Drop's 中野ミホの「まほうの映画館」
第十回「もうなんだって、踊ればいいじゃない。ジャズ大名。」
みなさま、ごきげんよう~。
二月。あったかくなったり、寒くなったりしていますが、
東京はちょっとずつ春に向かっている、気がする!
この間ふと思ったけど、やっぱり「春」のパワーってすごいなぁ。
ちょっとでも、空気のなかに春の気配を感じたとき、
どうしてもドキドキして嬉しくなってしまう。
大人になるとよけいに春が嬉しいような気がします。
春来るよーもすこし。よしっ。
さてさて、今月はそんなハッピーな(?)気持ちになる傑作映画!
『ジャズ大名』をご紹介。1986年の日本映画。
監督は岡本喜八。原作は筒井康隆の同名小説。
南北戦争の終わり。黒人奴隷だった四人組が、解放され故郷のアフリカに帰ろうと船に乗り込みます。
彼らの手にはトロンボーン、コルネット、クラリネット、スネアドラム。
ですがある日、クラリネットの持ち主が船上で病に倒れ、
この船は西に向かっている、おかしい……と言い残して亡くなってしまいます。
実は船に乗せてくれた商人にだまされていたのです。
残された三人は命からがらボートで脱出し、流れ着いたのは幕末の日本。駿河湾の庵原藩の領地でした。
庵原藩の藩主、海郷亮勝(古谷一行さん)は、戦乱の世の中のことにはうんざりしていて興味がなく、
ちょっと下手な篳篥(雅楽で使われる管楽器)を吹いている、好奇心旺盛で気楽なお殿様。
黒人が流れ着いたと聞き、どうしても一目会いたいと家臣に頼み込みます。
そして対面した彼ら。三人はジャズの演奏を披露します。
しかも、亮勝が鳴らなくなっていたクラリネットのリードを篳篥の舌で代用して直し、吹き始めます!
国内の争いが過熱する中、亮勝は屋敷を片付けて他軍の通り道として解放すると言い放ち、地下室でセッションを始めてしまいます……。
まずね、岡本喜八監督の映画を観るの、わたし初めてだったのです!
以前から周りの映画好きな人たちから幾度となく名前を聞いていたのですが、
昔の日本映画って、観るのになんか気合いが要りそう……凄そう……。というなぞの偏見から、
なんとなく観ていなかったのです。。
ですが調べていて目についたこの『ジャズ大名』というタイトル。ジャズ大名……。
なんか気になってしまい、ジャズ好きだし面白そうだし、観てみよう!となって観てみました。笑
そしたら! なんですかこのかっこよさと面白さ。。
未知のかっこよさでした。ユーモアってこういうことなんだなぁ。
冒頭から、外国人がバリバリの方言でアフレコされていたり、シュールな字幕が現れたり、
効果音が絶妙だったり……驚きと笑いの連続!
登場人物のキャラクターもすごくいいのです。
主人公の海郷亮勝はもう、登場からめっちゃ素敵です。
戦乱の世の中に全然興味がなく、篳篥を吹いては実はみんなにうるさがられているのですが、
なんか妙に飄々として、説得力があって、お洒落。
彼の二人の妹、色っぽい姉の文子姫(神崎愛さん)と、男勝りな妹の松枝姫(岡本真実さん)もかわいい!
お屋敷の廊下をそろばんでシャーって滑る松枝姫さいこう!笑
岡本監督は、クランクインの前にカット割などを全てコンマ秒単位で決めてから撮影していたらしいです。
なるほど、テンポがとてもよくて、画面もすごく洗練されててかっこいいわけです。
ですがこの映画でやはり一番大事なのは、最後の大所帯でのセッションのシーン!!
これはもうカオスです。
一体何分あのシーンがあったのか……。
それまでの物語とかがもうとりあえず全部意味ないくらいの破壊力です。
楽器は琴や三味線、笛や和太鼓もあれば、桶に半紙みたいな紙を張って、
茶筅?をドラムのブラシみたいにして叩いたり、そろばんや洗濯板で音を出したり。愉快! 自由!
「ええじゃないか」の群衆とか、お坊さんとか、最終的には誰でも、なんでもあり。
頭上で激しい斬り合い、撃ち合いが起きてても、
明治時代が始まったことを告げる軍歌の行進が通り過ぎても、まだまだ演奏をやめない狂気ぃぃ~。
やっぱり音楽って、やばい。すごい。笑
人を苦しみから救い出したり、もはやわけもわからないくらい楽しくさせたりするんだなと、
改めて笑いながら思えます。いいぞー!
でもほんとにこんなお殿様がいたら最高だっただろうなぁ。
「黒かろうが白かろうが人は人!」と言って外国人を受け入れ、ジャズしてしまうジャズ大名。
一番最後の彼の「イェェイ!!」が最高! 輝きまくってる。
なんかほんとに素直に面白かったなぁ。
岡本喜八監督の作品、たくさんあるのでもっと観てみたい! ハマってしまいそうです。
戦争や歴史のことを扱った映画ってなんとなく、少し避けてしまいがちだったけど、もっと積極的に観てみようと思いました。
まだまだ知らない映画の世界が沢山あるなぁ~。
みなさんもぜひ、扉開いてみてくだされ。
それではまたね!
まだ寒いので風邪には気をつけるんだよー。
『ジャズ大名』
Drop’s「Cinderella」Music Video
LIVE INFO
- 2019年3月28日(木)東京・渋谷Lush
「SHIBUYA TSUTAYA presents Manic Room vol.1」
出演:Drop’s/Nakanoまる
OPEN 19:00/START 19:30 - 2019年4月7日(日)大阪・福島2ndLINE
Drop’s 10th Anniversary「Sweet & Muddycheeks」(Ms.April) - 2019年4月12日(金)北海道・札幌 Sound Lab mole
Drop’s 10th Anniversary「Sweet & Muddycheeks」(Ms.April)