the twentiesタカイリョウの「頭を木刀でやられたのかもしれない」
第11回:「春色の亡骸」
高校を卒業して一ヶ月と少し。美容学校の入学式へと向かった。
受付を済ませていると横でペラペラと用紙をめくる40代の女性。「教材費の振込みが無いのでお支払いをお願いします」と、よく分からないことを言ってきた。書面通達や何度か電話もしたらしい。そんな話聞いてないし知らない。結局その数十分後には学校を辞める事になった。
この日を境に僅かにあった人生に対する夢や希望はパタリと無くなり、唯一この世に平等に与えられた時間を干からびたボロ雑巾の様に只やり過ごす日々が始まった。
高校2年の夏、入っていた施設を出る際に児童相談所に高校を卒業することを約束とし、父親に引き取ってもらった。
親父の家はとっても貧乏だった。自分の生活で精一杯だったはずなのによく引き取ってくれたと今も凄く感謝している。
高校は大分県内の偏差値ランキングを下から数えればすぐに現れる誰でも入学可能な私立の学校だった。その為学費とかが馬鹿みたいにかかってしまうが、それでも親父は一年間、一度も生活が苦しいなどおれに言わなかったし、ご飯もしっかり食べさせてくれた。
施設を出てからは夢にまで見た自由な生活が待っていると思っていた。しかし、ずっとやりたかったバンドのメンバーを探してみるも見つけられず、遊ぶにも金が無い。親父に小遣いをせびるにも気が引ける。
折角の自由を手に入れたと思ったが、手放しで遊べるほどこの世は甘くなかった。
すぐにバイトを探した。しかしことごとく面接に落ちた。一体どれだけ落ちたのか、10代には厳しい社会の洗礼だった。
さらには折角受かったバイトでさえ、一週間も持たずに辞めてしまっていたので、各お店の面接官の眼球はあながち正常に作動していたのだろう。
そんな中、エブリワンというコンビニでパンを焼くバイトに出会い、ジャムおじさんの様に無我夢中でパンを焼く日々も過ごしたが、甘い匂いに空腹は耐えきれず気づけばクビになっていた。
その後やっと長く通えるバイトに出会えた。友人が働いてたこともありその酒屋はとても楽しかった。結局、高校2年の冬頃から3年の冬までバイトをした。仕事内容は箱売りの缶ビールをレジや客の車まで持ってったり、空き瓶ケースを片付けたり、死ぬほど楽だった。なにより時給がよかったのと友達が一緒だったからってのが長く続いた一番の理由だろう。学校なんかよりは全然楽しかった。
そこで、遊ぶ金や、自動車学校の費用、美容学校の入学金も貯めた。今思えばよくまあ貯めたと思う。今んとこの人生で一番頑張ったかもしれん。
通ってた高校には美容科があり、普通科にぼんやりと三年間通ってたおれはやりたかったバンドも出来ないまま、他にやりたい事もなく家に帰れば好きなロックバンドの音楽を流し鏡の前で一人ギターを持ち歌う世界にただただ酔っていた。が、当時そんなことは恥ずかしくて誰にも言えず、音楽に夢を見るなんてことはいつの間にか考えない様になっていた。
そんな頃、美容科の友人が美容室に就職が決まっていくのを見て、特にやりたい事もなかったのでなんとなくおれもそうしようと思った。進路相談で担任に美容への薄っぺらい興味とバイトで得た友達と働けば長く続く という安易な考えを伝えると、それならと美容学校を勧めてくれた。
そこは、金が無くても学校が運営してる美容室で働きながら通えば学費が払われていくシステムがあった。入学金だけ払えばいいと担任も言っていたのでなるほどこれなら行けると最終的に決断した。
話を文頭に戻す。
教材費の振込みが必要だったなんて知らず、大分銀行の通帳には野口が数枚入ってる財産しか持っていなかったたかいは、春の陽気に満ち溢れた光の降り注ぐ美容学校の門を意気揚々とくぐり、その数十分後、くすんだ四月のズシリと生ぬるい重力を両肩に乗せ、顔面蒼白のまま学校を後にした。
なによりもバイトで貯めた入学金費用の30万円が一瞬にして無駄になってしまったことに強いダメージを受け、それはもうかなり非常に鋭く絶望的にやさぐれた。
それからの一年間、なんの記憶にも残らない日々を過ごした。感情は停止し、パチンコにハマりズブズブに荒んでいく生活。人生に希望なんて一ミクロも無くなっていた。
ちなみにその頃、コンビニで何も買わずにおでんの汁だけもらう術も身に付けた。
そんな時、ピアス屋の求人を目にした。服装自由に惹かれ面接を受けたらなんと受かってしまう。泥水の中を這いずりながら過ごしていた日々がそれから少しずつ少しずつ変わっていく。
そこの店長は大のロック好きで、大分でSUNNY SUNDAY SMILEというロックイベントのDJも深夜にやっていた。
(twentiesも良く出演してる京都のSUNNY SUNDAY SMILEはその時のDJメンバーの一人が現在復活させてやっている)
そこで沢山の知らない音楽を知り、さらに深く音楽にのめり込んだ。同時に沸々と蘇るバンドへの思いはその時まだ自分でも気付いていなかったが、確実に一度は死んだ心を取り戻していた。
店では大好きなバンドの音楽を爆音でかけながらピアスを眺める日々が始まり、後に我らのギター ウルルンと出会うのです。
あの日、美容学校を辞めていなければ、ピアス屋にいなければ、どうなってただろうか。きっとそれでもウルルンに出会ってバンドを始めていただろう。いや、どうだろう。ただ、運命というもんがあるならきっとどんな形であれバンドは生まれ、ダイナソーも野菜くんも見つけているはず。そんな身にもならないタラレバを結成当初のDVDを観ながらふと思った。
陽が昇り、陽が沈む当たり前の日々は奇跡の連続が何層にも積み重なって出来ているんでしょうかね? どう思いますか?
ところで、トイレに入ると3、40分篭ってしまう癖があるわしですが、これ本当にそう思います。
無人島は誰もいない孤独さ故、ひとりというリラックスした気分になれない気がする。知りませんが。
だがトイレは扉一枚閉めてしまえば完全隔離された個室。あの空間は不思議です。扉一枚開けばまた世の一員になれる保証付き。そしてこれは本当に綺麗なトイレに限る。扉の前で誰もトイレ待ちしていないことも重要ですね。
ただ自分の家でもよくトイレに篭るので、隔離された誰も居ない空間でリラックスできる という理由とはまた違う不思議な何かがトイレにはあるのかもしれません。知りません。
お疲れ様でした。
LIVE INFO
- 3月20日(水)東京・新宿ACB
「ubmen × ACB HALL pre.
『UNDERSONIC EXHIBITION』-“there is no end” Release Party Vo.1-」
出演:submen/Nebula/maxn/Large House Satisfaction/THE→CHINA WIFE MOTORS/the twenties
前売 2,800円/当日 3,300円(1ドリンク別)
チケット:各アーティスト予約 - 3月23日(土)京都・京都CLUB METRO
「SUNNY SUNDAY SMILE」
OPEN 22:00/START 22:00
出演:the twenties
DJ:OHNO SHINSUKE/IWASAKI SHIN/SHIM TATSUYA/SAKAMOTO SATOSHI
VJ:FJOK/DAISUKE
チケット:各アーティスト予約
前売 1,800円/当日 2,300円(1ドリンク別)
学生 1,500円(1ドリンク別/要学生証) - 3月25日(月)兵庫・MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
「music zoo KOBE太陽と虎 presents 天下一動物園」
OPEN 18:00/START 18:30
出演:the twenties/TENDOUJI/ハイカラユース/宵待
チケット:ぴあ/ローソン/e+/会場予約
前売 2,500円/当日 3,000円(1ドリンク別) - 4月12日(金)東京・下北沢BASEMENT BAR
「w.o.d. presents “スペース・インベーダーズⅡ” 」
OPEN 18:30/START 19:00
出演:w.o.d./CRYAMY/Ring Ring Lonely Rollss/the twenties/ヘンショクリュウ
前売 2,800円(1ドリンク別) - 5月22日(水)東京・下北沢Laguna
「Specialty!!!」
OPEN 18:30/START 19:00
前売 2,500円/当日 3,000円(1ドリンク別)
出演:りょーめー(爆弾ジョニー)/佐藤和夫(SaToMansion)/タカイリョウ(the twenties)
イープラス/ローソンチケット(Lコード:71547)