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山﨑彩音が「今」気になるモノやコト、エッセイなどを紹介!

山﨑彩音の「その時、ハートは盗まれた」

2018/11/14

第35回目「ゴッホ 最期の手紙」

山﨑彩音の「その時、ハートは盗まれた」

 

「ゴッホは手紙で表しきれないことを絵に描いている。」

「彼の生活や告白文学を知らなければ彼の絵は楽しめない。」

 

YouTubeにあがっている小林秀雄さんの「ゴッホの人生について」で聞いた言葉だ。
去年の今頃これを聞いて、わたしははじめて、ゴッホが15歳の頃からずっと手紙を書いていたことを知る。

何かを表現する芸術家でも、作品以外のところで気持ちを吐き出したり、整理したりして、精神的バランスを保つ必要がある人もいると思う。
わたしは必要なタイプだから、ほぼ毎日日記を書いている。
それがゴッホの場合は、大好きな弟に宛てて書く手紙だった。
同じように言葉を綴るものだったから、不思議と親近感が湧いた。

そんなこともあり、映画『ゴッホ 最期の手紙』を観た。
この映画は125人ものの画家が、ゴッホタッチで油絵を約6万5000枚も描き、俳優が演じた実写映像をもとに作り上げたアニメーション映画。
そんな根気のある映画を体験するのははじめてだった。
最初のクレジットシーンだけでもう画面に圧倒される。
油絵の具の繊細なところまで表現されていて、それは全部見事に”ゴッホ風”であり、観ているだけでもうっとりしてしまう。
そして、わたしみたいにあまりゴッホの生涯を知らない人でも、「手紙」「自殺」というキーワードから、ミステリー仕立てに話は進んでいくから、ゴッホがどんな人物だったのか、どんな生活を送っていたのかは映画を観ながら学ぶことができる。

 

“芸術家”
“突き抜けている人”は
とんでもないバランス感覚の中で生きているとわたしは考えている。

ゴッホは素晴らしい芸術家になるという強い意志を持ちながらも、
絵は全く売れず、けれど絵を描くこと以外はできずで弟から支援を受けていること、自分の不安定な精神面のことや、どうしても切り離せない現実の状況を客観的にちゃんと見ていた。

それは37歳で終わった短い人生の中で、41点ものの自画像を描いたことからよく分かる。
小林秀雄さんはそれについて「ゴッホは自分をよく見ていた人」と話していた。

「主観性と客観性」
「常識と非常識」

自分をコントロールするということ。
だけれど、それはやりすぎると自由は失われ、創造性も失われていく。

そこのバランス。
折り合いのつけ方というのとはまた違うんだけれど、

気づいてるようで
気づいてないふりをしたり
気づいてると認めた上で
演じてみたり

そういうところでの個人的な戦いもまた、芸術家や突き抜けた人の宿命なのかもしれない…と映画を観て感じた。

ゴッホが孤独に描き続けた絵や手紙は今もなお残っていて、
この映画をきっかけにわたしは、作品を調べては年代を見て、こういう心境だったからこのときはこんな絵を描いたのかな?なんて考えを膨らませたりしている。

もちろん絵に惹かれるんだけれど、ゴッホ自身の孤独との戦いや、命がけの姿勢に敬意を抱けずにはいられないのである。

例え芸術家でなくとも、人生が孤独な個人戦の人には、時空を超えてゴッホから勇気が貰えるきっかけになる映画だと思う。

わたしはたくさんゴッホから勇気を貰っている。

 

Blue-ray『ゴッホ 最期の手紙』

出演:ダグラス・ブース、ロベルト・グラチーク、エレノア・トムリンソン、ジェローム・フリン、シアーシャ・ローナン、クリス・オダウド、ジョン・セッションズ、エイダン・ターナー、ヘレン・マックロリー

山﨑彩音の「その時、ハートは盗まれた」

監督・脚本:ドロタ・コビエラ、ヒュー・ウェルチマン
製作:ヒュー・ウェルチマン、ショーン・ボビット、イヴァン・マクタガート
制作総指揮:デヴィッド・パーフィット、ローリー・アーベン、シャルロッテ・アーベン、エドワード・ノエルトナー
撮影監督:トリスタン・オリヴァー、ウカシュ・ジャル
衣装:ドロタ・ロクエプロ
編集:ユスチナ・ヴィアージンスカ、ドロタ・コビエラ
絵画責任者:ピョートル・ドミナク
視覚効果責任者:ウカシュ・マツキェヴィッチュ
制作責任者:トメク・ウォツニアク
音楽:クリント・マンセル
ブレイクスルー・フィルムズ、トレードマーク・フィルムズ、シルバーリール・エンターテインメント
字幕翻訳:松浦美奈
字幕監修:圀府寺司
【2017年/イギリス・ポーランド/96分/カラー/原題:LOVING VINCENT 】
提供:パルコ NHKエンタープライズ カルタクリエイティブ
配給:パルコ
© Loving Vincent Sp. z o.o/ Loving Vincent ltd.
http://www.gogh-movie.jp/


LIVE INFO

  • 11月20日(火)新宿レッドクロス
    三者会談
    開場18:30/開演19:00
    前売り 2,500円/当日 3,000円 ドリンク代別600円
    出演:澤竜次/すずきゆきこ(BUGY CRAXONE)/山﨑彩音
    チケット
    レッドクロス店頭/Livepocket(販売ページ)/各出演者メール予約
  • 11月24日(土)南青山レッドシューズ
    69★TRIBE 133~ロック族~
    <ENTRANCE FREE>
    19:00 OPEN ※ALL NIGHT
    <69★BAND>
    YOU-DIE!!!&ザ・リーゼンツ/VirginCrabBand/山﨑彩音 avec 丸山桂/MOTOR HOTEL/and more…
    <69★SELECTERS>
    林拓一朗/Ace of spade
    <69★ACCESSORY>
    加藤工務店
  • 問合せ:南青山レッドシューズ http://www.redshoes.jp

 


山﨑彩音『世界の外のどこへでも』MV

major 1st album『METROPOLIS』

2018年7月25日(水)リリース
FLCF-4515/2,400円(税込)

<収録曲>
1.アフター・ストーリーズ
2.世界の外のどこへでも
3.ロング・グッドバイ
4.Nobody Else
5. FLYING BOYS
6.恋は夢の中
7.メェメェ羊とミルクチョコレイト
8.ナイトロジー
9. Wolf Moon
10.海へ行こう