音楽・ロックンロールのWEBマガジン
Rock is(ロックイズ)

Drop’sの中野ミホが好きな映画、おすすめの映画を紹介

Drop's 中野ミホの「まほうの映画館」

2019/10/14

第十八回「どこからだって、わたしは蝶になって、とんでゆける。スワロウテイル」

みなさんごきげんよう~。

10月になりましたね。うーん、10月ってもっと涼しかったような。
というか例年もう寒くなり始めてるようなー。
どうにか地球とうまくやっていきたいものです。
みんな元気ですか?

さー、今月は邦画でまいります。
その前に、私事ですが先日初めて舞台に出演させていただきました。
役者さんのお芝居を間近でビシビシ感じ、自分も歌と、少しですがお芝居をさせていただき、ものすごく貴重な経験になりました!
一つの物語をみんなで作りあげるには、その中の誰が欠けてもだめなんだなぁきっと。
一人ひとりの気持ちと努力があってはじめて成立するんだなぁ。すごいことだ。
とにかく楽しかったー! 刺激的で、素晴らしかったです。

そのとき共演者の方々と映画の話題で盛り上がり、お名前があがったのが岩井俊二監督。
そういえば私の憧れのミュージシャンもとても好きとインタビューで言っていたのを思い出し、ずっと観たかったけど観れていなかったこちらを今月はチョイス!

『スワロウテイル』。
1996年、日本の映画。監督は岩井俊二さん、出演はCharaさん、三上博史さん、伊藤歩さん、江口洋介さん、渡部篤郎さんなど。
舞台は、「円」が世界で一番強かったいつかの日本。一攫千金を夢見てやってきた外国人達は、街を「円都(イェン・タウン)」と呼び、日本人達は住みついたその違法労働者達を「円盗(イェン・タウン)」と呼んで軽蔑していました。
主人公の少女・アゲハ(伊藤歩さん)は、円都の娼婦であり唯一の肉親である母が死んでしまい、行き場がなくなってしまいます。無責任な大人達にたらい回しにされる中、おなじ円盗の娼婦・グリコ(Charaさん)の元に引き取られます。
胸に蝶の刺青をつけ美しい歌を歌うグリコは、それまで名前がなかった彼女に「アゲハ」という名前を与え共に暮らし始めます。
ある日、アゲハを強姦しようとしたグリコのお客のヤクザを彼女の仲間が誤って死なせてしまいます。
実は彼の体内には一万円札の磁気データが記録されたカセットテープが入っており、それを手にすることになってしまった彼女たち。そのデータを元に作った偽札で儲け、グリコは歌手としての道を歩み始めますが……。
円都に住む円盗たちの物語。

実は恥ずかしながら岩井監督の作品を初めて観たのですが、なんていうか、今までに観たことない映画だったー!!
勝手に、綺麗な映像であふれてるのかなとか思っていたのですが、全然違いました、むしろすごくドロドロしていて、混沌としていて、暴力や犯罪もしっかり描かれています。

そしてその中で、伊藤さん演じるアゲハの存在がすごく真っ白で凛としていた。
彼女が強くなっていくと同時に表情も大人になっていって。
蝶の刺青を胸にいれて、彼女は飛んでゆけるのかな。ゆけるんだろな。

それとCharaさん演じるグリコの歌声……!
もう一瞬で空気を変えてしまう素晴らしさ。もともと大好きなミュージシャンです。
Charaさんは登場からなんていうか、日本人でも中国人でもなく、Charaでもなく完全な役の人でもないような、どこにも属していない独特の雰囲気がとっても魅力的でした。カタコトの言葉も可愛い!
劇中でキーとなる「マイ・ウェイ」を歌うシーン。
なんとなくピアノが始まって、彼女が歌い始めて、バンドがそれに呼応していくのが鳥肌立つほど素敵だったなぁ。
廃材の山でクレーンに吊られてるピアノを引き取って、トラックの荷台に乗せて弾きながら走らせるのとか、やりたい! 私もやりたい!笑 (あっ実はギターならやったことあった。Drop’s/未来のビデオみて!笑)

ストーリーは、ヤクザの持っていたテープを狙われて追われて、とか、ある程度予想のつく展開になるのかと思えばそういうわけでもなく、いろんな人のいろんな思いがからまってこちらも混沌としていたな!
三上さん演じるフェイホンはものすごく切なかった……。
グリコのこと本当はとても愛してたんだよね。
明るくてちょっとふざけたキャラクターだったからよけいに悲しかったな。

ロン毛時代の江口洋介さんも出てますよ!! 若きならず者のカリスマ。輝いている。。
そして渡部篤郎さんもめちゃくちゃクールで美しいです。
で特筆すべきなのは桃井かおりさん!(個人的に)
超重要な役ってわけではないのですが、いい味出しまくってたー。どのセリフもなんかとても似合っていました。
あとね話し方や声がとても気持ちいいなぁこの人と思ったお医者さんの役はミッキー・カーチスさんでありました。豪華!

とにかくこの映画は日本語、英語、中国語が混ざっているところが面白いし、アジアのどこかのスラム街のような景色と90年代の東京の景色がごっちゃになっていてとにかくカオス。
だから「都内で偽札が〜」という表現はなんか違和感あって面白かったな。
でも2019年の今の東京はこの世界とそんなに遠くないのかなと思ったりもして。

この話では日本人は出稼ぎに来た外国人のことを「円盗(イェンタウン)」と呼んで軽蔑している。
自分は日本人として生まれて日本で育っているから、ほとんど感じたことはないけれど世界ではまだいっぱいそういう差別とか偏見とか、それに伴う暴力とか、あるんだろうな。
言葉とか国とか本当はどうでもいいことなのにな。と思ったりしました。
自分も知らずに心の中でそういう境界線を引いてしまったりしないようにしたい。

あと保険金をかけられて命を売った人とか出てきて普通にこわかったな……。
子供たちが偽札を使って荒稼ぎしたり。そういうショッキングな場面も多かったです。

ていうか、そもそもこんな設定を思いつくのがすごいよね。。
やはり想像力ってだいじだな。ロマンチック!

全体的にずーっと混沌としてて、目と脳と気持ちがこう、いっぱいになってるのだけど
最後、最後のエンドロールで流れるYEN TOWN BANDの「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」が、ぐさっときた。
この曲単体で知っている人も多いと思うし、私もそうでした。
もともと大好きな歌だったのだけど、こうやってこの映画のエンドロールで聴くとうわぁ……!
となるほど素晴らしかったです。
しっくりきたし大きく救われたというか。
今まで聴いていたのの何倍も響いた。蝶になって、たしかに飛んでった。

 

自分も歌や言葉の力でもっと何かしたいなぁと思うような刺激的な作品でした。
知人や友人、憧れの人の大事な映画を観るのってドキドキしていいよね!

どんどんおすすめ教えてほしいです。もっともっといろんな世界を見たい知りたい!

あ! Drop’sはまもなくツアーも始まります! どんな景色が見られるのだろうか、楽しみな旅!
ツアーでもお会いできたら嬉しいです。

ではまた~。

 


『スワロウテイル』

監督・脚本:岩井俊二
1996年:日本

Drop’s 10th Anniversary ONE MAN TOUR 2019「Tiny Ground」

10月23日(水) 愛知・名古屋CLUB UPSET 
OPEN19:00/START19:30

10月25日(金) 香川・高松TOONICE
OPEN18:30/START19:00

10月26日(土) 広島・広島セカンドクラッチ
OPEN16:30/START17:00

10月28日(月) 福岡・福岡graf
OPEN18:30/START19:00

11月1日(金) 宮城・仙台enn3rd
OPEN18:30/START19:00

11月4日(月・祝) 北海道・札幌KRAPS HALL
OPEN16:30/START17:00

11月12日(火) 大阪・心斎橋JANUS
OPEN19:00/START19:30

11月15日(金) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
OPEN18:30/START19:30

チケット:3,000円(税込・ドリンク代別)
一般発売開始:8月25日(日)~

5th album 『Tiny Ground』

2019年9月20日(金)リリース
BZCS.1179/2,778円+税

Drop’s 5th full album『Tiny Ground』

全11曲収録
1. Tシャツと涙
2. EAST70
3. 毎日がラブソング
4. Lost in Construction
5. Cinderella
6. Blue
7. Little Sign
8. アイラブユー
9. 天使とラストシーン
10. 春の羊
11. マイハート

Drop’s 5thAlbum『Tiny Ground』 trailer