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2017/4/8

ミック・ロックと志磨遼平の貴重な対談トークショーをレポート。展覧会『DAVID BOWIE is』は4/9まで!

2月25日から3月13日、原宿VACANTにて写真展「DAVID BOWIE by MICK ROCK」が開催された。

ミック・ロックは70年代初頭、デヴィッド・ボウイの経歴でも重要期と呼ばれる「ジギー・スターダスト」時代にボウイと運命的な出会いを果たし、約1年半以上に渡りボウイに同行して数々のアイコニックなイメージをフィルムに収めてきたロック・フォトグラファー。デヴィッド・ボウイ作品に特化した、日本初となったこの写真展では未公開作品を多数含む50作品が展示されたほか、2002年にMilk Studiosで行われたミックとボウイの最後のフォトセッションを記録した映像が世界初公開され、大きな反響を呼んだ。

ここでは、その最終日にミック・ロックを迎え「ミック・ロック来日記念トークショー」として行われた志磨遼平(ドレスコーズ)との対談の模様を抜粋してお届けする。

これまでの長髪をばっさり切り、ベルリン時代のボウイを思わせるような髪型にイメージチェンジを果たした志磨遼平。彼の呼び込みにより会場に現れたミック・ロックは、カメラを手に志磨や場内を撮影。チャーミングな人柄で場を和ます。

志磨は15歳の頃、雑誌の表紙で目にしたミック・ロックによる写真(デヴィッド・ボウイとミック・ロンソンのステージ写真/会場にも展示あり)でボウイとグラムロックに出会ったという。彼が結成していたバンド、毛皮のマリーズは「ストゥージズの『ロー・パワー』とルー・リードの『トランスフォーマー』とボウイの『ジギー・スターダスト』でできていたバンドだ」とまず説明し、「つまり、あなたは僕のバンドの生みの親です。あなたの写真と出会わなければ、僕は人生の落伍者としてのたれ死んでいたかもしれない」とリスペクトを表明。

ミックは「君がグラムロックと出会ったように、何が好きか、夢中になれることを見つけることが大事」だと答え、「僕がボウイと出会ったのは1972年で、当時はまったく今と時代が違っていたけれど、ここに飾られている写真をみると、デヴィッドは昨日撮ったといってもおかしくないほど、時代を超越する影響を当時から持っていた」と語った。また、アメリカツアー中に、いきなり眉毛を剃ってきたデヴィッドに理由を聞くと「なんとなく剃りたかった」と言われたエピソードも披露され、ボウイの少し風変わりなスタイルと人柄を窺わせた。

志磨「これらの作品たちは当時、どのような目的で撮影されたものなのでしょうか。いわゆるプロモーション的なものとしてでしょうか、それとも純粋なアート作品・ドキュメンタリーとして撮られたものなのでしょうか?」

ミック「まず当時のカルチャーを説明すると、その頃はまだ抑圧された社会で、変革の真っ只中だった。そんな中でアンダーグラウンドなカルチャーがふつふつと出始めて、それを象徴していたのがこの3人(ボウイ、イギー、ルー)だった。音楽も素晴らしかったけど、あの3人は見た目のインパクトがあった。テリブル・トリオ(3悪童)と呼んでいたんだよ(笑)。ロンドン出身のデヴィッドは輝いていたし、NY出身のルーは退廃的な部分を教えてくれた。自分は楽しいから写真を撮っていただけだけれど、今となって、彼らがカルチャーにどれだけ大きな貢献をしてきたかわかった。みんな色々な実験をしていた時代だったね。当時はテレビや雑誌も少なかったから、デヴィッドたちの存在を知られるのに時間がかかったけれど、少しずつ浸透していく様子を近くで見ることができた。今みたいに、5分で世界のニュースが知れ渡る世の中じゃなかったからね」

志磨「ここに3人(ボウイ、イギー、ルー)がそろっている写真もありますね」

ミック「もともと世に出ていたのは、デヴィッドのマネージャーも入って4人写った写真だったけれど、最近になって3人の写真を公開したんだ」

志磨「ボウイとミック・ジャガーが一緒に写っている写真もありますね」

ミック「これは“最後の晩餐”と呼んでいるんだよ。ジギー・スターダストのツアー最終のロンドン公演の打ち上げで撮った写真で、ジギーを終えたばかりの瞬間だったと思う。1972年3月から1973年11月に自分が撮影した中でデヴィッドは76点の衣装を着ていたけれど、例えば「Life On Mars?」の水色の衣装とこのメイクは1度きり。美しいし素晴らしい。スペースドールというような、特別な存在だったね。デヴィッドはあらゆる可能性をみせて、キャリアをとおして実験し続けて、最善のものを引き出す人だった」

志磨「ボウイと、ボウイのバンド、スパイダース・フロム・マーズの生演奏を聴くことはもう叶わないけれど、あなたの写真や映像で追体験できます。彼らのとくに素晴らしかった点や、ステージ後の様子について教えてください」

ミック「ライブ後のことなんて、教えられるものじゃないよ(笑)」

志磨「なるほど(笑)。反省会などをしていましたか?」

ミック「ライブ直後にはしていなかった。もしかしたら次の日とかに、デヴィッドとミック(・ロンソン)で話していたかもね」

志磨「(食堂車の写真のように)ボウイとミック(・ロンソン)はいつも隣に座っていたのでしょうか」

ミック「覚えてないなぁ(笑)。あの写真はジギー・スターダストのツアーの最後の方に撮影したものなんだけど、あのツアーですごいものをやったという手応えを感じた瞬間だな、と。でも当時はそんなことはわからず、あとになってわかるものだった。ミック・ロンソンは音楽的に素晴らしいミュージシャンで、デヴィッド・ボウイは本をたくさん読んでいて、言葉で伝える素晴らしさがあった。そういうことが重なって奇跡が起きたのだと思う。僕は偶然その場にいただけ。カルチャーの変革が起きている時は、その中にいるとわからない。でも、何か面白い動きがあるのは感じていたよ。男性の“男らしさ”の見方も変わっていった時代でもあったと思うね」

志磨「あなたの撮った写真がなかったら、今、ロックンロールはどうなっていたと思いますか?」

ミック「自分は、唯一その場にいたカメラマンだったから、自分が撮るしかなかった。とにかく好きで、のめり込んで撮っていただけなんだよ。デヴィッドは音楽的にもビジュアル的にも哲学的にも魅力的だった。自分が直感でやってきた中で、“70年代を撮ってきたカメラマン”と言われると、いやいや、昔のものばかりじゃないよとも思ったけれど、ある時から「金をくれるんだったらやってやろうじゃないか」と思い直したよ(笑)。当時の写真が今の皆さんになぜ刺さっているのかはわからないけれど」

志磨「魅力的な被写体の条件、ロックンロール・スターの条件はなんですか?」

ミック「においでわかるね。オーラもあるしね。被写体に何を捉えようとするかを説明するのは難しいけれど、自分は野望をもってやっていたわけではない。ただ目の前にあるもの、被写体が発しているエネルギーを捉えることに集中していたんだよ。それは形而上学的、スピリチュアルな域に入っていくもので、実際、デヴィッドもルー・リードも仏教や東洋的なものに傾倒していた。例えば電気は目に見えないけれど、結果として光がある。目に見えないけれど存在するエネルギーがあって、そういうものを自分は被写体に感じているんだと思う。デヴィッドもルーも色々なものを探求したし、彼らの表現で感じたものを広めたかった。あそこに第三の目をもつデヴィッドの写真があるけれど(額に円が描かれた写真)、今、デヴィッドがいないことはやはりとても寂しいね」

志磨の質問に、当時の背景を交えながら、通訳の隙を与えないほど饒舌&ユーモアたっぷりに10倍の言葉で返すミック・ロック。時には質問とはまったくかけはなれた話題に及ぶこともしばしば。カメラをとおしてボウイと対峙した人物が語る貴重な証言に、参加者も志磨も釘付けになった約1時間だった。

さて、デヴィッド・ボウイ大回顧展『DAVID BOWIE is』も残すところあと2日。ボウイのクリエイティヴにまつわる貴重な資料が満載の本展は、時間を延長し4月9日(日)まで夜21時まで開催中です。当日券の売り切れも続出中とのことなので、確実に入場したい方はチケットの事前購入がおすすめ(当日でも購入できます)。お見逃しなく!(秋元美乃/DONUT)

デヴィッド・ボウイ大回顧展「DAVID BOWIE is」

  • 会期:2017年1月8日(日)~4月9日(日)
  • 会場:寺田倉庫G1ビル(天王洲)
  • 開館時間:10:00~21:00(最終入場20:00)
  • ※入場に関する詳細はオフィシャルサイトにて
  • http://davidbowieis.jp

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