がらくたロボット ヤマモトダイジロウの「1983」
第一話「The Happy Loss」
それは奇妙な一日の始まりだった。
革張りのソファーの冷たさを左手に感じる。
ズキンズキンと、割れるような頭痛でホント最悪な気分なんだ。
だけど、こんなバッドな日には決まって、最高の一日を予感させる。
おれはテレビのリモコンを探した。
寝っ転がったまま、テーブルの上を手探りで。
「あれ?」
あちこち手を伸ばしても、どうも見つからないんだ。
重くもたれ掛かるまぶたを半分開いて、ゆっくりと体を起こした。
テーブルの上にはリモコンなんてなく、ラヂオ一つ置いてあるだけ。
モヤのかかった冴えない頭と奇妙な違和感を押さえ込んで、スイッチを入れた。
妖し気なバイオリンが部屋の空気いっぱいに充満したかと思うと、
ドドタン。ドドタン。
張り裂けるような音がおれの頭にズキ、ズキ、と響くんだ。
耳を裂きたくなった。
だけど、一息ついておれは安心した。
「あぁ、いつも聴いている曲だ」
あとがき
Echo And The Bunnymen1983年発売の3rdアルバム『Porcupine』の1曲目「The Cutter」。
神秘的で凍えるような音の中に、どっか切ないイアン・マッカロクの声。ジャケット写真の氷や雪みたいに幻想的な現実って感じ。当時、ポップソングが流行って音楽が時代に合わせるようになりつつある中、自分らの音楽を追求して創り上げた最高のポップソング。「Porcupine」は最初「The Happy Loss」っていうタイトルの予定やったらしい。