山﨑彩音の「その時、ハートは盗まれた」
第25回目 『逃れたい思いと言い表したい思い』
あけましておめでとうございます!
年末、ニッポン放送イヤーエンドスペシャル『WORDS TOWN RADIO~音楽の街』を聴いてくれた方ありがとうございました。 大晦日の特番で荘口彰久さんとパーソナリティーを務めるという大仕事。しかもスペシャルゲストにチャボさん(仲井戸麗市さん)がいらしてくれるという大事件!! お陰様で12月は毎日緊張し続けた一ヶ月間になりました。
そして今回の連載は「自分にとって言葉とは?」というきっと永遠のテーマになるであろう疑問を、ラジオのときチャボさんがくれた言葉と照らし合わせて書こうと思います。
わざわざ言葉について考えてる人なんてあまりいないなぁと思うんだけれど、私は言葉に執着したり緊張感を持っていて。 だから色んなことをすごく考えていて、詩を書いたりリーディングしたり、歌も歌うチャボさんに私は、「チャボさんにとって言葉ってどういうものですか?」と聞いてみたかったので質問したのです。
チャボさん「俺も君と同じように自分で歌を書きたい人だし、でもやっぱり難しいよね。ある意味言葉から逃れたいと思っている。だけど言葉で言えることがあるんじゃないかってことを信じたいとかね。ただ言葉で誰かを突き刺しちゃったりね、自分はそんなこと思わないけど誰かの暴力になってしまう言葉の怖さとかね。 逆に言葉で誰かをつつみこめたりね。そういう行ったり来たりをずっとしてるんだけど、やっぱり言葉から逃れられない、言葉でなにか表現したいなってその行ったり来たりかな。君はどう思う?」
わたし「本当だったら言葉なんてなくていいっていうのが一番いいけど、私の現時点で言葉っておまじないみたいなもので。なんか自分のために詩を書くこともあるし。」
チャボさん「確かにそれはあるよね。そっかでもおまじないって面白い表現だね。」
私の倍以上人生を生きていて音楽をやり続けているチャボさんが「言葉から逃れたい」と答えてくれたことがすごく印象的でリアリティを感じた。 まだまだ未熟な私だけど「言葉から逃れたい」という回答に共感できるところもあって。
12月8日に新宿レッドクロスで対バンしたリンダ&マーヤのライブをみて、「イェーイ」「ロックンロール!!」ってマーヤさんが叫んだだけで全てが吹っ飛んでどうでもよくなって、もうオーケー!!って救われたんです。私みたいにネチネチ考えまくってるんじゃなくて、「ロックンロール!」って言葉だけで十分ではないか、となってしまうほど素晴らしいライブだったんです。
だけどそういう体験をしたからって、私はライブで「イェーイ!!ロックンロール!!」と今のところすぐにできるわけもなく。やっぱりちょっと違くて。だけどマーヤさんの絶叫を浴びて、「もう言葉とか必要ないじゃん!」って思った気持ちと向き合い、探り、書き留めるようと、気づけばまたノートを開いていて。
言葉になんかにできない気持ちを言葉にする、伝えなくちゃ君に伝えなくちゃ。 そんな思いがあるから言い表してしまう。自分と向き合いすぎて嫌になる。何冊ものノートにぎっしりと、まるで呪文みたいに並んでる自分の字を見るとギョッとする。
だけどチャボさんが「深く考えすぎちゃうのは僕も同じだよ」と言ってくれて、言葉を大切にしてる人は「逃れたい思いと言い表したい思い」で行ったり来たりするその狭間でいつも格闘するんだなと。「私もおんなじだ、頑張ろう!」と勇気をもらえました。
寺山修司が「詩は書いた詩人が自分に役立てるために書くのであって、書くという体験を通して新しい世界へ踏み込んでゆくために存在しているものなのだ」と書いていたけれど、正にその通りなのかもしれない。
チャボさんのくれた言葉を一生忘れたくない! そんな思いから帰りの電車で会話を必死に思い出してノートに書き留めた。
やっぱり私は言葉が好きで、言葉の力を信じている。
そして18歳が終わろうとしている今、チャボさんがくれた言葉につつみこまれ、また新しい自分に出会おうとしている。
2017年 4月 26日(水)リリース
FSCT-1005 フォーライフソングス
¥1,200(税込み)
収録曲:プレゼント/〇/キキ/ La mer 全4曲