山﨑彩音の「その時、ハートは盗まれた」
第34回目「今年出会った衝撃的な1枚〜フィービー・ブリジャーズ」
毎年自分にとって衝撃的な1枚と必ず出会えるのだが、まだ今年は2ヶ月ほど残っているけれど、フィービー・ブリジャーズの『ストレンジャーズ・イン・アルプス』が今年一番だと思う。
ちなみに去年はローラー・マーリング、一昨年はマデリンペルー。
毎年、不思議と女性のシンガーソングライターだ。
今までわたしはずっとバンドを聴いて過ごしてきたから、わたし自身がシンガーソングライターなのにシンガーソングライターという自覚がなくて、こんな風にシンガソングライターで同性で国の違う人の音楽に出会うと、毎年発見があって、そこに新しい概念を感じている。
このフィービー・ブリジャーズの『ストレンジャーズ・イン・アルプス』は再生した途端、空気感でこれはもう好き!と察した。ゆったりと始まって、聴こえてくるのは悲しげな女の子の歌声。
いろいろ調べてみると、彼女はロサンゼルスの24歳の女の子。
しかもこれがファーストアルバムだったのだ。それに驚いた。
音も音数があるんだけどないように聴こえる。音量もそんなに大きくない。けど、同じ一定のグルーヴのなかでガーッと行くみたいな、そういうのが気づいたらずっと好きだったから、それを究めたというか、それだけが入ったアルバムを聴いてしまうと、それはもう衝撃的で、わたしは舞い上がった。
わかりやすく言えば浮遊感系。
だから歌詞とかも抽象的なものが多いのかなと予想して和訳を見たら、全然違くて。すごい日記的で私小説的。
わたし自身は最近、主観性をみたいなものを失くした上で歌詞を究めたいと思ってたけど、この子はすごく日記的に歌詞を書いているし、歌詞の内容もこじんまりしていた。例えば元カレが住んでた街の通り道に固執した歌とか。
そんな彼女の歌詞を見ていると、商業的にやろうなんて考えは当たり前になくて、本当にただ自由にやってるっていうか。彼女の生活や物事の受け取り方、感じ方を日記的に歌詞にして音楽にして歌っている。
そんな歌詞を知って、更に彼女のことを好きになったり、彼女について考えてしまう。
自分そのもの、自分の生活、大げさに言えば人生そのものを作品にしてしまう。
わたしは作り込まれているものも好きだけど、わたし自身が自分の人生どうする?って常に考えていたり、自分を知りたいっていう理由で音楽をしているから、彼女がラフに自分の情けなさとか皮肉なユーモアを表現していることにすごくグッときた。
しかもロサンゼルスなのにアルプス。
ロサンゼルスは青い海と空だったのに、それではないところから歌をつくっている。そういうまったく違うところから来るのも衝撃で、アートワークの“ゴースト・フォトグラフス”から彼女自身をもゴーストに感じたり、違う星の女の子に思えたり、こうして聴いてる人があーでもない、こうでもないと日常的に考えてしまう作品を作る彼女はすごく思想的な人だなと思った。
そういうものがわたしはやっぱり好きだし、自分もそんな思想的人になりたい!と彼女の音楽に出会って思うのであった。
ちなみにこのフィービー・ブリジャーズの『ストレンジャーズ・イン・アルプス』はCDで聴いている。CDはジャケットがあってブックレットとライナーノーツがあって、全曲を通して聴くっていうのがセットな気がして、ずっとそのスタイル。
家にいるときは、CDウォークマンをスピーカーに繋げてそのまま再生したり、わざわざレコードをかけるときもある。
外にいるときはAppleMusicやSpotifyで聴くこともある。だけどサブスクリプションをやっていようとも並行してCDを買っている。それは多分、単純に買うのが好きだから。本やCDが並んでいる空間が落ち着く!家の床にはCDが積み重ねてあって、いつでも聴けるようにしてる。好きな映画のDVDは持っていたいし、重たくて開くのも大変な画集も持っていたい。
所有することで自分のヒラメキが広がったり、記録になったり、思い出になったり、一つの自分の中の価値観が構築されている気がするから。
フィービー・ブリジャーズの『ストレンジャーズ・イン・アルプス』も大事な1枚だ。
フィービー・ブリジャーズ『ストレンジャー・イン・ジ・アルプス』
- 2017年12月20日(水)リリース
HSE-6520/2,100円(税抜き)
- 収録曲:
1. Smoke Signals
2. Motion Sickness
3. Funeral
4. Demi Moore
5. Scott Street
6. Killer
7. Georgia
8. Chelsea
9. Would You Rather
10. You Missed My Heart
11. Smoke Signals (Reprise)
フィービー・ブリジャーズ「Would You Rather」MV
フィービー・ブリジャーズ「Motion Sickness」MV
山﨑彩音『世界の外のどこへでも』MV
山﨑彩音アルバム「METROPOLIS」リリースパーティー「Salon de by Yayavsky」
開場 17:30/開演 18:00
出演:山﨑彩音 and more
前売り 2,000円(ドリンク代別)
2018年7月25日(水)リリース
FLCF-4515/2,400円(税込)
<収録曲>
1.アフター・ストーリーズ
2.世界の外のどこへでも
3.ロング・グッドバイ
4.Nobody Else
5. FLYING BOYS
6.恋は夢の中
7.メェメェ羊とミルクチョコレイト
8.ナイトロジー
9. Wolf Moon
10.海へ行こう