THE BOHEMIANS「FIVE SOUL ROLL TOUR 2017」をリポート&1st Mini Album『FIVE SOUL ROLL EP +1』 配信決定!
THE BOHEMIANSが現メンバー=平田ぱんだ(vo)ビートりょう(gt)星川ドントレットミーダウン(ba)本間ドミノ(key)千葉オライリー(と無法の世界)(dr)になって10年が経った。それを記念してリリースされたのが『FIVE SOUL ROLL EP +1』。メンバー5人それぞれが作詞作曲した5曲を集めたミニアルバムだ(「+1」はプロデューサーの山中さわおが作詞作曲した)。今回は通販と会場限定の発売。「10周年というエクスキューズがない限り、こういうことはやれなかった」と平田ぱんだが語るように、今作は言わば「特別盤」だ。なので今回のツアーも特別仕様。全国たった3ヶ所だけのスペシャルツアーだ。しかもキックオフは東京・高円寺HIGH。いつもはファイナル公演を行う場所でスタートする。「こんなに盛り上がるんだったらツアーファイナルにしておけばよかった」と平田ぱんだが思わず本音を漏らすシーンもあったが、ツイッターを見る限りにおいては、結局、大阪も名古屋も今までにない盛り上がりで終了したようだ。
19時5分、客電が消え、メンバーが登場。ライブがスタート。1曲めは「bohemian boy」。このツアーは5人の結束をあらためて示す場でもある。「bohemian boy」を1曲目にやることで、その意義をリスナーに対して掲げてみせたのではないか。バンドは「太陽ロールバンド」「Brighter guy,Brighter girl」と矢継ぎ早に繰り出す。「お祝いの歌をうたいます」と言って「ビート!ビート!ビート!」を披露。前ツアーは徐々にライブを盛り上げていくようなセットリストだったが、今回は冒頭からロックンロール・ナンバーを叩き込んでくる。新世代ロックンロール・シーンを代表するバンドだということを、この5人で引き受けようという気概を感じた。ホームグラウンドとあって、客席の盛り上がりもあっという間にピークに。今、彼らのライブに通っているオーディエンスが求めているのは明らかにロックンロール・バンドとしての側面だ。それにきちんと応えたオープニングだった。この「本当の意味でのコール&レスポンス」が次のフェーズの土台を作っていくのだと思う。
ライブは中盤で面白い展開に。何と7曲めから11曲めで『FIVE SOUL ROLL EP +1』の5曲をまとめて披露したのだ。これは予想外だった。楽曲を上手く散りばめるのかと思いきや、一気に聴いてもらおうという趣向だ。冒頭から5曲やるのは芸がないと思ったのか。曲順とは正反対の順番で披露。つまり「tightrope days」から始まって、「hikari」「BABY MAYBE BABY」「B.O.H.E.M.I.A.N.S.」と来て、最後に「I ride genius band story」を演奏した。あらためてライブで聴くと、各曲の個性の違いが面白い。誰がどの曲を作ったかはパブリックなコメントは出さずにCD購入者しかわからないようになっている。なので、ここでもそこはぼかすが、あるメンバーはアルバム全体のことを考えて楽曲を提出、ただただ個性をぶつけたメンバーもいれば、あえてボヘミアンズっぽくない曲を書いたメンバーもいる。かくして、7曲めから11曲めまでは、変化球とストレートが入り乱れた楽しいブロックになった。5人が個性的な楽曲を作詞作曲できるのはボヘミアンズの大きな武器だ。ボヘミアンズがオールドスタイルのロックンロールの型を保ちながらもポピュラー・ミュージックともアジャストするのは、この個性があるからだ。逆に、ロックンロールのサウンドフォーマットでは表現しづらい個性を、きっちりロックンロールに昇華させる力も持っている。この器用さは、日々レコードを聴き漁り、ロックンロール・ヒストリーを隅から隅まで知識として貯め込んでいる彼らだからこそ体現できることだ。
「male bee, on a sunny day. well well well well!」でライブは終盤へ突入。「5人で最初に作った曲です」という紹介で「ダーティーでリバティーなベイビー、お願いだから」を披露。「so happy go lucky!」につづき、テンポアップした「恋の1秒野郎」を畳み掛ける。若手のバンドで華やかさと艶やかさを兼ね備えているのはボヘミアンズしかいない。そこには洋楽の匂いが漂っている。考えてみれば70年代はこんなバンドばかりだった。洋楽の艶やかさやいかがわしさ。その匂いのなかでロックンロールは鳴っていた。現代の日本のロック・バンドは日本のロック・バンドに影響を受けている。そこに誠実さとリスペクトは見えるが、インチキ臭さやモンキー・ビジネス感はない。ボヘミアンズにはそれがある。そこがいいのだ。5人が醸し出す空気はどう考えても怪しい。ビートルズだってフーだって当時の大衆からすれば、ただの怪しい人たちだった。フロアが熱くなったところで、洋楽から多大なる影響を受けているボヘミアンズの面目躍如、THE COASTERSが1959年に録音した「That Is Rock And Roll」の日本語カバーを投下。すでにライブの定番曲になっている「That Is Rock And Roll」で会場は爆発。ボヘミアンズの洋楽カバーは絶品だ。毎回、オリジナルアルバムに3曲くらいずつ入れてほしい。初期のビートルズやストーンズのアルバムの何割かはカバーだったんだから。次に最近の代表曲「GIRLS(ボーイズ)」、そして最後にバンドヒストリーを通しての代表曲「おぉ!スザンナ」を演奏して本編を終了した。
アンコールは「THE ROBELETS」でスタート。次に『FIVE SOUL ROLL EP +1』の「+1」、山中さわお作「I’ll be Japanese Iggy pop」を演奏。その後、「TOTAL LOVE」「NEW LOVE」で大団円。ツアー初日は熱狂のなかで終了した。『FIVE SOUL ROLL EP +1』がバンドにもたらしたものがなんであるのか、この1本のライブでは判断できない。しかしあらゆる音楽性をロックンロールとして昇華させることは、確実に「5人で遊ぶこと」に結びついている。ボヘミアンズは現代の日本の音楽シーンのなかでは異端なのかもしれない。しかしロックンロールはそもそも異端だった。大手を振ってまかり通るような音楽ではなかった。あのエルヴィス・プレスリーでさえ、「なんで白人が黒人の音楽をやるのだ?」と言われた。まぁそんなもんだ。ロックンロールはそうやっていつも隅っこの方から反撃を始める。ニューヨークの街の片隅で生まれたパンクはロンドンに飛び火して世界的な音楽革命をもたらした。2017年、東京の片隅で、洋楽から影響を受けた山形出身の5人組がロックンロールを鳴らしながら蠢いている。それが新しいロックンロール・スタンダードになる。(森内淳/DONUT)
THE BOHEMIANS“FIVE SOUL ROLL TOUR 2017”
- 2017.4.14(金) 高円寺 HIGH
- bohemian boy
- 太陽ロールバンド
- Brighter guy, Brighter girl
- ビート!ビート!ビート!
- hello, tender 0 year
- ハイパーデストロイでクラッシュマグナムなベイビージェットよいつまでも
- tightrope days
- hikari
- BABY MAYBE BABY
- B.O.H.E.M.I.A.N.S.
- I ride genius band story
- THE ALWAYS
- male bee, on a sunny day. well well well well!
- ダーティーでリバティーなベイビー、お願いだから
- so happy go lucky!
- 恋の一秒野郎
- That is Rock&Roll
- GIRLS(ボーイズ)
- おぉ!スザンナ
- EN
- THE ROBELETS
- I’ll be Japanese Iggy pop
- TOTAL LOVE
- NEW LOVE