最終少女ひかさ、6/23ラストライブの1日
5月14日から行った初の全国ツアー「GEKOKUJO! -2017巣立ち-」ファイナル、6月23日 札幌・Sound Lab moleの公演をもって、最終少女ひかさが解散した。ラストライブは、ひとりでも多くのファンが入れるようにとギリギリまでキャパシティを広げ、超満員&ソールドアウトのなか行われた。ここでは、彼らの最後の1日に密着させてもらった記録をお届けします。あわせて、翌日6月24日に新たな1歩を進み始めた“但野正和”の第一声をご紹介。ゆっくりご覧いただけると嬉しいです。
最終少女ひかさ 最後の1日に密着して
彼らの解散発表は突然だった。「これからって時に!?」とたくさんの声が聞こえてきた。解散の報告を受け、居てもたっても居られずに4月末、但野正和に時間をもらい話を聞いた。要約すれば但野が解散発表に寄せたコメントのとおり「俺たち5人が、この先、ただ死んだように生きていくんじゃなくて。輝いて生きていくために辿り着いた結論です」ということだった。
最終少女ひかさというバンドは不思議なバンドで、観る人によってロックンロール・バンドだったり、ダンスミュージックのバンドだったり、ブルースだったりJ−ロックだったりと様々な捉えられ方をした。事実、彼らの楽曲はたくさんの要素を孕んでいたし、但野の畳み掛けるように言葉を詰め込んだ歌詞はそんなジャンルを飛び越えた。ライブを観る度にワクワクし、その日のライブはその日だけのものだという当たり前のことを、強く思い出させてくれた。これまで色々な景色を見せてくれた彼らのラストライブ・札幌公演を見届けたい。最後の1日に密着させてもらうことにした。
6月23日。ライブハウス・Sound Lab moleに到着すると、すでにリハーサルが始まっていた。いつもどおりのリハ。音響や照明の確認。リハ後も時折ステージに戻り、それぞれの楽器を確認するメンバーたち。ちょうど昨年の5月、私は彼らの初ワンマンを取材するために同じく札幌を訪れていた。あれから1年で、今度は解散ライブを観に来ることになるとは思ってもいなかったな、と思いながら、あの時と少し違う楽屋の雰囲気に気がついた。初ワンマンということも大きな理由だっただろうが、もう少しピリッとした感じがあった昨年に比べ、この日の楽屋には穏やかな空気が流れていた。もちろん、ライブ前の緊張感はあったが、それ以上に「最終少女ひかさでいること」を個々が慈しんでいるような。勝手な推測に過ぎないが、なんとなくそんな表情を受け取る場面がいくつかあった。解散が決まってから小野寺宏太(ba)に会った時、「今が一番楽しい」と話してくれたことを思い出した。会場がオープンすると、ラモネスは2階部分からひとり、徐々に埋まっていくフロアをしばらくの間じっと見つめていた。刻一刻と開演が迫るなか、ふと但野がカメラに向かって「騙された気分はどうだい?」と、ニヤリと笑った(これはセックス・ピストルズのラストライブでジョニー・ロットンが言った言葉)。そうだ、今日はラストライブだ。急に実感が高まった。19時を少し押して、5人はステージへと向かった。最終少女ひかさとしての最後のライブがスタートした。
ぎゅうぎゅうのフロア。ステージに立つのは但野正和(vo>)、山田駿旗(gt&cho)、ラモネス(key&cho)、小野寺宏太(ba&cho)、イワノユウ(dr)。1曲目「かつき」から勢いそのままに突っ走ったまま数曲。ライブが始まれば解散のことなんてすっかり忘れて……というわけにはさすがにいかなかったけれど、そういうことも関係なく、いつもどおりに、いつもどおりじゃないステージを見せつけた5人。例えば、<闘わねえと腐ってくぞ!!>(「商業音楽」)と自らを鼓舞する叫びも、「まったく感慨深くないです。カラッと演るつもりです」という言葉と裏腹に披露された「人生」での情感あふれる魂も、自身・バンドの道のりと向き合った新曲「4年間」のリリックで吐露したリアルな感情も、彼らのナンバーには様々な闘いが刻まれてきた。但野が綴るその歌詞に、山田はゴリゴリのリフで応え、ラモネスはメロディアスな旋律で色をのせ、小野寺は多様な温度のグルーヴで支え、イワノは雷神のごとくタフなビートで楽曲を押し上げていく。ライブにおけるこの5人のバンドワークはいつ観てもグッとくるものだった。この5人だからこそのサウンドが、今日だけの音で“最終少女ひかさ”を鳴らす。
闘うだけじゃなく、リスナーそれぞれが自分の人生と重ね合わせて胸を熱くするナンバーもひかさ楽曲の真骨頂。この日も、フロアから上がりっぱなしの手や拳がそれを証明していた。なんというか、ステージからもフロアからも愛とエネルギーが飛び交っているこの光景は少し特別だ。そして、但野と山田のコンビも少し特別だ。このツアーの会場限定シングルとなった最後のレコーディング楽曲「ディアマイフレンド」ではこんなフレーズがある。<いいギターがいるんだ 俺の友達なんだ>。曲中、何度も「シュンキ!」と名前を呼んで山田を指差すシーンがmoleにも刻まれていく。ボーカリストとギタリスト。ひかさの名コンビに歓声が飛ぶ。
いつもステージ上で剥き出しの思いを伝える但野だが、今日もオーディエンス全員の顔を焼き付けるかのように「あなた方のおかげで、最後のこの日をちゃんと迎えられた」と、ゆっくりと感謝の言葉を口にした。そして札幌の景色を滲ませた「豊平川」に続き、本編ラストナンバー「ハローアゲイン」を披露。この歌でうたわれる希望がフロアに光を射す。と、曲中、但野がはっきりと言った。「泣いたっていいが、顔を上げてくれ。俺たちの姿を目に焼き付けてくれよ」。そうだ、今日はラストライブだ。またも実感が高まる。一斉に視線がステージへと注がれ、ラモネスの涙も笑顔に変わる。メンバーとお客さんに向けられた「愛してるぜ!」という言葉が会場いっぱいに響き渡った。
止まない声援を受けて登場したアンコール。“音楽やめようと思ったことなんて1回もない”というフレーズを挟んだ渾身の「ピカピカ」に続く本当のラストナンバー「あーりんわっしょい」では、なんと途中からフロアライブへと移行。本来は無理だろうという超満員の状況で「俺たちに場所をくれよ」と言い出し、ドラムセット、キーボード……とフロアに楽器が下されていくさまを見ながら思わず笑ってしまった。ステージには但野ひとりが残り、山田、小野寺、ラモネス、イワノの4人はフロアでプレイ。涙も笑顔も、カラフルな風船もスヌーピーのフロートも入り乱れたラストプレイが、なんともひかさらしい最後だった。解散発表後ツアーを回るなかで、きっと自分たち自身もラストに向き合ってこられたのだろう。ステージを後にした5人の清々しい表情に、フロアから「ありがとう!」という大きな声がおくられた。6月23日、最終少女ひかさ、札幌・Sound Lab moleにて解散。ライブ中の但野の言葉が、この日を言い表していたように思う――「終わりはするが絶望じゃない。未来には希望の光が射している」。
最後に。但野正和はツアー初日から宣言していたとおり、新バンド始動に向けて準備中。イワノユウはいち早く、札幌のバンド・マイアミパーティのドラマーとして活動をスタートした。メンバーみんながどういう道を進もうと、彼らの今後も楽しみにしたいと思う。そして、バンドは解散してもひかさの音楽はいつだって、どこだって、ずっと鳴り続ける。彼らに出会って以来、何度も何度も味わってきた「こんなバンドだったんだ!」という衝撃がうすれることはない。そんな音楽とライブを届けてくれた最終少女ひかさに、感謝を込めて。(秋元美乃/DONUT)
セットリスト
- 01 かつき
02 関係者でてこい
03 さよならDNA
04 商業音楽
05 すし喰いたい
06 岩野殺し
07 媚を売れ
08 Let It Die
09 半分人間
10 人生
11 ハルシオン
12 B
13 ロリータ
14 レイラ
15 こっち見んな
16 4年間
17 ディアマイフレンド
18 Rolling Lonely review
19 豊平川
20 ハローアゲイン - <アンコール>
21 ピカピカ
22 あーりんわっしょい
但野正和インタビュー@豊平川 2017年6月24日
最終少女ひかさ プレゼント企画!
- 最終少女ひかさからRock isの読者にスペシャルプレゼントをいただきました。
- ・「さよならDNA」のMVで但野正和が着用しているペイントシャツ
- ・「さよならDNA」のMVに登場する歌詞の一部が書かれた半紙
- ・メンバー全員の直筆サイン
- ・『最期のゲージュツ』ポスター
- 以上をセットにして1名さまにプレゼントいたします。
- ご希望の方は、下記「問い合わせフォーム」の件名「最終少女ひかさ プレゼント希望」を選択し、問い合わせ内容に「最終少女ひかさへの想い/お名前/お住まいの都道府県」をご記入の上、ご応募ください。熱いメッセージをお待ちしております。
- 当選者には、当選連絡メールを送信後、郵送先住所をお知らせいただく形となります。
- 応募〆切:2017年9月6日(水)23:59まで。
応募期限終了
沢山のご応募ありがとうございました。
ご当選者様に別途ご連絡させていただきます。