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遠藤ミチロウ監督第2弾『SHIDAMYOJIN』を観た
遠藤ミチロウのドキュメンタリー監督作品の第2弾は『SHIDAMYOJIN』。シダミョウジンとは、遠藤ミチロウが「民謡パンク」と銘打ち結成したバンド羊歯明神(しだみょうじん)のこと。映画はなぜ彼が民謡という土着的な音楽へ向かったのかを探りながら、現代の日本の根っこに横たわる問題を晒していく。
そもそもロックは土着的な音楽のミクスチャーで成り立ってきた。レゲエやブルース、インド音楽やアフリカのビート、そういうものをミックスし、新しいロックが誕生した。それを次々にやったのがザ・ビートルズだ。ロックが歴史を積み重ねた70年代後期、ミックスするものがなくなり飽和を迎えたとき、シンプルな衝動へと揺り戻したのがパンクだった。
今、2017年、アコースティックギター1本を抱えた10代のシンガーソングライターがたくさん登場しているのも同じことだ。もはや新機軸をロックで打ち出せないというところに来たとき、揺り戻しは起こる。もう一度ギター1本から始めたらどうなるのか。バンドにすら縛られない自由のなかに新しいロックの、歌の可能性を求めているに違いないのだ。
遠藤ミチロウは福島に歌いにいったとき、お年寄りのリクエストで民謡や盆踊りを演奏することになってしまった。それをきかっけに彼は土着的な音楽に興味をもち、傾倒して行く。そして今、彼は羊歯明神(しだみょうじん)という民謡パンクバンドで全国をまわっている。パンクのカリスマ遠藤ミチロウが日本のフォークロアへ揺り戻されたのも、また必然性を感じる。いろんな場面で、ロックは原点へ回帰している。
羊歯明神(しだみょうじん)というバンド名は福島県いわき市川前の山奥の集落「志田名」から来ている。志田名は東京電力福島第1原子力発電所の事故後に発見された、放射能のホットスポットだ。ところが行政は除染をやってくれない。そこでお年寄りたちが、放射線衛生学者の木村真三とともに放射能汚染地図を作成し、国を動かして除染をさせた。そのお年寄りたちのエネルギーもまたパンクだ。
同時に、遠藤ミチロウがそのお年寄りたちを見て思ったのは「どうせ年寄りばかりで人がいなくなるようなところは見捨てればいい」という考え方(棄民政策)だ。それは基地問題で揺れる沖縄も同じではないか、と。面倒なところは棄てられる。そこに暮らしや文化があろうとも。それが今、日本中にはびこっている。遠藤ミチロウは叫ぶ。「志田名は俺たちの未来の姿だ!」。
土着的な音楽と関わった遠藤ミチロウが見たものは、日本人が積み上げてきた日本人が作ってきた最も日本人らしい土着的な文化を打ち捨てようとする現実だった。しかしこの映画は悲観では終わらない。「壊される祭があるのなら、これから作られる祭もある」。もう一度そこに暮らしている人や大衆から祭を発動させようじゃないか、という発想だ。それがクライマックスの愛知・豊田の大衆奇祭・橋の下世界音楽祭へと繋がっていく。このドキュメンタリー映画は、悪い意味で飽和している日本に対する遠藤ミチロウのロックであり、パンクでもあり、揺り戻しでもある。(森内淳/DONUT)
遠藤ミチロウ監督作品第2弾『SHIDAMYOJIN』
- 2017年/日本/カラー/HD/ステレオ/64分/ドキュメンタリー
- 監督:遠藤ミチロウ、小沢和史
- 製作・配給:北極バクテリア
- 公式サイト https://shidamyojin.wixsite.com/mysite
- 東京・新宿K’s cinemaにて、5/27(土)~6/16(金)3週間限定レイトショー
- Story
- 2015年8月。福島第一原発事故から4年後の終戦記念日、遠藤ミチロウは民謡パンクバンド“羊歯明神”を率いて、福島県いわき市川前の山奥に建つ櫓の上に居た。40年ほど途絶えていた盆踊りが復活するのだ。そこに集まるのは志田名地区に暮らす住人たち。志田名は事故後に発見されたホットスポットで、若者たちが避難した後に残ったジッチやバッパ(浜通りの方言で‘お爺さん’‘お婆さん’)が、放射線衛生学者の木村真三とともに放射能汚染地図を作成した地域である。ミチロウは言う「志田名は俺たちの未来の姿だ!」。大震災、原発事故、揺れ動く政治情勢の中、福島で生まれた民謡パンクが祭りから祭りへと駆け抜ける!ミュージシャン・遠藤ミチロウのルーツを辿りながら、ヘリパッド建設問題に直面する沖縄・高江を経て、愛知・豊田の大衆奇祭・橋の下世界音楽祭へと登りつめていく。
- ミチロウは今日も音頭を鳴らし続ける――