山﨑彩音が「今」気になるモノやコト、エッセイなどを紹介!

山﨑彩音の「その時、ハートは盗まれた」

2018/8/8

第32回目「それを取るか、それを置いていけ!」

「グッバイ・ゴダール!」という映画の広告を色んな雑誌で目にすると、
それはなんとまあ、シンパシーを刺激してくる、レッド&ターコイズブルー&イエローの色彩で構成されている広告であり、更にかわいいボブ・スタイルの女の子が私を惹きつけた。

「37歳のジャン・リュック・ゴダールと19歳の妻アンヌ・ヴィアゼムスキーのパリ暮らしの日々を、アンヌの自伝的小説を原作に描いた映画」、だと思って観ていると、急にカメラはゴダールだけにピントを合わせ、彼はカメラ目線で語り始める、本当に予想のつかない映画だった。

わたしはシンパシーを刺激してくる広告などから勝手に、
「いい感じの洒落てる映画かな。内容はないだろうけど、観るぶんには最高かな!」なんて思っていたけれど、ふざけるな! 内容濃すぎだ! 2回も観たけどまだまだ発見はあるし、わたしの勉強が全然足りない!

・・・そんな風に感じたので、今回はこの映画から受けたファーストインパクトを書き留めておこうと思う。

 

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正直、革命なんてこの映画を観るまで親しみのない言葉だった。

学生運動がある時代じゃないし、デモもごく一部で行われているだけで、革命を起こす! とか、今じゃ半ば冗談で発言するのが鉄則な空気だ。

けどこの映画でいう革命は本気だ。
時代は1968年、五月革命を迎えている。
毎日のように学生たちは怒り、デモを起こし、警察とやり合い、車をぶっ壊す。

タバコをモクモクさせながら講義をしている慌ただしい日々だ。

ゴダールは妻アンヌを主演とした「中国女」という毛沢東主義者たちの映画を発表するも、批評を食らう。
娯楽映画からの脱出。
世のムードとゴダールの映画に対する考えは一致しない。
デモに参加するゴダールに学生が「いつ娯楽映画には復活しますか?」と聞かれるシーンではずいぶん不機嫌に、めんどくさそうにしていた。

ゴダールはいう、「モーツァルトは35歳で死んだから、35歳以上の芸術家はまぬけなんだ」と。

グッバイ・ゴダール!

 

革命をとるか、映画をとるか、それがこの映画の大きなテーマだ。

ゴダールという男の人生は全てを映画に、いや生きている現代社会に、捧げたものとなった。
映画に人生を捧ぐことを突き詰めていくと、社会的な活動になっていく。

そんな彼を映した、正にリアルな映画だった。

デモの混乱中に眼鏡を4回くらい壊したり、学生たちの講義に参加しブーイングされても「若い人が言うことは間違っていないんだ」と彼らを責めず、カンヌ国際映画祭までも中止に追い込み、映画仲間とは険悪になる彼の姿は、情熱的だけど空回り気味でユーモアで溢れていた。

そんな彼を尊敬し続け、いつも隣にいるアンヌの一途さも凄まじかった。
高身長で顔の小さい、お尻も小さい、胸も小さい、彼女はとてもキュートだ。
目を覚まし、裸のままダイニングへ行って「おはよう」と言う前にゴダールを見つめてキスをするのだ。かわいかった!

そして彼女が着ている服は特別派手なものはあまりなく、ベージュのトレンチスカートに紺色のニット。とある日はチェックのミニで読書していたり、髪の毛なんて後ろの方は結構跳ねているし、不味そうに硬いパンを朝食に食べている。
そういう決め込んでいすぎない世界観が、学生運動の危ない空気感をよりリアルに伝えてくれている気がした。

グッバイ・ゴダール!

映像的にもすごく面白くて、2人が愛し合うシーンではモノクロに変わる。
口や動く手や目だけをピンポイントに、スクリーンに映して訴えてくる感じが粋すぎて気絶しそうになった。
デモ中にカメラを回すゴダールのシーンも、”カメラを覗くゴダールの目線”をスクリーンに、フィルムで映していた。

カメラを回すゴダールの姿はまるで、銃を構えてるかのように、相手を仕留めるかのように、反対運動をカメラに納めていた。
そして、その銃で自分をも撃ち抜いて、今までの自分を殺していくのだった。

 

その後、ゴダールとアンヌは別れてしまうのだけれど、印象的なシーンがあった。

新しい仲間を見つけたゴダールがカフェでくつろいでいるところに、アンヌがやってくる。嫌なムードが漂うなか、ゴダールが仕打ちをかけるように彼女に言う、
「ジャン・リュック・ゴダールは死んだんだ。」

アンヌ「愛する人が死んで悲しまない人はいる?」

(覚えている範囲)

ここで完全に2人の愛は終わる。
一番最後のシーンでアンヌが「彼を可能な限り愛した」という台詞が上映終了後もじわじわと染みわたる。

グッバイ・ゴダール!

 

全く洒落てるだけの映画ではなく、社会的にそして情熱に満ちた60年代が描かれていて、しかもゴダールという映画を創る男の人生を追っていく映画はとても刺激的だった。
まさにローリング・ストーンズの『アフター・マス』(1966)に収録されている「Take It or Leave It」みたいに、「それを取るか、それを置いていけ!」「承諾するかしないかは君の勝手だ!」というメッセージを映画から感じたのであった。

 

みんな個々に考えや怒りがあるということ。
それを”わかりやすく”といったら怒られるかもしれないが、行動として起こす姿。
現代ではありえない人々の情熱。

言葉だけで知っていた五月革命も、ああやってスクリーンで映されるとすごい迫力だった。
ゴダール自身も何かアクションを! と、たとえ空回りしても批評されても
「ふざけるな、僕が正しい!」と突き進み続ける姿。

かっこよかった。

中途半端なものは一切なくて、ただまっすぐ、突き刺さるのであった。

そして革命を起こすということは、とてつもなく孤独な戦いであり、失っていくものも多いみたいだった。
でもそうなってでも、やる人は革命を起こそうとするのかもしれない。

本気が埋もれる、わかりにくい現代に生きているが、「ふざけるな!」ってあきらめずにやり続けよう。なんて、あまり怒りを表現できないタイプのわたしでも思ったのである。

そのくらいパワーがあって、きっと同世代には刺激的な映画だと思う。
そしてゴダールのこと、アンヌのこと、政治のこと、まだまだ知らないことばかりで知りたいことがまた増えた。

やっぱり3度目も観に行こう。

 


映画『グッバイ・ゴダール!』

監督:ミシェル・アザナヴィシウス
CAST:ルイ・ガレル/ステイシー・マーティン/ベレニス・ベジョ
上映時間:108分/製作国:フランス
劇場:新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座他全国順次ロードショー

【公式】『グッバイ・ゴダール!』7.13公開/本予告

物語:アンヌは、パリで暮らす哲学科の学生。そんな彼女の人生に驚きの出来事が起こる。映画を変えたと世界中から注目される天才監督ジャン=リュック・ゴダールと恋に落ち、彼の新作『中国女』で主演を飾ることになったのだ。新しい仲間たちと映画を作る刺激的な日々、そしてゴダールからのプロポーズ…。生まれて初めての体験ばかりの毎日に、アンヌはあらゆることを夢中で吸収していくが、パリの街ではデモ活動が日に日に激しくなり、ゴダールは次第に革命に傾倒していく――。

© LES COMPAGNONS DU CINÉMA – LA CLASSE AMÉRICAINE – STUDIOCANAL – FRANCE 3.

公式サイト:http://gaga.ne.jp/goodgy-g

山﨑彩音アルバム「METROPOLIS」リリースパーティー「Salon de by Yayavsky」

10月27日(土)新宿レッドクロス
開場 17:30/開演 18:00
出演:山﨑彩音 and more
前売り 2,000円(ドリンク代別)


major 1st album『METROPOLIS』

2018年7月25日(水)リリース
FLCF-4515/2,400円(税込)

<収録曲>
1.アフター・ストーリーズ
2.世界の外のどこへでも
3.ロング・グッドバイ
4.Nobody Else
5. FLYING BOYS
6.恋は夢の中
7.メェメェ羊とミルクチョコレイト
8.ナイトロジー
9. Wolf Moon
10.海へ行こう

「Rock is LIVE 5」2018.10.12(金)開催