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がらくたロボットのヤマモトダイジロウが綴るショート小説

がらくたロボット ヤマモトダイジロウの「1983」

2018/11/23

第七話「地下鉄」

ヤマモトダイジロウの1983 第七話「地下鉄」

電車がスピードを上げ、
次第に最高速度に到達する。
だけど、おれの苛立ちはメーターを振り切る寸前だった。

 

あぁ、なぜかって?

車内には数えられるくらいの人しか居なかったんだが、
座れるような席が一つもなかったんだ。

大っきなイビキをかきながら眠ってる人や

偉そうにニュースペーパーなんかをおっ広げて
何かブツブツ呟いてる人

窓に映る顔を見ながら
何度も髪の毛を直してばかりいる人

挙げ句の果てには若い恋人同士が……
いや、想像してくれ。これ以上は言わない。

そんな奴らが何食わぬ顔で堂々と何席をも占めてたんだ。

 

そんな中、おれはポリスのように、
(トランシーバーを持ってなく、カッコつかなかったが)
口に手を当て、So Lonelyを口ずさみながら
ゆっくりと、獲物を狙うような目で車内を横切る。

1番後ろの車両に着くと
やっとの思いで空席を見つけた。

ヤマモトダイジロウの1983 第七話「地下鉄」

ぐったりと席に沈み込み
ため息と同時に、
苛立ちがスッと抜けてゆくような気分。

ガタンゴトン
そんなわかりきった電車のリズムに
心地良く体が揺れる。

そして、
車内の暖かい空気を
肺の中いっぱいに吸い込んで、、、

吐いて、、、

 

吸って、、、

 

ジリリリリンッ!

到着のホイッスルに飛び起きた。
なんてことだ!
どれくらいかの間、眠っちまった!

あぁどうか憐れんでくれ。
いくつか前の車両で見た
あの人達と同じような顔をして
眠っていたこのおれを。

後悔に後ろ髪を引かれながら
電車を降り、駅を出た。

 

外に出て大きく深呼吸をして
すっかり暗くなった空を見ながら
足早にハシエンダへと向かった。


あとがき

The Timesの『This Is London』から「Whatever Happened To Thamesbeat」。
そうそう、まさにこのマークだ。アラン・マッギーがBiff Bang Powとかクリエイション・レコーズを始める前。この曲を聞くと、ホント列車が走り出すようなイメージが浮かぶんだ。次の行き先はマンチェスターってね。

Whatever Happened to Thames Beat The Times