THE COLLECTORSのクアトロ・マンスリーを振り返って
2018年のザ・コレクターズの渋谷クアトロ・マンスリーは12ヵ月連続で行われた。いつもは3ヵ月から5ヵ月の企画。1年を通してのリアル・クアトロ・マンスリーは初めての試みだ。クアトロ・マンスリーの特徴は普段ツアーのセットリストから外される曲も演奏するということ。おなじみの曲でも普段ではありえないような曲順で登場すること。毎月セットリストが変わること。それを1ヵ月のインターバルで仕上げなければならないこと。早い話、メンバーにとっては試練のシリーズだ。渋谷クアトロはコレクターズにとってホーム・グラウンド。だからこそやれる企画でもある。
12ヵ月連続クアトロ・マンスリーは、2017年の日本武道館公演が終わり、それにつづくロングツアー、中野サンプラザでのライブを経て、実現した。新たな企画に挑む挑戦的な姿勢は日本武道館のライブが起点になっている。結成30周年&デビュー30周年を同時に祝った日本武道館公演はバンドの集大成になると思いきや「2017年のコレクターズがやるアリーナ・ライブ」をコンセプトに行われた。過去を振り返るのは最初の映像のときだけ。MCは立ち小便の話だし、最後に演奏された楽曲は洋楽のカバー曲「恋はヒートウェイヴ」だ。どう考えてもいつものライブのアリーナ・バージョンだった。
それは日本武道館がゴールでも到達点でもなく、ましてや解散ライブでもなかったからだ。観客もポッドキャストや藤井フミヤの番組をきっかけに、ここ10年でファンになった人も多い。あまり集大成的なものを求められていなかったという事情もあった。ただ、何よりもバンドは走りつづけなければならない。その走りつづける途中の道に、日本武道館公演があり、同じように「やらずにいられないライブ」として、クアトロ・マンスリーも存在した。
好きな曲や人気曲が演奏されるとは限らないクアトロ・マンスリーも蓋を開ければ、全公演ソールドアウト。今回、初めてクアトロ・マンスリーを見たファンもいると思う。そういう人にとっては驚きの連続だったかもしれない。それは2017年にバンドに加入したドラムの古沢”cozi”岳之や、2014年に加入したベースの山森“JEFF”正之にとっても同じだ。過去30年間で蓄積された「馴染みのない楽曲」を月替りで覚えていかないといけない。この1年は「隠れた名曲たち」を習得する貴重な時間になったはずだ。
普段のライブ同様、選曲とセットリストづくりはギターの古市コータローの担当。毎回、クアトロ・マンスリーがどうやれば面白くなるか、というところに力点が置かれていた。それを実際に披露するときの苦労は二の次。このシリーズで面白かったのは(面白かったっていう表現が合ってるかどうかわからないけれど)、毎回、出てくるセットリストに、ボーカルの加藤ひさしは悲鳴を上げていた。12月を例をあげれば、4月のライブで本編最後に演奏された大作「嘆きのロミオ」がいきなりオープニングで登場したりするのだ。しかし何だかんだいいながらも毎回それをクリアしていく。あらためてコレクターズのポテンシャルの高さを見せつけられた。
12月のライブのセットリストは以下の通り。1. 嘆きのロミオ 2. ぼくのプロペラ 3. See-Saw 4. プロポーズソング 5. ミッドナイト・レインボー 6. ひとりぼっちのアイラブユー 7. Crazy Love For You 8. クライム サスペンス 9. MONDAY 10. 世界を止めて 11. 僕は恐竜 12. ベイビーハリケーン 13. インスト 14. ロマンチック・プラネット 15. ノビシロマックス 16. LUNA 17. PUNK OF HEARTS <EN1>1.Dreamin’ 2. Very Merry Christmas Song 2. 僕はコレクター <EN2> 1. 恋の3Dメガネ このシリーズは本編とアンコール合わせて1時間45分から2時間弱で終わっていたが、長尺な曲が多かったこともあって、この日のライブは本編だけで1時間45分を費やした。2度目のアンコールの「恋の3Dメガネ」が終わったときには2時間10分が経過していた。本編最後に「PUNK OF HEARTS 」を持ってきたのはおそらく5月のマンスリーで本編ラスト前に演奏したときのオーディエンスの反応を受けてのことだと思う。バンドを代表するナンバー「NICK! NICK! NICK!」に匹敵するポジションを得てもおかしくない盛り上がりだった。クアトロ・マンスリーをやる流れのなかで、オーディエンスのリアクションを拾いながらライブがつくられていくところも楽しめた。
一番ユニークだったのは9月のライブか(全部ユニークといえばユニークなんだけど)。『SUPERSONIC SUNRISE』収録の「PUPPET MASTER」で始まり、3曲目に「BOXING TIME」というレア曲(2月のライブのオープニングナンバー)を演奏、直前に行われたスピッツのイベントで演奏した(スピッツの曲)「ドルフィン・ラブ」のカバーをアンコールでやったり、まさに「ザッツ・クアトロ・マンスリー」といった内容だった。王道のコレクターズなんだけど、最近ではあまり演奏されない楽曲で曲順を組んだ10月のライブや、冒頭から「ツイスター」「占い師 」「スーパー・ソニック・マン」「ロボット工場」といったコレクターズ流のロックンロールを叩き込んだ7月のライブも印象に残った。
このクアトロ・マンスリーの間にコレクターズは新作『YOUNG MAN ROCK』をリリース。さらに『さらば青春の新宿JAM』という映画を公開した。東京モッズ・シーンと「コレクターズにとってのモッズとは何か?」を明らかにしたこの映画は想定外の反響を呼び、今もロングラン中だ。なんだか今年が周年のような展開だが、すべての作品やライブに共通していえることは、それらはすべてコレクターズの現在地を示すものだということだ。『さらば青春の新宿JAM』で、コレクターズは「過去にとらわれずに常に新しい地平を目指すと同時に、コレクターズなりのパワーポップを追求しつづける」と宣言。日本武道館、クアトロ・マンスリー、『YOUNG MAN ROCK』が「現在進行形」でなければならなかったのはそういうことだ。そして『さらば青春の新宿JAM』のつづきは『YOUNG MAN ROCK』のリリース・ツアーで見ることができる。古市コータロー曰く「リリース・ツアーでは新作から10曲中8曲を演奏する」。クアトロ・マンスリーとはまた違ったチャレンジを目撃できるだろう。コレクターズの物語は、そうやってこれからもつづいていく。(森内淳/DONUT)