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Drop’sの中野ミホが好きな映画、おすすめの映画を紹介

Drop's 中野ミホの「まほうの映画館」

2018/5/21

第一回「なんにもなくても、ちゃんとあった。ラッキー。」

みなさん、はじめまして。
Drop’sのボーカル、中野ミホと申します。

今月から、映画についての連載をもたせていただくことになりました!
わたしの好きな映画、おすすめの映画を、
感想をメインにゆるくご紹介していこうと思っています。
よかったら、お付き合いくださいませ。うふふ。

まずですね。
わたしにとって映画は、魔法だな、と思うのです。(突然)
たった2時間くらいでまったく知らない世界へ連れて行ってくれる。
そしてその間、自分がどんな顔だったか、何歳だったか、職業はなにか、
そんなこと全部忘れちゃう。どうでもよくなっちゃう。
観終わったあと、なんかちょっと景色が違って見えたりする。
あぁ〜、すばらしいね。。

というわけで、笑
「まほうの映画館」と名付けました。
読んでもらえたら嬉しいな、よろしくお願いします。

 

記念すべき第一回目は、
『LUCKY』。
2017年製作のアメリカの映画です。
先日、渋谷の映画館で観てきました。

これはね、、最初に感想を一言で言ってしまうと、、
うぅー最高!!
ですよ!
よかったなぁ。こりゃー。

2017年9月に亡くなった、ハリー・ディーン・スタントンの最後の主演作。
個人的には、(たぶん、世間的にも)『パリ、テキサス』で演じたあの寡黙な主人公が印象的な人物です。

彼が演じるラッキーは、90歳。毎朝一人で目を覚まし、決まったルーティンで生活をする、
ちょっと頑固なおじいちゃん。(けっこう本当におじいちゃんの体をしてます。)
淡々と日々を過ごしていた彼ですが、ある朝突然気を失って倒れてしまいます。
無事だったものの、その日から少しずつ、なんとなく、変わりはじめる彼の気持ち。
周りの人たちとの会話。そして、なにを見つけるのか?
そんなお話。

いつも当たり前だと思っている生活、ひと、ものがなくなってしまう。
自分がここからいなくなってしまう。
そんなこと普段はあまり意識しないけれど、
彼のようにふと気づいてしまうときが来るのかもしれない。
でもその時、周りにはいつものようにいろんな人がいて、言葉があって、音楽がある。
そして微笑む。
それでいいんだな、それが単純に、すばらしく美しいなぁと思いました。

ラッキーには戦争に行ったという経験があるんだけど、
彼だけではなくて、他の登場人物にもそれぞれに過去があって、
今があって、いろいろある。
(絶妙な距離感の、これまた愛すべき登場人物たち!)
だけどみんな、毎日を生きてる。

そしていつかは、いなくなる。
それぞれが
それに気づいても、まだ気づかなくても、いいんじゃないかなーと思ったよ。

でねー、やっぱり、音楽のシーンが最高だった!
パーティーで歌いだすスペイン語の歌、部屋で一人ふくハーモニカ。
すーっと、まっすぐ、伝わってくる温度。
ううーん、ぐっときます。
映画の中で音楽が奏でられるのって、本当に好き!
もし自分が映画を撮るなら絶対に入れたい!といつも思う。

とにかく、
ハリーさん、最後の主演作でこんな、素晴らしい表情をしているなんて。
いいなぁ。うらやましい。
自分もこの世からいなくなるとき、おだやかに、
さりげなく微笑んでいられたらなと思いました。
彼がみんなに愛されていたのが伝わってくる。

そして改めて、大切なひと、大切なもの、
日々ていねいに、大切にしていかなくっちゃと思うのでした。

決して悲しく湿っぽくなく、
でも確かにどっしりと心を動かす映画。
ラストシーンも最高だよ。ふふふ。

 

観終わって外にでて、
わたしはパリでもテキサスでもなくて、この街で生きていくんだって
なんか、思ったなぁ。わはは。
人ごみの渋谷でも、いつもよりちょっと、いい気持ちで帰ったのでした。

ではまたね!

Drop’s 中野ミホ「まほうの映画館」


『ラッキー』
監督:ジョン・キャロル・リンチ
2017年製作・アメリカ
全国順次公開中
http://www.uplink.co.jp/lucky/

映画『ラッキー』予告編