山﨑彩音の「その時、ハートは盗まれた」
第29回目 「~青春という名の”理想”を追い求めるレディ・バード~」
映画『レディ・バード』を見た。
主人公はサクラメントに住む、自分をレディ・バードと名乗る17歳の女の子。
ニューヨークに憧れて、ニューヨークの大学を目指すもお母さんにはお金がかかると反対され常に喧嘩。頼りになると思っていたお父さんは失業。おまけに数年前からうつ病だったことが発覚し、彼女はハードな現実を突きつけられる。
それでもニューヨークに行きたい!こんな田舎から出たい!とブレない彼女の信念は、計り知れないパワーとなり、演劇を始めてみたり恋をしたり毎日を駆け抜けていくこととなる。
本名ではなく自分で作った名前を名乗る彼女を学校の先生や両親、いわゆる大人たちは現実逃避している様に捉えている。
だけどわたしは、ロックンロールに夢中な子が妄想でバンドを作っちゃうノリに近いと思った(わたしもよく考えていた)。
楽器もあんまりできない、実際には気の合う仲間はいない、なのに妄想の中ではバンド名も決まっていて活動までしている。
それって100%純粋な自分の理想。
だから彼女が自分自身にレディ・バードと名付けて生活している姿は「気合入ってるな!!」と感心してしまった。
レディ・バードはありのままの自分の存在、居場所(サクラメント)を否定してでも未来を切り開こうとしている。
そしてどんどん自分の中の「イケてるorダサい」の区別みたいのが出てきて、得体の知れない直感に正直になっていく。
それが明確になっている場面が、親友だった子と距離をとってイケイケな女の子つるみはじめるレディ・バードの姿。
でもそういうことってある。わたしも考え方が変わったりすると「あぁ今はあの人と会いたくないなぁ」と思うことがよくあるから(笑)。
それにティーンエイジャーが外の世界と繋がれるきっかけになるものは、好きになった男の子だったり、バンドのライブだったりするけど、
そこでかっこいいものを見る/見つけると、自分を見つめ直すじゃないけど「今の自分はイケてるのか?」って思ってしまうことってある。
「もしかして今の自分はイケてないんじゃないか?」みたいに思って、どんどん追求する故、考えも友達も乗り換えていく、みたいな。
でもそれが自分にとって間違いなのか正しいのか、その時にはわからないものなんだよね。もう突き進むしか選択肢がないみたいな。
こうやって自分の理想に向かってエスカレートしていく感じが、わたしも通過した10代の日々と同じだなって感じた。
まあ今もかっこいいものを見ると「自分どうなんだ?!」と相変わらず思っちゃうけど(笑)。
この映画で核となっている「母と娘の関係性」をレディ・バード目線で作っているところがとってもナイスなポイントで、だからこそ、わたしはストーリーをリアルに感じれた。
彼女が1年弱で少しずつ落ち着く様子、女の子特有の切り替えの早さ、すぐ忘れて次に進む力がしっかりと描かれているからとっても共感できた。
わたしの17歳は2年くらい前。
振り返るほど時間は経っていないけど、当時は想像もつかなかったことをしている今。まさに最近はアルバム制作とか。
こんなにステキな曲が自分から生まれるって17歳のわたしは知らないんだもんなぁ、、、!
ほんとうに10代の女の子の1年ってあまりに濃い。
毎日感情も表情も変わっていく。
草むらを歩いたり、星を眺めたりしていた時間。
全てを悲観的に受け止めちゃって毎晩のように泣いたりしていたことも今じゃ意味がわからない。 だけどそういう日々があっての今のわたし。
映画の中でレディ・バードが、はじめてできるボーイ・フレンドと草むらにねっ転がって「2人の星はどれ?」なんて会話をして、彼女が星に「ブルース」って名前を付けるところが、今のわたしにはもうちょっぴり恥ずかしかったり。
わたしもレディ・バードもまだ理想を追い求めている最中。
だけど映画を観て、人生の第1章(0歳~20歳とわたしは思っている)で自分が下した決断、理想が突き動かした行動は何よりも掛け替えのない時間だったということを改めて教えてくれた気がした。
理想を追い求めているときが一番輝いている。
自分のことを思い出してもレディ・バードを観ていてもそう思えた。
『レディ・バード』(原題:『Lady Bird』)
監督・脚本:グレタ・ガーウィグ
配給:東宝東和
出演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、トレイシー・レッツ、ルーカス・ヘッジズ、ティモシー・シャラメ、ビーニー・フェルドスタイン、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ロイス・スミス
6 月 1 日(金)より、TOHO シネマズ シャンテ他にて全国ロードショー
映画『レディ・バード』予告

2018年7月25日(水)リリース
FLCF-4515/2,400円(税込)
<収録曲>
1.アフター・ストーリーズ
2.世界の外のどこへでも
3.ロング・グッドバイ
4.Nobody Else
5. FLYING BOYS
6.恋は夢の中
7.メェメェ羊とミルクチョコレイト
8.ナイトロジー
9. Wolf Moon
10.海へ行こう