山﨑彩音が「今」気になるモノやコト、エッセイなどを紹介!

山﨑彩音の「その時、ハートは盗まれた」

2018/12/12

第36回目「モダンライフ・イズ・ラビッシュ 〜ロンドンの泣き虫ギタリスト〜」

いつも映画を観に行くときは必ず、フライヤー置き場をチェックする。
だいたいジャケ買いみたいな感じで、これ好きそう!っていうのをパッパッパと持って帰る。

その中の一枚が『モダンライフ・イズ・ラビッシュ 〜ロンドンの泣き虫ギタリスト〜』だった。

デニムシャツを着た、少し髪の毛がくるくるしている、甘い顔の男の子が金髪の女の子にキスしてるフライヤー。
どう考えても、男の子のビジュアルがタイプ。
よく見るとギターを持ってるし、これは観に行こうと決めていた。

リアム(甘い顔の男の子)はヘッドクリーナーという、名前がちょっとダサめなバンドのボーカル&ギターをやっている、夢みるバンドマンだ。
レコードやCDをたくさんコレクションしていて、携帯やiPodは所有しない、現代社会の流れに反発する、頑固でちょっとめんどうな男。
一方ナタリーは、CDのジャケットを手がけるデザイナーになりたいという夢を持ってる女の子。

2人はレコード店で出会い、恋に落ちる。
一緒にギグに行って踊ったり、キャンドルを灯しながら音楽を聴いたり、ドライブをしたり、幸せすぎる時間を送る。次第に2人は同棲をはじめるも、リアムは仕事をはじめてはすぐやめ、曲も作らず、だらだらしている。
ナタリーは生活を支えるために、自分の夢を諦め、広告会社で働くようになってしまう。

 

わたしが考えるこの映画の一つテーマは

『アナログ派vsデジタル派』

わたし自身も、サブスクリプションをはじめて一年くらいが経ち、当たり前のようにストリーミングで音楽を聴いている。
ツイッターはやめてしまったけど、インスタグラムはまだ続けていて、知らない世界中の人と繋がれる状態にいるし、何年も会っていない友達の生活もSNSを見ればわかるから会っていない感じがしない。

今はそれが”当たり前”の時代だ。

映画を観ていると、アナログ派のリアムはデジタル派をバカにしている。
リアムは自分のこだわりが強くて、一番自分が正しいって思ってる。

大手広告会社に勤め、パソコンなしでは考えられない生活を送るナタリーのライフスタイルの変化もあって2人はどんどん衝突していく。

そして、気持ちのすれ違いとリアムの堕落っぷりに呆れたナタリーは別れを決断する。
2人の最後の夜にリアムはレディオヘッドの『Kid A』のCDをナタリーにプレゼントする。
そのCDには、CDケースの下に隠しブックレットがあって、そこには言葉ではなくアートが描かれている。
それにインスパイアされるか、メッセージを受け取るか、は個人の自由。
しかも円盤が入っている下のケースを開く人なんてそう多くはない。

それは完全に、受け取った人次第のモノなのだ。

人によって受け取り方の違う”アート”や”美学”を特別だと思うか、それをわかりたい!という気持ちが芽生えるかどうか。
または、そんなこと気づかなかったとしても人生に何の支障もないと考えるか。

きっとその人の価値観の問題である。

でもわたしは、そういうデジタルではない物質的なインスパイアやメッセージにロマンを感じるタイプだ。
自分のアルバム『METROPOLIS』のブックレットで、24ページのブックレットを作った(通常の倍以上の枚数)。しかも特色を使ったり、わたしの写真が圧倒的に少なかったり、普通のメジャーレーベルだったらハネられることを何とかやり抜いた。

それは自分がロマンを感じるタイプだからやりたい!という自己満足ではなくて、
デザイナーの遠井リナと、自分たちの、この”ロマンを感じる価値観”をきちんと作品の中に残すべきだ、だってそういうロマンに何度も勇気づけられたり、夢を見せてもらってきたから。それを今までそういう価値観のなかった人の、はじめての出会いになったら素敵すぎる!価値観を変えてしまうくらいすごい作品にしたい!という気持ちからそうなった。

表現する側はいつだって自分の美学を作品を通して残していきたいと思っているはずだ。少なくともわたしは思ってる。

そして映画は終盤に向かう。

リアムはまだナタリーとの別れを受け入れられていなく、どんどん欠落していく。

しかしプロデューサーのカーブに言われるのだ、

”最高の曲は痛みから生まれる”と。

その言葉からリアムはナタリーの曲を作る。

『リコリス・ガール』

そしてギグの最中、今までステージを見渡せば、必ずいたはずのナタリーがいないこと、楽しかった思い出、自分のクズさなどを突きつけられ涙が止まらなくなる。

でも同時にリアムはもう一度、ナタリーを迎えに行こうと決心するのであった。

リアムはその後きちんと働き、そのお金でiPodを買う。プレイリストを作り、手作りのラブレターと今までの撮ったポラロイド、つまり『アナログとデジタル』を合わせたプレゼントを彼女に送る。
リアムはデジタルを受け入れつつも、アナログな手法でもう一度彼女を口説くのだ。
ここで2人の間の『アナログ派vsデジタル派』のすれ違いはなくなり、もう一度愛し合う未来が待っているように見えた。

 

なんだかこの映画を観たあとわたしはすごく辛くなった。
今回テーマにあげた『アナログ派vsデジタル派』の観点ではなく、2人のラブラブだった時代、特にこれから2人で暮らし始める家に向かう車の中のシーンで、『She Moves In Her Own Way/ザ・クークス』を2人が唄っているのがとっても可愛いかったり、ハートのピザを一緒に作って食べたり。幸せな時代から2人の仲が悪くなって、リアムが落ちていくまでの過程が苦しかった。
現実的な女の子と、夢見がちな男の子というものが、なんともまあ生々しかった。どこにでもある話だと思う、すごくリアルだった。

音楽をやっているから、夢を見続けることもわかるし、同時に女であるから、女の人特有の現実的な感じと、”自分がしっかりしなくては”という母性が痛いほどわかる。

そしてリアムの口ばかりで行動に移せていない姿を見ていると、自分自身も居心地が悪くなった。

ウズウズしていないで自分ももっと頑張らなきゃ!と強く思った。
最終的にはやる気が出てきて、この映画を観た翌日からはわたしも少しはクズではなくなったと思いたい。(笑)

それとこの映画観てから無性に、レコードやCD、本を買いたくなった。
(この映画をきっかけにクークス、ブラー、レディオヘッドブームが到来。DIGLE MAG-AZINEのプレイリスト連載を見てもらえればわかると思います。。。)

今年最後の連載なので今回はボリューミーに!
わたしの最近買った、今回の話で言う所の”アナログ”なものたちを載せて終わりにしようと思う。

2018年、今年もこの連載読んでくれた方々、どうも本当にありがとうございました!来年もよろしくお願いします。♡

山﨑彩音の「その時、ハートは盗まれた」

  • ●ON THE BEACH/ニール・ヤング
    ●Sea Change/ベック

 

山﨑彩音の「その時、ハートは盗まれた」

  • ●夏に抱かれて/フランソワーズ・サガン
    ●私自身のための優しい回想/フランソワーズ・サガン
    ●萩原朔太郎詩集/萩原朔太郎
    ●父・萩原朔太郎/萩原葉子
    ●ダダ・シュルレアリスム演劇史/H・べアール著、安堂信也訳
    ●北回帰線/ヘンリー・ミラー

 

映画『モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ~ロンドンの泣き虫ギタリスト~』

11月9日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

監督・脚本:ダニエル・ギル
脚本:フィリップ・ガウソーン
製作:ドミニク・ノリス

出演:ジョシュ・ホワイトハウス/フレイア・メーバー/ジェシー・ケイヴ/ウィル・メリック/マット・ミルン/スティーヴン・マッキントッシュ/トム・ライリー/イアン・ハート/デイジー・ビーヴァン

『モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ~ロンドンの泣き虫ギタリスト~』

STORY:本当に現代は最低なの? 終わりから始まる恋のストーリー。カップルにとって長い関係を終えるということは多くのことを意味する。子供はどうなるのか?離婚弁護士は要るのか? このランプシェードはどっちが買ったのか? この植物は? だがリアム(ジョシュ・ホワイトハウス)とナタリー(フレイア・メーバー)とにとって事態はさらに複雑だった。2人は大切にしてきたレコード・コレクションを分けなければならないのだ。この途方もない挑戦を通じて2人は自分たちのそれまでの10年間を見つめ返す。

2017年/イギリス映画/英語/104分/ビスタ/カラー/5.1ch/原題:Modern Life is Rubbish/PG12

日本語字幕:中沢志乃/後援:ブリティッシュ・カウンシル/協力:British Culture in Ja-pan

配給:SDP ©Modern Life Pictures Limited 2016

公式サイト:http://nakimushiguitarist.com/


LIVE INFO

  • 12月23日(日祝)渋谷Milkyway
    「Ultra Dynamic Stroll On! vol.16」
    出演:リンダ&マーヤ/The Mash/SESAME/Slimcat/山﨑彩音 BAND SET
    (Vo&Gt山﨑彩音/Key丸山桂/Gt狩野省吾/Ba長島アキト/Dr大谷ペン)
  • 2019年1月13日(日)下北沢BASEMENT BAR
    「ベストヒット清志郎」発売記念
    KIYOSHIRO R&R BABYS#3~こんなんなっちゃった~
    出演:錯乱前戦/THE TOMBOYS/山﨑彩音(Vo/G 山﨑彩音&Key丸山桂)/and More
    MC:高橋ROCK ME BABY2019年1月26日(土)新宿レッドクロス
    17:30開場/18:00開演
    出演:山﨑彩音/大比良瑞希/斎藤アリーナ

 


山﨑彩音『世界の外のどこへでも』MV

major 1st album『METROPOLIS』

2018年7月25日(水)リリース
FLCF-4515/2,400円(税込)

<収録曲>
1.アフター・ストーリーズ
2.世界の外のどこへでも
3.ロング・グッドバイ
4.Nobody Else
5. FLYING BOYS
6.恋は夢の中
7.メェメェ羊とミルクチョコレイト
8.ナイトロジー
9. Wolf Moon
10.海へ行こう