ザ・クロマニヨンズ

ザ・クロマニヨンズ

ツアー ラッキー&ヘブン 2017-2018

2018.4.8(sun)

ツアー ラッキー&ヘブン 2017-2018

ザ・クロマニヨンズのツアーが終了 セミファイナルをライブレビュー

ザ・クロマニヨンズ

2018年4月8日(日)オリンパスホール八王子で行われたザ・クロマニヨンズのツアー・セミファイナルをライブレビュー

4月8日日曜日、オリンパスホール八王子にザ・クロマニヨンズのライブを見に行った。早いもので『ラッキー&ヘブン』のツアーももうセミファイナル。半年間に渡る60本近のツアーもいよいよおしまいだ。最後は4月14日の富山でのライブを残すのみだ。

今ツアーは4回、見に行った。今回がこのツアーで初めて見るホール・コンサートだ。オリンパスホール八王子はJR八王子駅に隣接しているビルのなかにある、立ち見を入れておよそ2千人を収容できるホールだ。会場全体が木でおおわれていて、とても上品な雰囲気が漂っている。クラシックとかポップスのコンサートが似合うような会場だ。爆裂ロックンロール・バンドがやる会場にしてはずいぶん場違いな雰囲気だったが、ステージを見ると、そこにはちゃんと桐田勝治のツーバスのドラムセットが組んであった。その違和感もまたロックンロールということか。

クロマニヨンズは毎回ツアーにホール・コンサートを組み込む。小林勝と桐田勝治もそれなりにキャリアを積んだミュージシャンだが、甲本ヒロトと真島昌利となると、ザ・ブルーハーツのスタートから数えてもキャリアは33年になる。これだけのキャリアを誇っていれば、当然、お客さんの年齢層も広い。たしかにロックンロールの衝動を楽しむにはスタンディングの会場が一番だが、ぼくのような50代半ばで腰痛と膝痛を抱えているような人間はさすがにもみくちゃになる体力は残っていない。

クロマニヨンズのファンには、ぼくと同じ年代のお客さんもいれば、小さな子どもを連れたお客さんもいる。そういうオーディエンスに対応する意味でもホール・コンサートはとても大事だ。逆にいうと、今でもスタンディングの会場がクロマニヨンズの主流だということは、今でも若いファンがどんどん入ってきている証拠だが。

ザ・クロマニヨンズ

ホール・コンサートはクロマニヨンズの楽曲をじっくり楽しむ場としても機能している。とくに今作『ラッキー&ヘブン』はエイトビートの楽曲だけではなく、多彩な表情を持った楽曲が多数収録されている。そうでなくてもクロマニヨンズのロックンロールはサウンドこそシンプルだが、リリックは深く、メロディはキャッチーだ。楽曲に横たわるユーモアや皮肉や批評眼はクロマニヨンズのすべての音楽のなかに連綿と棲息している。そういった側面をじっくりと楽しむにはホール・コンサートほどうってつけの場所はない。毎度、ホール・コンサートを見に行って、感動して帰るのは、スタンディングの会場のライブよりも、コアに横たわる風景がよく見えるからだ。なかには「暴れられないからホールには行かない」という人もいると思う。それもアリだが、違う見方をすると、クロマニヨンズの新しい楽しみ方に出会えると思う。

照明が暗くなり、桐田勝治、小林勝、真島昌利が登場。最後に甲本ヒロトが姿を現す。この瞬間、ここがどんな会場だろうと関係なくなる。ステージがあって、4人がいて、『ラッキー&ヘブン』のバックドロップがある。座席という秩序で囲われたオーディエンスが発する興奮はいつもと同じく無秩序だ。

「最後まで楽しんでってくれよ。やるぞ、やるぞ、やるぞ!」と甲本がいうと、1曲目の「デカしていこう」が始まった。ツアー初期に比べると、楽曲とバンドのフィット感が格段によくなっている。ステージそのものを4人が自分たちものにしている感じが鮮明に伝わってくる。パフォーマンスには余裕すら生まれている。ライブはやればやるほど成長するのだ。これがロングツアーの面白さでもある。だからツアーファイナル近辺のライブを見ると、このままツアーが終わるのはもったいない、といつも思ってしまう。逆にツアー初期のライブには何が起こるかわからない面白さがある。自分たちでも手の内が読めないハプニングはライブに新鮮さをもたらす。クロマニヨンズのツアーは狂熱が支配するライブハウスからじっくり鑑賞することも可能なホールへとつづく。その展開が、ライブの成熟度にマッチしていて、とても面白い。

ザ・クロマニヨンズ

2曲目は「流れ弾」。「負の感情は全部食らってやるから、ここに置いていけ」という歌だ。3曲目の「どん底」では「今がどん底ならあとは上がるだけ」というシンプルなメッセージが放たれる。「もう1曲つづけてやらせてくれ。いくぞー!」とヒロトがいって始まったのはシングルB面の「ぼー」。この「ぼー」をのぞいては、「デカしていこう」から8曲目の「盆踊り」まで『ラッキー&ヘブン』の曲順通りに進行する。「最新作を全部聴かせるセットリスト」は4回のコンサートとも不動だった。

クロマニヨンズも現れてから今年で12年になる。キャリアを積むとレパートリーも増え、だんだんベスト盤的なセットリストになっていく。しかしクロマニヨンズの考え方は少し違う。レパートリーが増えるからこそ、めったに披露できない曲も多々出てくる。この先、ライブでは聴けない楽曲もあるだろうから、せめて最新作のツアーのときには、収録曲を聴いてもらおうという趣向だ。オーディエンスとしては馴染みの過去曲を求めがちだが、二度と聴けないかもしれない楽曲を体験しているとすれば、この90分間が余計に一期一会の貴重な時間に思えてくる。

前半のハイライトは、「足のはやい無口な女の子」「ハッセンハッピャク」「嗚呼! もう夏は!」「盆踊り」のパートだ。『ラッキー&ヘブン』の振れ幅の大きさを示す楽曲が次々に繰り出される。観客は深いビートやユニークなリフやリリックをじっくり楽しんでいた。「盆踊り」なんてロックンロールじゃねえという空気は微塵もなく、むしろ前半で一番盛り上がったのではないか。毎度クロマニヨンズのお客さんのセンスのよさには感心させられる。

この4曲はどうでも解釈できるようなリリックやサウンドで構成されている。リスナーの感覚次第で、いろんな意味を持つ楽曲だ。ということは、2千人の観客は2千通りの解釈で勝手に盛り上がっているのだ。それはなかなかすごい光景だ。究極のロックンロールのあり方といっていいかもしれない。

ザ・クロマニヨンズ

オリンパスホール八王子の「音の鳴り」も盛り上がりに拍車をかけていた。最初は少し高音が気になったが、途中から心地よいところに着地。小林勝のベース、桐田勝治のドラム、真島昌利のギター、甲本ヒロトのハープのひとつひとつの楽器の音がくっきりと立っていた。かっこいいビートがずんずん迫ってくる。とくに真島昌利のギターの音がとてもよく響いていた。このパートでいくと「嗚呼! もう夏は!」の最初のギターの音なんかぐっとくるものがあった。後半の「ルンダナベイビー」のギターの音もよかった。このとき、蓄音機もアナログレコードもカセットテープもいいけれど、ライブに勝るリスニング環境はないな、と思った。比べるものではないのかもしれないけど。

『ラッキー&ヘブン』の楽曲を一旦離れ、『YETI vs CROMAGNON』から「チェリーとラバーソール」と「ヘッドバンガー」を、『JUNGLE 9』から「今夜ロックンロールに殺されたい」を演奏。「チェリーとラバーソール」と「ヘッドバンガー」は頻繁に演奏される曲ではない。なかなか意表を突いた選曲だ。しかしお客さんはやたらと盛り上がっていた。ポール・マッカートニーのコンサートでウイングスの隠れた名曲が出てきたときに熱狂するのと同じ心境なのかな、と思った。たぶん、そういうことだろう。そういう意味では、オーディエンスはまさに今クロマニヨンズのロックンロールで殺されているのだ。

セットリストは『ラッキー&ヘブン』に戻り、「ユウマヅメ」が始まる。そこへライブハウスでは登場しなかった新しいバックドロップが出現。『ラッキー&ヘブン』の歌詞カードの裏のイラストが描かれている。アルバムを購入した方なら知っていると思うが、過去のクロマニヨンズのジャケットデザインの要素を中心に描かれた菅谷晋一氏によるイラストレーションは秀逸。このアートワークがクロマニヨンズのポップな世界観を象徴している。それに加え、「ルンダナベイビー」「ワンゴー」「ジャッカル」とセットリストが進むにつれて、それまで白が基調だった照明にもどんどん色が加わり、徐々にエンタテインメント色が強まっていく。「クロマニヨンズの曲をクロマニヨンズがやるのは最高です。今夜もクロマニヨンズはやりたがってるぞ。やりたい4人を紹介します」といって、メンバーを紹介。ドカドカと力強いドラムが刻まれ「ペテン師ロック」がスタートする。それを合図にエンタテインメントのスイッチが完全にオンになる。照明がどんどんエスカレートしていき、アリーナ・コンサートのような様相を呈していく。ライブハウスでは見られなかった演出だ。美しい照明がクロマニヨンズを照らし、クロマニヨンズはロックンロールやブルーズを美しく照らす。「ペテン師ロック」「エルビス(仮)」「紙飛行機」「ナンバーワン野郎!」が矢継ぎ早に演奏され、ライブはクライマックスを迎える。

ザ・クロマニヨンズ

最後に『ラッキー&ヘブン』B面の最後に収録されている曲「散歩」を披露。「散歩」もテンポの速い曲ではない。熱狂の渦で終わるのがクロマニヨンズのライブの特徴だが、今ツアーはそうではない。それが『ラッキー&ヘブン』ツアーなのだ。甲本はステージの上から「おうちで聴いてみな、いいアルバムです」といった。

アンコールは「突撃ロック」「ギリギリガガンガン」「タリホー」の3曲をたたみこむように演奏する。熱いことを延々と語るMCもなく、ステージでの感動を言葉で伝えたりもしないで、ひたすらロックンロールを繰り出す。そのかわり楽曲がいろんなことを雄弁に語ってくれる。それがクロマニヨンズのライブだ。そこはライブハウスだろうがホールだろうが変わらない。こうやって2018年4月8日日曜日の23曲90分にわたる物語は終了した。(森内淳/DONUT)

ザ・クロマニヨンズ

  • <セットリスト>
    ツアー ラッキー&ヘブン 2017-2018
    2018年4月8日(日)オリンパスホール八王子
  • 1.デカしていこう
    2.流れ弾
    3.どん底
    4.ぼー
    5.足のはやい無口な女の子
    6.ハッセンハッピャク
    7.嗚呼!もう夏は!
    8.盆踊り
    9.チェリーとラバーソール
    10.ヘッドバンガー
    11.今夜ロックンロールに殺されたい
    12.ユウマヅメ
    13.ルンダナベイビー
    14.ワンゴー
    15.ジャッカル
    16.ペテン師ロック
    17.エルビス(仮)
    18.紙飛行機
    19.ナンバーワン野郎!
    20.散歩
    EN.
    21.突撃ロック
    22.ギリギリガガンガン
    23.タリホー
「Rock is LIVE 5」2018.10.12(金)開催