がらくたロボットの新作『BREAK OUT』完成!「初期衝動よりもすごい衝動が詰まった」作品とヤマモトダイジロウが語る
地元・神戸を中心に活動する3ピースバンド、がらくたロボットがミニアルバム『BREAK OUT』を3月8日にリリースした。できれば、まずは何の前情報もなしに下記YouTubeで「Lonely It’s Alright」を聴いてみてほしい。
音から声から湧き出るエネルギー。頭より先に体が反応するビート。自分の中の何かが突き動かされるこの感じ。パンクロックのダイナミズムを纏ったこのナンバーで幕を開ける今作は、BREAK OUTというタイトルどおり突き抜けている。この突き抜け感はがらくたロボットの大きな魅力で、有無を言わせぬ説得力でもある。もちろんそれだけじゃなくソングライターとしての力量もあるが、よく言われる「ギターを持ってジャーンと鳴らせばロックンロール」、まさにこれ。ロックンロールがかっこいいことを全身で表現してみせるバンドだ。これが王道ロックンロールだと大声で言ってしまいたい。こんなバンドの登場をずっと待っていた気がする。何より「Lonely It’s Alright」という言葉に泣ける。乱暴に言えば“ひとりでいいじゃん”。そう、いつだってロックンロールは孤独と向き合う心のそばで鳴ってきた。昔も今も。
そんな歌をつくっているのがボーカル&ギターのヤマモトダイジロウ、20才。小学3年の頃に父親の車の中で聴いたザ・フーの「Pictures of Lily」に痺れた彼はすぐさまギターを手にし、同時に曲作りを開始。ブリティッシュビートに惹かれ、パンクロックと出会い、ザ・フーの映像を見ては「自分も同じステージに立ってロックをやりたい」と思ったそうだ。中学の頃にはまずコピーバンドを組み、当初はギターだけ担当していたが「自分が歌ったほうがかっこええ」とのことで2012年、高校1年の時に「がらくたロボット」を結成した。ちなみに日本の音楽ではザ・スターリンやザ・ルースターズが好きだというダイジロウ。自分で初めて買ったLPレコードはサンハウスの『仁輪加』。なるほど。
今作『BREAK OUT』はザ・クロマニヨンズやOKAMOTO’Sを手がける川口聡をミックスエンジニアに迎えて制作。がらくたロボット流のパンクロック賛歌「Lonely It’s Alright」をはじめ、キャッチーで遊び心あふれるナンバーあり、カバーあり、衝動爆走ソングありの全6曲を収録した、ダイジロウ曰く「初期衝動よりもすごい衝動が詰まった」作品となっている。6曲をとおして迫ってくるBREAK OUTという思い。特筆すべきは6曲目「ハネル」。この曲はバラードながら今作イチの衝動を放っているような気がしてならない。<笑い出す蝶達は生きてるかもわからない/僕は叫ぶ 僕は叫ぶ それしかないから>。ラストでこう綴られる歌詞は、センチメンタルでロマンティックなメロディと合わさって、何だか少しヒリヒリする。ザ・フーやルースターズをルーツに掲げながらも、その焼き直しでなく今に響くロックンロールが鳴っている。そこが嬉しく頼もしい。
今回ダイジロウに取材した際に「例えば5年後10年後、どんなバンドになっていたいか」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。「未来のことはわからへん。今が大事」――いいぞいいぞ。久々だ、この感じ。余談だが、昨年5月、初めて彼らのライブを観たときの興奮は今でも忘れない。一発KOをくらった私はライブ後すぐに物販に行き、いま出ている彼らのCD全部とアナログ・レコードを購入した。それくらい、このバンドとの出会いにワクワク・ドキドキしたのだ。聞けば、彼らのファンは年上世代が多いという。私も含めそれも納得だが、いやはやなんともったいない! とにかく一度聴いてほしい。小細工なしのロックンロールに痺れます。(秋元美乃/DONUT)