ月前から確実に曲が増えているはずだが、やっぱり今回も70分。そこにこだわりがあるのかどうか知る由もない。まるで外タレのライブを見ているようだ。ただ70分のなかでCHAIの物語を作っていることはたしかだ。今の彼女たちはコンパクトで中身の濃い世界をステージに現出させたいのかもしれない。そういう気分じゃなくなったら、90分とか120分のセットでやるのだろう、たぶん。そこも全部、彼女たちが掲げる「やりたいことをやるだけ」に帰結するのかもしれない。この「勝手にやらせてもらうぜ」感を過剰に出すと痛いことになるが、それをもサラッとやってしまうところがCHAIの面白さだ。13曲目の「ほれちゃった」が終わってステージを去る彼女たちを見ながら、「もう終わりかよ?」と思いつつ「じゃーねー!」とかいわれると、「まぁ楽しめたから、これはこれでいっか」と妙に納得してしまう。アンコールも「sayonara complex」のみ。物語の終わりを告げる、美しいエンディングではある。こうやって原稿を書いていると、ずいぶんCHAIの罠にはまっているような気がするが、この罠にはまってる感すら楽しめるのがCHAIのライブだ。次は3月31日、東京キネマ倶楽部。CHAI主催のイベントだそうだ。一体何が飛び出すのか予想すらできないが、まぁ楽しいんだろうな。(森内淳/DONUT)
- セットリスト
- 1. ハイハイあかちゃん
2. N.E.O.
3. Sound & Stomach
4. ビレバンの
5. 自己紹介
6. ボーイズ・セコ・メン
7. クールクールビジョン
8. フライド
9. フラットガール
10. ウォーキング・スター
11. CAT
12. ぎゃらんぶー
13. ほれちゃった
EN
14. sayonara complex