がらくたロボット ヤマモトダイジロウの「1983」
第二話「ありふれた朝」
黄ばんだ部屋の壁に張り付いていた時計の針がまっすぐ天井を示していた。
窓の薄いレースのカーテンから穏やかな陽射しがちらりと差し込み
その隙間をくぐり抜けるように、雄鶏の鳴き声が耳に届く。
見た夢を思い出そうとするような
何か大事なことを忘れてしまっているような
そんな穴の空いた気分で、部屋の灯りも付けず
ただずっと静かにボーッとソファに腰掛けていた。
グゥゥ・・・
突然、地響きのような低い音がお腹の奥から響く。
「あぁ、腹が減った」
ふと呟いた。
さっきまで頭の中いっぱいにあふれていた疑問すらも忘れるくらい
立ち上がるのも精一杯なくらいに空腹を感じた。
気怠い体の重たさが足にのしかかる。
両手で小刻みに震える膝を支えながら
やっとの思いで立ち上がると、
まるで今流行りのゾンビ映画のような足取りで、
床を擦りフラフラとキッチンへ向かった。
モノクロチェックの床の上にある、
大家族のクローゼットのようにバカでかい冷蔵庫の前に辿り着いた。
扉を開けると見た目以上に中は空っぽで、これじゃ大家族は暮らせない。
不規則に並べられた冷蔵庫の棚から
卵1つ、ベーコン2枚
切れかけたコンロ台の蛍光灯が点滅する。
銀製のフライパンの火は強火、なだらかに流れる油の上へ、ベーコンを入れた。
青い火にジリジリと焼ける音や匂いが、より一層空腹を誘う。
どうしようもない気を紛らわすように、
歌を口ずさみながらベーコンがカリカリになるまで焼いた。
フライパンを片手に、もう片方で卵を叩き割り
カリカリのベーコンの中へ混ぜ込めば、
あとは塩コショウで完成。
くすんだガラス陶器の皿に移し、
流し台に置いたままのフォークを軽く水で洗い流して服で拭き、
口の中いっぱいに溢れてこぼれそうな唾をゴクリと飲み込んだ。
コンロに残るガスの匂い
置きっ放しのフライパン
緩んだ蛇口から流れる水の音
もう太陽は高いところまで昇ってた。
だけど、そんなこと気にもかけず
湯気立つベーコンエッグを夢中になって食べた。
あれ?
ベーコンは柔らかめが好きだったような、、、、
あとがき
The Smithsのデビューシングル「Hand In Glove」に続く2ndシングル「This Charming Man」。シンプルなロックンロールで何処と無く切なくて湿っぽい。綺麗なギターメロで、歌は変やなって初めて聞いた時思った。
スミスってバンド名の由来は、「ありふれた名前、“Ordinary”」と、モリッシーが言ってたけど誰にも再現なんか出来ない唯一無二のバンドで、それだからこそThe Smiths。シングルバージョンより『Hatful Of Hollow』のバージョンが好き。シングルバージョンはテンポがちょっと速くてキーもAとA#の間で、早回しにしたのかな?