貴ちゃんナイト vol.10

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和田唱(TRICERATOPS)

貴ちゃんナイト vol.10

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the pillows

貴ちゃんナイト vol.10

ラジオの物語が詰まった「貴ちゃんナイトVOL.10」を見た

最近は朝から晩までラジオばかり聴いている。昔はステレオのセットにラジオチューナーが必ずついていた。CDラジカセも一家に一台はあった。一生懸命にラジオから流れる音楽をカセットテープに録音していた。2010年代に入ってからチューナーもCDラジカセも隅に追いやられてしまった。しばらくはラジオから離れた時期もあった。ラジオ・メディアが危ぶまれたとき、スマートフォンがラジオに変わるアプリケーション「radiko」が登場した。それをきかっけにまたラジオを聴くようになった。今ではほとんどの情報はラジオから仕入れている。1週間前までの番組を聴けるタイムフリー機能のおかげで、仕事中はラジオを聴いているかサブスクリプションで音楽を聴いているかのどちらかだ。ラジオというメディアが面白くなるのはむしろこれからだと思う。

14歳のときにビートルズの音楽を知ったのも、16歳のときにセックス・ピストルズの音楽を知ったのもラジオだ。18歳のときにRCサクセションのスタジオ・ライブを聴いたときの衝撃は今でも忘れられない。「ヤング・ジョッキー」「若いこだま」「サウンドストリート」。音楽に出会う重要なツールがラジオだった。14歳のときにラジオを聴いていなかったらこのような仕事はやっていない。だから、中村貴子と「若いこだま」「サウンドストリート」の流れを汲む「ミュージックスクエア」をつくったときには本当に嬉しかった。中村貴子は今も「モザイクナイト」で好きなゲストを迎え、好きな音楽をかけている。金曜深夜の番組だが、radikoがあれば、いつだってゴールデンタイムの番組に早変わりだ。そういう意味では、ラジオは昔よりもフレキシブルで面白いメディアになった。

ラジオパーソナリティの中村貴子がラジオの仕事をはじめて今年で35周年だという。彼女の番組で音楽ファンになった人も少なくない。それどころか今もその輪は広がっている。彼女のラジオを聴いてミュージシャンになった人もたくさんいる。たまに「ミュージックスクエア」を聴いていましたというミュージシャンに出会うことがある。今、10代のミュージシャンとつるんでいるが、こうなってくると、彼らの両親が番組の元リスナーだったりする。音楽は世代を超えてつながっていくのだ。なぜ音楽が世代を超えてつながっていくのかというと、そこに中村貴子というパーソナリティがいたからだ。例えば、ラジオはYouTubeにとって代わられているという人がいる。しかし、それは違う。YouTubeには「パーソナリティ」がいないからだ。YouTubeには「パーソナリティ」の感性を通すからこその「新しい音楽との出会い」もなければ「新しい音楽の解釈」もない。ラジオの音楽番組は1曲のオンエア曲を決めるのにもスタッフ間で侃侃諤諤の議論が生まれる。ラジオでかかる1曲が宿した熱量はYouTubeで偶然であった音楽とはまた違った魅力や説得力を持っている。だから貴ちゃんナイトには全国からたくさんのお客さんがやって来る。イベントの真ん中にラジオがあるからだ。イベントに来られないリスナーはSNSを通して盛り上がる。「後夜祭」と呼ばれるライブ終了後の感想戦は何週間もつづく。貴ちゃんナイトはミュージシャンが自分の出番をまっとうするだけのイベントではない。出演アーティストも中村貴子のラジオ番組と密接な関わりを持った人たちばかりだ。出演者も観客も、中村貴子とラジオの物語を楽しむことになる。

貴ちゃんナイトはライブハウスで行われる。今回は35周年ということでライブハウスよりも大きな規模の渋谷 duo MUSIC EXCHANGEで行われた。出演者はthe pillows、和田唱(TRICERATOPS)、髭の3組。ピロウズは1991年から、トライセラトップスは1997年、髭は2007年と、彼女がラジオで長年応援してきたアーティストばかりが集まった。開演時間になると、いつものように中村貴子がステージに登場。貴ちゃんナイトの成り立ちについて説明をする。そもそもこのイベントはリスナーが始めたDJイベントだった。場所は岡山。中村貴子がオンエアした曲縛りのDJイベントだ。彼女も最初はお客さんで参加した。貴ちゃんナイトというネーミングもリスナーが考えた。そのイベントに触発された中村貴子が2回目からライブ・イベントとしてリスナーから受け継いだ。最初のDJイベントから数えて10回目になり。リスナーがパーソナリティの背中を押し、アーティストが参加するという、まさに理想的な展開を見せたイベントだ。

貴ちゃんナイト vol.10

今夜のトップバッターは髭。3組のなかでは最年少アーティストだ。須藤寿は「髭は15周年なのに、今日は一番下っ端」といって観客を笑わせていた。会場が暗転して登場SEが流れる。そのSEをノイジーなギターが覆い、1曲目の「S.O.D.A.」が始まった。最新作『すげーすげー』の3曲目に収録されている楽曲だ。ビートルズの「ヘルター・スケルター」を思わせる激しいナンバーで頭から観客を圧倒する。2曲目は『Chaos in Apple』よりオルタナとグラム・ロックとビートルズをミックスしたような「ハリキリ坊やのブリティッシュ・ジョーク」。3曲目は同アルバムより「黒にそめろ」。こちらも激しいロックンロール・ナンバーだ。トップバッターの役割をまっとうするべく、髭は、最初から飛ばしまくった。再び『すげーすげー』から「もっとすげーすげー」。ギター・ロックの重厚さと髭のポップセンスが爆発した楽曲だ。「テキーラ!テキーラ!」に匹敵するキラー・チューンだ。5曲目は再び『Chaos in Apple』より「ボニー&クライド」。髭は最新作『すげーすげー』でバンド・サウンドとギター・ロックに回帰した。今日のセットリストはその気分を反映していた。頭脳明晰さが暴走することもままあるが、その分、ロックの初期衝動とポップなメロディに回帰したときの力強さは半端ない。6曲目は新曲の「謝謝(仮タイトル)」。とてもスケールの大きな楽曲で、早くも髭の代表曲になりそうな予感がした。バンドの好調ぶりを表した1曲だった。最後に「テキーラ!テキーラ!」で会場は最高潮へ。貴ちゃんナイトはとても贅沢なスタートとなった。

貴ちゃんナイト vol.10

次が和田唱の登場。トライセラトップスには、デビュー当時から「ミュージックスクエア」に何度となくゲストで来てもらった。楽曲もたくさんオンエアした。DONUT編集部としてはポール・マッカートニーの本をつくるときに協力してもらった。……にもかかわらず、和田唱のソロを一度も見たことがなかった(過去に何度かやったようだ)。はっきりいって、今日、一番の衝撃だった。バンドにはバンドの良さがあり、ソロにはソロの良さがある。その言葉を実践したようなライブだった。和田唱はステージに登場するとアコースティック・ギター1本で「PURE IMAGINATION」を弾き始めた。早くも釘付けに。インストだけでステージをやれるのではないか、と思った。「Shout!」を歌い始めたとき、和田唱のメロディに宿るポップ感が爆発。トライセラトップスとは違う風景が広がった。ギター1本でここまでポップを表現できるアーティストはそんなにいないと思う。名うてのシンガーソングライターも真っ青だろう。ピアノを弾きながら歌ったバラード「if」もポール・マッカートニー感満載でとてもよかった。次がビートルズの「BACK IN THE U.S.S.R」をアコギ1本で。「BACK IN THE U.S.S.R」はビートルズ後期を代表するロックンロール・ナンバーだ。ポールのコンサートでは会場を盛り上げる際の大事な曲になっている。数あるビートルズ・ナンバーからわざわざこのロックンロール・ナンバーを選んでアコギ1本でカバーする発想が素晴らしい。さすがビートルズ・ファンだ。次にできたばかりの新曲「1975」を初披露。「もしも自分が生まれた年に行けたら」という物語から始まる名曲。和田唱は「ここはこうしようと思っているんだ」とアレンジのアイディアを話していた。バンドではまだ録音していないという。きっと、この曲はトライセラトップスの代表曲になるだろう。示し合わせたわけでもないのに、髭も和田唱も新曲を観客(リスナー)に紹介した。まるで新曲を持ってラジオにやってきたかのよう。これもまた貴ちゃんナイトが呼び込んだマジックだ。最後に演奏したのはデビュー曲「Raspberry」。和田唱はポップ・メイカーとしての実力を存分に見せつけてステージを去った。

貴ちゃんナイト vol.10

最後に登場したのがピロウズだ。デビュー当時の悪戦苦闘〜飛躍〜ブレイクまで、中村貴子はそのほとんどのシーンを見てきた。ターニングポイントになったアルバム『Please Mr.Lostman』の資料に、中村貴子とぼくはコメントを書かせてもらったこともある。そいうわけでピロウズが貴ちゃんナイトに出るということはとても特別なことだ。それはオーディエンスにとっても思いは同じだ。中村貴子のラジオをきっかけにピロウズを知った人も少なくない。まさにリスナー待望の、満を持してのブッキングだ。ピロウズはその思いに応えるかのようなセットリストを組んできた。1曲目は「アナザーモーニング」。「新しい朝に生まれ変わろう」という歌だ。「35周年からまた始めよう」というピロウズからのメッセージのように捉えることもできる。2曲目の「Blues Drive Monster」は、ラジオから流れてくるロックンロールが憂鬱を踏み潰す歌だ。3曲目の「彼女は今日,」は「ミュージックスクエア」のエンディングテーマだった。ライブでもたまに演奏するが、貴ちゃんナイトで聴く「彼女は今日,」は特別だ。「その未来は今」の歌詞は、今もラジオの第一線で活躍している中村貴子の姿に重なる。次は中村貴子のリクエスト曲「レディオテレグラフィー」。ラジオから流れるメッセージとロック・ミュージックについての歌だ。次が「About A Rock’n’Roll Band」。この曲にも歌詞にラジオが出てくる。ロック・ミュージックに出会ったときの輝きを歌った曲だ。「Funny Bunny」、「パーフェクト・アイディア」、「この世の果てまで」、「ハイブリッド レインボウ」で本編は終了。ピロウズは「ラジオ」と「未来」をキーワードに「これからもつづいていく物語」を中心に披露。それは35年間、ラジオと共に歩んできた中村貴子へのメッセージであり、ラジオでロック・ミュージックをキャッチしてきた観客(リスナー)へのメッセージだった。それは「音楽とともにこれからも行こう」というメッセージのようにも聴こえた。それを総括するように、ピロウズはアンコールの「Thank you, my twilight」で「人生は美しい」と高らかに歌い、最後に「Read Steady Go!」で、中村貴子の、そしてリスナーのこれからの音楽人生を祝した。真ん中にラジオの物語がある限り、このイベントは永遠に特別なのだ。(森内淳/DONUT)

貴ちゃんナイト vol.10

y’s presents『貴ちゃんナイト vol.10』

  • 日時:2018年03月02日(金)
    会場:渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
    出演:the pillows /和田唱(TRICERATOPS)/髭
    MC:中村貴子
    Floor SE選曲:山中さわお(the pillows)
  • Floor SE 1 ( 開場 )
    ALBUM:「Das Pop」
    ARTIST:Das Pop
  • Floor SE 2
    ALBUM:「We Are the 21st Century Ambassadors of Peace & Magic」
    ARTIST:Foxegen
  • 髭セットリスト
  • M1. S.O.D.A.
    M2. ハリキリ坊やのブリティッシュ・ジョーク
    M3. 黒にそめろ
    M4. もっとすげーすげー
    M5. ボニー&クライド
    M6. 謝謝(仮タイトル)
    M7. テキーラ!テキーラ!
  • Floor SE 3
    ALBUM:「Spreading Rumours」
    ARTIST:Grouplove
  • 和田唱セットリスト
  • M1. PURE IMAGINATION
    M2. Shout!
    M3. if
    M4. BACK IN THE U.S.S.R
    M5. 1975
    M6. Raspberry
  • Floor SE 4
    ALBUM:「Sha Sha」
    ARTIST:Ben Kweller
  • the pillowsセットリスト
  • M1. アナザーモーニング
    M2. Blues Drive Monster
    M3. 彼女は今日
    M4. その未来は今
    M5. レディオテレグラフィー
    M6. About A Rock’n’Roll Band
    M7. Funny Bunny
    M8. パーフェクト・アイディア
    M9. この世の果てまで
    M10. ハイブリッド レインボウ
    EN1. Thank you, my twilight
    EN2. Ready Steady Go!
  • Floor SE 5
    ALBUM:「Long Player Late Bloomer」
    ARTIST:Ron Sexsmith

 

「Rock is LIVE 5」2018.10.12(金)下北沢 BASEMENT BAR. hotspring/がらくたロボット/錯乱前戦.チケット発売中:2,000円(1ドリンク別)