THE BOYS&GIRLS、4人で歩んだ8年の日々と第二章を繋いだ一夜
THE BOYS&GIRLS「少年少女の陽炎」ツアー
3/28札幌公演をレポート
「花みたいなバンドになりたい」。3月19日、渋谷CLUB QUATTROのステージでワタナベシンゴ(歌)はそう語った。THE BOYS&GIRLSの全国ワンマンツアー「少年少女の陽炎」東京公演でのひと幕。ボイガルは3月11日 心斎橋BRONZE、3月19日 渋谷CLUB QUATTRO、3月28日 札幌PENNY LANE 24の3カ所をまわるツアーをもって、バンドからケントボーイズ(ギター)、ソトムラカイト(ベース)、カネコトモヤ(ドラム)の3人が脱退した。このことは昨年12月にメンバーから前もって報告があったことで、ファンは多少なりとも心の準備はできていたかもしれない。というより、卓球をしながら脱退発表をするという前代未聞の映像によるお知らせに、なんだかもう最終的には笑って受け止めるしかなかった、というほうが近いか。そしてその日はあっという間にやってきた。先述した満場のクアトロでの光景を胸に3月28日、札幌へ向かった。
「少年少女の陽炎」ツアーは3公演ともにソールドアウトとなっていたが、ひとりでも多くのファンが入れるよう、追加で当日券も発売された。地元・札幌PENNY LANE 24のフロアも端から端までパンパン。この日の札幌は最高気温2度というまだまだ寒い日だったが、そんな寒さを一蹴するほど会場の熱気は開演前から高まっていた。
19時を6分ほど過ぎたところでSEが鳴りメンバーが登場。「今だ!」という叫びとともに1曲目がスタートした。まさかの新曲はじまり。まるで、ボイガルは続いていくんだということを表明したかのようなセットリスト。そして何より、いまこの瞬間もこの4人で進み続けているんだというスタンス。その姿を見られただけでも札幌まで来た甲斐が十分にあった。そんな幕開けにのっけから痺れていると、矢継ぎ早に代表曲が繰り出される。フロアにあがる拳の強さ。巻き起こる合唱。こうした景色はボイガルのライブではお馴染みのものだが、ここでふと、自分が札幌に来ていることを思い返す。この感覚を言葉にするのはひじょうに難しいのだが、「北海道・札幌のボイガル」を強烈に感じたのだ。札幌で彼らのライブを見るのは2度目で、初めて見たときにも感じたことだが、ここで見るTHE BOYS&GIRLSは強い。地元のスーパーヒーローみたいに強さがパワーアップしている、ように感じる。おそらく彼らにとって“地元だから許される”という意識は皆無で、あるのは逆に“地元だからこそ一番かっこよくなきゃいけない”という無意識の気合い。そう言ったら彼らはきっと「どこで演っても同じ」と答えるだろうけれど。でも、地元でのライブはステージもフロアもやはり違って見えた。どこのライブでも必ず、ワタナベシンゴは「北海道札幌代表 THE BOYS&GIRLS」と自分たちのことを紹介するが、ここに来て初めてその言葉がもつエモーショナルさを実感した。そんなことを思いながら聴く「札幌」に続き、「錆びないダイヤ」「24」…とステージは進む。胸に沁みついている情景が鮮やかに降ってくる。
ボイガルの曲は、例えば「頑張ろうぜ」とか「大丈夫だよ」といった直接的な言葉で私たちを勇気付けたりはしない。なのに聴くと奮い立つ。心が前を向く。<雨にも負けそうで 風にも負けそうで それでもただの一日は過ぎていく>(「24」)。リスナーひとり一人の“ただの一日”の中で歩みが続いていく歌がある。それはワタナベのMCからも伝わってきた。「4人で過ごしてきた日々は俺にとってかけがえのないもので財産です。この先も続いていく日々の中で、新しい気持ちに出会いながら、これまでの僕らの音楽と、これからの僕らの音楽が生活のそばで、人生の裏で流れていたら嬉しい」(ワタナベ)。ボイガルのナンバーはまさに私たちのバックグラウンドミュージックだ。
パワフルなギターリフを全身・表情いっぱいにプレイするケントボーイズ。クールな佇まいで熱いベースラインを繰り出すソトムラカイト。時におちゃめに笑いを提供しながら、ステージ後方からバンドのビートを束ねるカネコトモヤ。続々とナンバーが繰り出されるなか、「ライク・ア・ローリング・ソング」でワタナベがフロアの一番後ろまで駆け抜けた。その瞬間、たくさんの場所が最前列になる。見慣れた景色なんてひとつもない。様々な季節を経て、いつだって今を辿っている最中だ。
「8年間楽しかったです。僕はこれからも音楽を続けます。これからもシンゴちゃんがTHE BOYS&GIRLSをやりますので応援よろしくお願いします」(カネコトモヤ)
「8年間続いたことって他にないと思っていたら、水泳はもっとやってたことに気づいた。だから2番目に続いたことです。ありがとうございました」(ソトムラカイト)
「一生懸命やってきました。今日という日を少しでも楽しんでもらえたらすごく嬉しいです」(ケントボーイズ)
感謝と照れの織り混ざった3人のMCに続き「僕の自慢です。人生においての宝物です」とワタナベが3人のことを紹介。そして「少年が歌うメロディー」へ。初ライブの時から演っているというこの曲がボイガルの8年を今へと繋ぎ、更新する。そして「すべてはここから」の大合唱で本編が終了。
歓声を受けて再度登場した4人がアンコールで鳴らしたのは「パレードは続く」と「せーので歌うバラード」。この曲たちがどれほど多くの人たちの心を彩り、どれほどたくさんのライブで響いてきたか。そして鳴り止まない声援ののち、実現したダブルアンコールで正真正銘、最後の曲となったのは超久々のナンバー「ハローグッバイサンキュー」! フロアじゅうが笑って泣いて、でも最後は笑顔で締めくくった大合唱だらけの約2時間30分。ラストの叫びは「ありがとう」という感謝とともに、やはりこの言葉だった――「北海道札幌から、THE BOYS&GIRLS!!」。現体制ラスト公演は、ボイガルの8年間とその先を少し覗かせた、とてもいいステージだった。何度も何度も“世界一の”“親友の”と表現したメンバーと別れ、THE BOYS&GIRLSは今後、ワタナベがサポートメンバーを迎えて活動を続けていく。ボイガル、青春の第一章・完。そして物語は第二章へ。会場を出ると外には雪が。ケントボーイズ、ソトムラカイト、カネコトモヤのボイガル卒業を、札幌らしく、桜吹雪ではなく雪が見送っていた。
「花みたいなバンドになりたい」。東京でも言ったけど――という言葉に続いてワタナベシンゴは札幌でもこの言葉を口にした。ボイガルのナンバーに雨の歌が多いのは、花を咲かせるためかもしれない。けもの道にもどんな道にも種を蒔いてきたバンド。これからも大きな口で、大きな声で、大きな歌の花を強く美しく、咲かせてくれると思う。
声にならない時はこの歌を。寂しくなった時はこの歌を。ハローグッバイサンキュー! ボイガルのパレードは続く。(秋元美乃/DONUT)
- THE BOYS&GIRLS「少年少女の陽炎」
2019年3月28日(木)札幌PENNY LANE 24 - <セットリスト>
- 01.今だ!(新曲)
02.勇気をください
03.ただの一日
04.卒業証書
05.札幌
06.錆びないダイヤ
07.合言葉を胸に
08.歩く日々ソング
09.24
10.メル
11.春々
12.国道恍惚線
13.一炊の夢
14.ノンフィクションの約束
15.階段に座って
16.ライク・ア・ローリング・ソング
17.少年が歌うメロディー
18.すべてはここから - en.パレードは続く
en2.せーので歌うバラード - en3.ハローグッバイサンキュー