Drop's 中野ミホの「まほうの映画館」
第四回「なんにも言わない永遠、スティルライフオブメモリーズ」
こんにちは。
八月……暑いぃぃ!
あぁ、先月と同じ書き出しになってしまいましたが、
ほんとに暑いですね。
みなさま無事でしょうか……?
これだけ暑いので、
毎日アイスを食べても許されるということにして、なんとかやっています。。
はい、そんな八月。
今月は、現在公開中の日本の映画をご紹介しようと思います。
ちょっととくべつ。
『スティルライフオブメモリーズ』
2018年、日本の作品です。
監督は、矢崎仁司。
そうなのです、!
われわれDrop’sが、2016年に主題歌を担当させていただいた、
映画『無伴奏』の矢崎監督の、あたらしい作品です。
(『無伴奏』、ほんとうに大好きで、大事な大事な映画です、ぜひ観てみてください。
Drop’sの「どこかへ」流れます!!くーー。)
映画のストーリーは、
山梨県立写真美術館で働く怜(永夏子さん)が、
たまたま足を運んだ東京のギャラリーで、
写真家の春馬(安藤政信さん)の作品に強く心を惹かれます。
彼女はすぐに彼に連絡をとり、撮影を依頼します。
その依頼とは、
「何も訊かないこと」「ネガをもらうこと」を条件に、
自分の性器を撮ってほしいというものでした。
突然の依頼に戸惑う春馬でしたが、
何度か撮影していくうち、しだいにどこか惹かれあい、のめり込んでいきます。
そして彼女を通して、かつて一人の女性の性器を2年間撮影し続けた画家・写真家、
アンリ・マッケローニの存在を知ります。
そして自分の作品として、完成させたいと思うようになります。
一方、春馬の妊娠中の恋人、夏生(松田リマさん)は
春馬と怜の創作作業に立ち入れず、複雑な気持ちを抱いてゆきます。
そんな三人のうつりゆく日々の物語。
最初にこのテーマを知ったときは、
そんな映画が……!!と正直思ったし、
アンリ・マッケローニという人物にもとても驚きました。
だけど矢崎監督のこの映画を観て、
なんだかとても静かで、深く、自然な美しさにみちていて
不思議な気持ちになりました。。
ただただ女性器を撮り続け、撮られ続ける二人は
言葉は少なくても、同じ孤独を抱えているような、
その行為の先に、「生きる」ことを必死に見出そうとしているような気がしました。
恋愛感情ではないところで惹かれあっているような。
のこったセリフ、(一語一句正確ではないけれど)
「バスを待ってる人って、いいですよね。バスは時間通りには来ない。でも必ず来る、まるで死を待っているみたいだ。」
とか、
「夕暮れに撮影をするのは、光が変わっていくから。
一秒ずつ闇に近づいていって、やがてとけていく。」
とか。
怜も彼の写真について、「時間がなくなるみたい。」
「耳を澄ましたくなる。」とか。
なんだか独り言みたいにさみしげで、
だけどそれが確かに、二人を引き寄せていくような。。
モノクロとカラー、水の音、森の中。
ふと途切れて、また動き出す時間。
画面の真ん中に登場人物が立っている画がとても不思議で、印象的でした。
そして安藤政信さんの眼差しが美しくて、すいこまれたー。
水に顔を横たえるシーンはなんだか、
『デッドマン』のジョニー・デップを思い出しました……(ただ好き)
『無伴奏』を観ても思ったのですが、
エロティックな感じはあまりしなくて、
もっと純粋な、人のからだの美しさ、深さ、強さみたいなものを感じたなぁ。
女性器、というのはとてつもなく大きな、母なる存在で、
本当に永遠に答えのない大自然みたいなものなのかなぁと思いました。
怖くもあり、優しくもある。
女性は自分で自分の性器を見ることはできないし、
赤の他人に見せることなんて普通はないけれど、
彼女はその一番の秘密を、奥を、
写真に残してもらうことで、強烈に、生を確かめようとしたのかな。
生まれてくる子ども、
そして寝たきりの怜の母親。
登場する女性たちの性、死、生。
うーん、考えても見つかる答えはないけれど、
静かに、とても自然に入ってくる映画でした。
そしてこれもまた、ピアノの旋律が素敵だー。
矢崎監督の映画をまたこうして映画館で観ることができて
本当に良かった。とてもとても素敵な、大好きなかたです。
『無伴奏』とあわせて、
ぜひ観てみてください!
では、またね。
来月はもう、夏の終わりの気配かなあ〜。
(希望)
『スティルライフオブメモリーズ』
監督:矢崎仁司
2018年:日本
全国順次公開中
http://stilllife-movie.com