カタヤマヒロキが「食」と「ロック」を綴る異色コラム

カタヤマヒロキの「食べロック」

2018/6/8

第2回:「下町の立ち食い寿司とヱビス小瓶」

東京へやってきて驚いたのが、飲食店での隣の席との間隔である。

これだけ人が多かったら仕方がないのだろうが、隣との距離が近い。そりゃ個室のある店や、席のスペースを重視している店は違うが、基本的な飲食店は距離が近い。地元から出てきた時は「これが都会か…」とショックを受けたのを覚えている。ましてや、大分では「相席」なんて文化はなかった。知らない人と一緒のテーブルでメシを食らうなんて、味なんか分かったもんじゃない、と思っていた。

そして、飲食店で「並ぶ」なんて行為もなかった気がする。今ではへっちゃらだが、行列のできている店を見ると、孤独のグルメでのゴローさんの名言が頭をよぎる。

「こんなコバラベリーには、案外ちょうどいいかもしれぬ」

…間違えた。これは「下北沢路地裏のピザ」の回で小腹が減ったゴローさんが放った迷言。しれぬって。言い方。なんというか、可愛いのひと言。

話を戻そう。

「俺は並んで食べるのが嫌いというより、食べている時後ろで誰かが待っているという状態が嫌なんだ」

そうなのだ、行列が嫌な理由はこういったこともある。

ただ、それでも並びたい店が東京にはある。
隣との距離が近くたって、並んででも行きたくなるような魅力的な店が、あるのだ。

その一つが京成立石にある「栄寿司」。

東京で教えてもらった飲食店の中でもトップクラスに入る店だ。いわゆる下町の寿司屋、町に根付いた活気のある立ち食い寿司だ。

ある日、バンドの先輩と飲んでいて、ふとこの店の話を聞いた。午前11時30分頃の開店だが、開店前から並んでいる。平日でも常に行列が絶えない。そして、ネタがなくなり次第、終了。夕方迄には閉まってることが多いという。翌日の開店前、そこに僕らは、いた。余裕を持ってきたつもりが、既に先客が数組並んでいた。向かいにある、もつ焼きの名店「宇ち多゛」にも呑兵衛たちが行列を作っている。こちらも面白い有名店なので、この話はまたいつかしようと思う。

行列、そして午前中の立ち食い寿司、間違いなく地元では経験したことのなかった行為だ。

ぎゅうぎゅうの店内に入ると、職人さんがカウンター内で3人並んで小気味よく握っている。

カタヤマヒロキの食べロック

ここの寿司は1貫110円からと非常にリーズナブル。大トロやうに、あわびといった高級なネタも330円と回転寿司並みの価格設定だ。

ドリンクはお茶とヱビスの小瓶のみ。もちろんヱビスビール、一択だ。昼から飲む、ヱビスの小瓶の破壊力ったら、ない。

いか、つぶ貝、煮はまぐり、煮あわび、赤身、中トロ、炙り大トロ……

カタヤマヒロキの食べロック

カタヤマヒロキの食べロック

どれを食べても絶品で、注文する度に職人さんが「あいよっ。」と絶品寿司を握ってくれる。

注目すべきは、いか。少し叩いた後に、包丁を幾重にも入れるといった職人の技が光っていた。口に入れた瞬間にいかが弾ける。なんだこれ、こんな、いか、初めてだ。思わず塩でおかわり。絶品過ぎて言葉を失う。

カタヤマヒロキの食べロック

たらふく食べて、ヱビス小瓶も数本空けたにも関わらず、お会計は一人4000円ちょい…何気なしに食べてしまっている外食を少し控えれば行ける価格。京成立石……恐るべし。

ほろ酔いの帰り道、まだ外は明るい。商店街で呑兵衛が揉めているのを横目に、頭の中では高田渡のごあいさつが小気味よくリフレインしていた。

「…どうもどうもいやどうも
いつぞやいろいろこのたびはまた
まあまあひとつまあひとつ
そんなわけでなにぶんよろしく
なにのほうはいずれなにして
そのせつゆっくりいやどうも…」

 

 

栄寿司
立石駅前・仲見世通りの立ち喰い寿司屋
営業時間:12:00~20:00(ネタがなくなり次第終了)
定休日:毎週木曜日
http://www.i-jimusho.net/sakae/index.html