19歳のソロアーティスト山﨑彩音がメジャーデビューアルバムについて語る
19歳のソロアーティスト山﨑彩音がメジャーデビュー。ファーストアルバム『METROPOLIS』について語る
19歳のソロアーティスト山﨑彩音は、2枚のインディーズ作品を通して自分の内面と向き合ってきた。その真骨頂が前作の表題曲「キキ」。出口を探しながら彷徨う心の風景を淡々と描いた楽曲だ。メンヘラ的痛さと絶叫が響き渡る昨今の女性アーティストの歌に1ミリも心が震えない筆者は「キキ」にこそ10代の真のリアリティを感じることができた。世の中には叫ぶことすらできない者もいるのだ。それは筆者の世代でも同じだ。7月25日にリリースされるメジャーファーストアルバム『METROPOLIS』でも山﨑彩音の歌のアプローチは変わらない。とくに「メェメェ羊とミルクチョコレイト」は今作の代表曲といっていい。「キキ」に匹敵する静かな力をもつ曲だ。では、メジャー第1作めが前作までの延長線上にあるのかというとそうではない。このアルバムの前半にはバンドのグルーヴを活かした突き抜けた楽曲が収録されている。何層にも積み重ねられたアレンジの後半の楽曲が内に向かうベクトルによる楽曲だとすると、前半の楽曲は外に向かっている。山﨑彩音は前半の楽曲を内面へいざなうための「扉」だと位置づけている。なぜ「扉」を準備したくなったのかはインタビューを見てもらうことにして、前半の楽曲は山﨑彩音の音楽を聴くきっかけをより多くの人に与えるだろう。リスナーがポップな楽曲に誘われ「メェメェ羊とミルクチョコレイト」へと到達してくれると、彼女のコアにより近づけると思う。すなわち『METROPOLIS』は山﨑彩音をめぐる冒険譚のようなアルバムだ。(森内淳/DONUT)