Drop's 中野ミホの「まほうの映画館」
第五回「色のないビーチ、思い出の緑いろ。追想。」
9月ー。だいぶ過ごしやすくなりましたね。
よしよし。
でもなんだか、あれ、夏らしいこと全然しなかったなぁ〜と
ちょっぴり寂しい気持ちになっている今日このごろです。ぴり。
さて、今回はそんな夏の終わりに、切ない一本をご紹介します。
映画館で観てきたよ。
『追想』(原題『On Chesil Beach』)
2017年、イギリスの作品です。
原作は、イアン・マキューアン作の2007年の小説、『初夜』。
イギリスでベストセラーになった作品なのだそうです!
主演は、近年、『ブルックリン』『レディ・バード』などで
凛とした存在感を発揮しているシアーシャ・ローナン。
そして舞台やモデルなど幅広く活躍しているビリー・ハウル。
舞台は1962年のロンドン。
厳格な父親をもち、裕福な家庭環境で育ったバイオリニストのフローレンスと、
脳に損傷を負った母親を抱え、歴史学者を目指しながら暮らすエドワード。
偶然に出会い、一目で恋に落ちた二人は、
階級の違いや困難を乗り越えて、ついに結婚することに。
結婚式を無事終えて、ハネムーンで向かったチェジル・ビーチのホテル。
二人は初夜を迎える緊張感から、なんだかぎこちなく、気まずくなってしまいます。。
そしてあることをきっかけに二人は口論になってしまいます。
二人の未来はどうなってしまうのか。。
「スウィンギング・ロンドン」が始まる前の時代のロンドン。
若い恋人たちのお話です。
もうこれはですね、
うーー。涙
という感想です……。
セリフや役者さんの表情ひとつひとつが、
絶妙な感情のゆれだったり、変化を丁寧に描いていて、
若さが、もうなんか苦しいほどにまっすぐだった。
ひとつひとつがガラス玉でできてるみたいな。。
あぁーこの気持ちよ……!ってなります。
彼の少し野暮ったい感じと、キュートな甘さの入りまじった表情。
彼女の、堂々として凛とした瞳。聡明な横顔。
どちらもどこか大人になりきれていなくて、
純粋すぎて胸がいたくなるのです。うぅー。
そして、1960年代という時代。
イギリスでも、
若者を抑圧する力、今の時代よりもっと大きな壁、
それを打ち破ろうとするエネルギー。
そんなものが渦巻いていたんだろうなと思いました。
その時代の
ファッション、建物、車なども個人的にとてもツボでした!
イギリスの緑(自然)っていいなぁ。
ピーターラビットの世界みたいな。
フィルムで撮影されたという質感も素敵。
あとね、やっぱり音楽!
彼女と彼が、
クラシックとロックンロールによって対照的に描かれているのです。
二人にとって音楽はとても重要な役割を果たしていて、
劇中で音楽が流れ出すとドキドキします。
特に、後半のAmy Winehouseよ……!涙
(観てほしい)
やっぱりいつでも恋と音楽は切っても切れない関係。まちがいない。
なんだかねー、
愛し合っていたはずなのに、誰よりも幸せなはずなのに、
小さなことから何かが狂ってしまったり、こわれてしまうことって、ある。
それは男と女だからなのか、時代や環境のせいなのか、
気持ちの問題なのか、それぞれだと思うし、わからないよね。
結局、この二人は別々の道を歩むことになってしまうのだけれど、
二人がお互いを想う気持ちは他の誰とでも感じることはできない、
かけがえのない宝物だったんだろうな。
もう出会うことはできないような、人生を豊かにしてくれるような思い出。
何が幸せかなんてわからないし、本当に相手のことを思いやるって、
とても難しいことだけれど、
過ごした時間、そのときの気持ちは全部本物で、
ちゃんと残っているんだよね。
それが最後のシーンに全てでていたから、
ものすごく泣けました。。
特に彼、エドワードの涙は本当に美しかった。
なんか観ている最中、観終わった直後、そのあとぼーっと考えるとき、
どんどん印象が変わっていったなぁ。
若さとか、男と女とか、時代とか、結婚とか、
色々考えさせられる作品でした。
ほんとに役者さんが素晴らしかった〜。
いやー、切ないよう。。
まだ上映している地域、これからの地域もあるみたいなので、
ぜひ映画館で、大きな音と美しい大画面で!笑
観ることをおすすめします。
ではまた、
もう秋になるね、
みなさま風邪などひかぬようー。
バイ!
『追想』
監督:ドミニク・クック
2017年:イギリス
全国順次公開中
http://tsuisou.jp