4月28日(土)、29日(日・祝)、みちのく公園北地区 エコ キャンプみちのくにて開催された『ARABAKI ROCK FEST.18』。18回目となる今回も、東北の伝統を発信する場として、世代や趣味の壁を越え新たなつながりを生む場として、そして何よりもロックの素晴らしさを体現する場として大きな成功を収めた。今回も探訪記として、いち来場者目線のレポートを記していきます。どうぞお楽しみ下さい!

2018年4月28日(土)

今年のビジュアルイメージはザ・ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』をオマージュしたもの。テーマは『THE ROCK STEADY FIGHTING MAN’S CLUB BAND』。ロックを軸に、いろいろな音楽、歴史、カルチャーを体感できるこの2日間は、人生を変えてくれるような特別な時間だった。昨年から仙台駅、大河原駅発のシャトルバスが時間によって区切られているため、大きな時間のロスなく会場へ到着。車でのアクセスは例年通りの印象だが、特に初日はキャンプサイト利用者も多いので早めの行動がオススメだ。

日本一盛り上がると噂の(笑)、川崎町長らの挨拶には間に合わず。ポルカドットスティングレイの音漏れを聴きながら、エコキャンプ側入場口へ急ぐ。超快晴の陽気も相まってめちゃくちゃ気持ちがいい。大大大盛況のグッズエリアを抜けると、ARAHABAKI STAGEが出迎えてくれた。「ARAHABAKI」とは、かつてこの地方に存在したという荒吐(アラハバキ)族の思想や文化が、岩手県から東北各地へ広がっていったように、 入場ゲートに最も近いこのステージが『ARABAKI ROCK FEST.』の発信源になってほしいと命名されたもの。そんな場所で最初に観たのは感覚ピエロだった。出音も歌も佇まいも、観る者を一瞬で痺れさせるロックバンドでありながら、その音楽性はロックの枠に留まらない。ギラついた「疑問疑答」の咆哮で口火を切り、「無い ナイ 7i」のミクスチャーグルーヴが狂騒をさらに煽る。曲が終わると「朝から激しくてごめんなさいね(笑)」と横山直弘(Vo・G)。男のアレを歌う「A BANANA」、女のアレを合唱する「O・P・P・A・I」、万人を包むメロディの「拝啓、いつかの君へ」。彼らのライブにはいつも幅広い世代のお客さんが駆けつけるけれど、それは楽曲の普遍性を証明しているし、普遍的な楽曲を鳴らせるのはロックバンドとしてアホほどカッコいいから、という至ってシンプルな構造を持つ彼ら。初出演にして見事に爪痕を刻んでみせた。

次はTSUGARUへ。途中のコミュニケーションフィールドにはフードマップがいくつもあるのでありがたい。が、神野美伽 with 古市コータロー+クハラカズユキ feat. 山本健太(Piano)青木ケイタ(Sax)を観たいので腹ごしらえはまだまだ我慢。神野美伽 with 古市コータロー+クハラカズユキは2年前より活動していて、『オハラ☆ブレイク』には当時から出演している。今回はピアノとサックスを加えたスペシャル編成。ものすごく楽しみにしていたのだが、結論から言うと期待も予想も軽くぶっ飛ばされた。演歌、ロック、ポップス云々の前に、全員が音楽のなんたるかを骨の髄まで理解した表現者であるからこそ、珠玉のアンサンブルが計り知れないエモーションを爆発させていたのだ。「リンゴ追分」に始まり、衝動と熱量が渦を巻く「石狩挽歌」、メジャーキーのハピネスを解放する「切手のないおくりもの」など、人生の深みと刹那の幸せが同居する圧巻のステージだった。しかしアコギとエレキの持ち替えに時間を取るコータロー兄貴に向かって、「ほんっとにもう、もたもたもたもたして……」と漏らす神野美伽さんはさすがの貫禄でございました。

ここで昼食をとることに。やっぱ宮城へ来たからには牛タンっしょ、ということで『味の牛たん喜助』さんのカレー丼をチョイス。ほろほろと崩れるタンが4つも入った贅沢な逸品だ。舌鼓を打っていると、ほどなくして小袋成彬のスタート時刻を迎えた。ステージには小袋成彬、サポートを務めるtricotのキダ モティフォ(G)、そして小島裕規(K・B)の姿がある。キダと小島は椅子に座りヘッドホンをしている。小袋はイヤモニを着用、座ったり歩き回ったりしながらも、お客さんに正対する場面は少なく、わりと横を向いていた。歌の鼓動をコントロールするように右手を動かしながら、左手のマイクを伝いスピーカーから放たれるその声は、音源の印象とはずいぶん異なる。よりダイナミックで、ピッチに対する独特の感性が際立っている感じだ。特に驚いたのはキダ。バレーコード、アルペジオ、チョーキングなどなど、普段と真逆のプレイをしているのだ。座って弾く時点でtricotではありえないしね。じゃあ小島を含め、それでもなぜサポートメンバーを迎えたのかと言えば、セットの大半を占める『分離派の夏』の楽曲が、内的独白なんて言葉では到底足りぬほど、自身の人生を曝け出し、心の底のあぶくまでをも攫うような内容だからだろう。つまり人の手によって奏でられなければならない音楽なのである。だから多少同期を使っても、MCがなくても、小袋の歌とメンバーの音が観客の心を深く深く震わせたのだ。その象徴的な一場面が、小袋がギターを掻き鳴らし、轟音を響かせた瞬間だったようにも思う。

TSUGARUを去る前、「謎のクエスト」なるものを発見した。どうやらこのステージにはたくさんの精霊がいて、彼らのセリフを読み解くと謎が解けるそう。おもしろいけど、趣旨より「ソイツラ」や「アレシテマス」など言い回しのほうが気になってしまった(笑)。またHATAHATAエリアでは今年もカメラマン橋本塁によるサウシュー写真展ブースが出展していた。写真の観覧やグッズの購入はもちろん、サプライズライブが行われることもあるので、彼のSNSをチェックしておくべし!

続いてHANAGASAのDATS。観られたのは惜しくもラスト2曲だった。「Heart」はアンダーワールドなどのクラブカルチャーを引き継ぎつつ、バンドサウンドのカタルシスも体現する壮大なアンセム。締めの「Message」はメランコリックなメロディ、シンガロングの気持ちよさ、U2を彷彿させるディレイトリックと4つ打ちを渾然一体に鳴らし、メンバー全員がドラムを叩く掟破りの一幕まで。「俺たちがARABAKIで鳴らす音、全身で感じてみて下さい!」とMONJOE(Vo・Syn)は言った。クラブとライブハウスを結ぶ架け橋のようなサウンド、なんて理屈を置き去りにできるほど、音楽のボーダーレスな即効性を証明するアクトだった。

HANAGASAでは間髪入れずにみちのくプロレスが始まる。昨年初めて観たが、声や身体がぶつかり合う音がこんなに響くのかと驚いた。会場が一体になる感じもロックフェスに通ずるものがある。しかし泣く泣く中座し、BAN-ETSUのThe Birthdayへ。1曲目は「LOVE GOD HAND」。ほぼワンコードで突っ走るのでコンディションが如実にわかる曲だけれど、この日はいつにも増してキレキレ。「SAKURA」のセンチメンタルなメロディ、「1977」の変わらない憧憬に対するときめきを、大地さえぶった斬るような爆音に乗せていく。「かわいいなあ、おまえら!」とチバユウスケ(Vo・G)も超ごきげんだ。いち早く披露された新曲「THE ANSWER」は、コードリフの焦燥迸る冒頭、大きな符割でエモーションを解き放つサビ、情景をドラスティックに描くアウトロと、非常にスケールの大きなナンバー。そこから「くそったれの世界」や「声」におけるメジャーキーの輝きが、雲ひとつない青空を駆けていく終盤は、もう気持ちよすぎてとろけそう。いつだってロックンロールは最高、The Birthdayは最強。改めてそう思う時間だった。すげえライブを観ると疲れなんて吹っ飛ぶんだよなあ。

HANAGASAに戻ると、yonigeを観るために人が溢れかえっていた。「ワンルーム」で幕を開けたライブは、「our time city」、「あのこのゆくえ」と爽快に進んでゆく。彼女たちがすごいのはまずメロディだ。日本語ロックという言葉はあるけれど、日本語らしいメロディのロックというのは意外に少ない。たいていはフォークっぽくなってしまったり、J-POPをバンドで鳴らすような構造になってしまったり。でもyonigeはロックのリズムと音使いの中で、音節が多い日本語の語感をうまく転がしている。そしてもう1点、コードアプローチが素晴らしい。トライアドから1音抜いてロックの力強さを鳴らす、1音足して日本人らしい情緒、女の子らしい葛藤を表現する。そのバランスが絶妙なのだ。というわけで、yonigeは真の日本語ロックバンドであり、この日のステージが大人気だったのもそりゃそうっしょという感じだ。ちなみに初出演の感想は、「数々の打ち上げで『荒く吐いてきた』私たちにとって、ARABAKIという文字にドキドキを隠せない」とのこと(笑)。

陽の傾き始めた午後5時。サクラソウの小径を抜けてHATAHATAへ。Nulbarichの出番である。登場するなり「I’m back in ARABAKI! 久々だから緊張してますけど、よろしくお願いします!」とJQ(Vo)。相変わらず煽り方が外国人だ(笑)。「It’s Who We Are」を皮切りに、「NEW ERA」、「In Your Pocket」などキラーチューンを連発していく。今夏、この国にケンドリック・ラマーやN.E.R.D、チャンス・ザ・ラッパーあたりがやってくる流れを意識しているのか、いないのか。それは日本人アーティストを二分するひとつの境界線であるように思う。Nulbarichは間違いなく前者だ。ヒップホップやR&Bを始めとするブラックミュージックをバンドフォーマットに落とし込み、まったく新しいサウンドを構築する。じゃあロックっぽくないのかと言えば、ライブはそうでもない。各メンバーが個性の塊なので、どロックなリフやソロをブチかますこともしばしば。「Almost There」の間奏など、指板から火を噴いていた。もちろんジャズやフュージョンも含めて音楽性は幅広いし、個性の塊だからってアンサンブルの邪魔をするわけではなく、シンプルな歌伴に徹していても滲み出る矜持が色濃いぞ、という話だ。11月に日本武道館公演を控える彼らの、実力と潜在能力に慄かずにはいられないアクトだった。

次はMICHINOKUでMAN WITH A MISSIONを。道中、ORIGINAL LOVE目当てのお客さんによりTSUGARU周辺が激混みだったけれど、早めに移動していたのでギリギリセーフ。いつの間にか暗く、肌寒くなってきたのでアウターを着ることに。ただこのバンドにとっては適温かもしれない(笑)。今年1発目の野外ライブで気合いバリバリの狼たちは、「Emotions」や「Take Me Under」など、持てるすべてを凝縮した至高のセットを叩きつけていく。全体のソングライティングはもちろん、サウンドデザインや歌い分けを含め、楽曲の精度と強度がグングン高まっているマンウィズ。とりわけ2018年第1弾シングルの「Take Me Under」は、マイナーコードのシリアスな響きで熱狂しまくる海外に照準を定めているはず。引き算の効いたグルーヴからも、より大きな世界で勝負するんだという気概を感じられる。そして何よりも、「Freak It!」で《大和魂》と叫んでいたけれど、この日の彼らを奮い立たせていたのは言うなれば東北魂だったと思う。「この東北で最高のライブをやるんだ! それが最高のエールになるんだ!」という全身全霊の情熱が、ラストの「FLY AGAIN」でこれ以上ないほどの狂騒を、二度とないような素晴らしい景色を作っていた。

さていよいよ大トリ。の前に小腹が空いてしまったので、『ロックンロール・研究所 会津』さんにてクレープを注文。ロックンロール好きは甘い物食べがち、ってあるあるありますよね。ないか(笑)。今回のストレイテナーは『THE ROCK STEADY’S 20th ANNIVERSARY CLUB BAND OF STRAIGHTENER』と題され、まさに一世一代のセッションとなっている。「初日のトリを務めます、俺たちストレイテナーって言いますよろしくお願いします!」と、いつものようにホリエアツシ(Vo・G・Piano)が挨拶。が、「まずはい……いつものように4人から」といきなり噛んで笑いが起こる。オープニングはもちろん「ROCKSTEADY」だ。メンバー全員めちゃくちゃ気迫に満ちている。

それにしても、彼らは正面から観た時のシルエットがロックバンドとしてほんっとに美しくてカッコいい。それはホリエとナカヤマシンペイ(D)が20年やってきたことの賜物だろうし、日向秀和(B)が2004年、大山純(G)が2008年に加入したからこそ、この4人が時を重ねてきたからこその姿なのだと思う。そして昨年の初日トリはACIDMANだったが、この世代のバンドがこのフェスの真打ちを務めるという事実に、改めて胸がいっぱいになる。と感慨に浸っているところに「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」の旋律が飛び込んできたもんだから、一瞬で涙腺崩壊してしまった。「彩雲」で全員が近づき向かい合ってプレイしていたのもグッとくる。この曲、超絶ベタなコード進行だけれど、奇をてらうのではなくあえて王道をやって個性を滲ませる、つまりメインストリームに勝負を挑むというのも、今のテナーならではだろう。ライブ初披露となった「The Future Is Now」も、アレンジのラウドさをなくすことで歌のカタルシスを増幅し、しかもラブソングになっているという最新の黄金律を高らかに響かせてみせた。

ここからはゲストを迎えるコーナー。柏倉隆史(toe/the HIATUS)との「Lightning」は、おそらく32分音符ぐらいまで感じながら叩いているであろうリズムの激情が、楽曲に、そしてボーカルに命を宿す素晴らしい好演。ホリエも「俺もそっち側から観たい」と漏らすほど。続いてmajikoが歌ったのは「冬の太陽」だ。ホリエの作るメロディって、女性の声で聴くとより艶やかに、そして不思議とより力強くこちらの感情を揺さぶってくる。「KILLER TUNE」からの「おはようカルチャー」を叫んだのは、もちろん牧達弥(go!go!vanillas)である。フレッシュなエネルギーがぶち込まれる中、特にOJはがんばって「KILLER TUNE」のカントリー風フレーズを弾いていた(笑)。バニラズアレンジの1コーラス目から、本来のUSインディーアレンジに戻った2コラース目、その水を得た魚感ったらなかったもの。

「ARABAKIのみなさん、これからもっとストレイテナーを幸せにしましょうよ」と粋な挨拶をした菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)は、「Melodic Storm」でシンガロングの嵐を巻き起こす。「続いてのゲストはthe pillows、THE PREDATORSから……あ、まちがえた(笑)」とまさかの紹介を食らった山田将司(THE BACK HORN)。第一声は「飛ばさないで(笑)」。盟友とともにおくる「シンクロ」は、孤独を抱えながらも誰かとつながりたいからこそ歌い続けてきた将司のバラード魂が華咲き、「将司ちょっと泣いてた」(ホリエ)というほどだった。改めて呼び込まれた山中さわお。左手に酒を握りながら「Farewell Dear Deadman」を歌い上げ、そのやわらかく懐の大きな旋律は、ロックのロマンとともに大空へ溶けていった。さらにもう1曲、「俺たちを世に知らしめてくれた」(ホリエ)というthe pillowsのトリビュート作『シンクロナイズド・ロッカーズ』から、テナーがカバーした「RUNNERS HIGH」をやってくれた。ライブ初披露だったけれど、演奏から伝わるパンキッシュな熱量はあの頃のままだったような気がする。

そしてついに布袋寅泰が姿を見せた。ともに鳴らすナンバーはBOØWYの「B・BLUE」と「DREAMIN’」である。以前ひなっちとセッションした縁があるそうで、呼吸の合ったグルーヴの中、バカでかい音圧による、ミュートの効いた男らしいプレイはさすがの御大。そんなレジェンドを前に、「夢見てるみたい」(ホリエ)とメンバー全員が目をキラキラ輝かせながらはっちゃけていた。ラストスパートはタブゾンビ(SOIL & “PIMP” SESSIONS)、田中邦和のホーン隊を迎え、テナーの楽曲に戻る。レイドバックした前奏を経て、ジャズマスターのディレイリフが地球を切り裂く「From Noon Till Dawn」。「僕らにとって大事な曲を捧げたいと思います」(ホリエ)と、彼ら自身の歩みも重なり合う「MARCH」。バンドの奇跡なんてものがあるのなら、この日のストレイテナーのステージは、まさにそう呼ぶにふさわしい。ストレイテナーの20年と『ARABAKI ROCK FEST.』のすべてが凝縮された素晴らしい時間だった。ということで初日終了。おとなしく帰って2日目に備える。

(秋摩竜太郎)