がらくたロボットのヤマモトダイジロウが綴るショート小説

がらくたロボット ヤマモトダイジロウの「1983」

2019/3/22

第十一話「時計台」

がらくたロボット「1983」
新聞紙を投げ捨て、
静まりかえった街をすり抜けて行く。
目指す場所や、走る目的なんて持たず
いや、ホントは何が何だかわからなくなって
どうにも言い表せない感情を紛らわしてたんだ。

 

曇りきった空の下

ガランとした映画館の前

まだ点滅している「HEAVEN」のネオン看板

 

もう暗くなって
人影のない大通りをひとり……

 

一体どれくらい走ったんだろう。
帰り道なんかもとっくに忘れちまった。

 

走り抜けた道の先で、
おれはやっと立ち止まり天を仰ぐように見上げた。

そう、目の前には
天まで届きそうなくらい高い時計台が見えたからだ。

その時計台はというとだな
全くもって素晴らしく立派な佇まいなんだけど、
古代とまでは言わないが、
どこか古臭さがあるように見えた。

それと同時に
ずっと聞こえていた鐘の音は、この時計台からだったんだって
その時、初めて知り
おれは時計の針をじっくりと見つめていた。

あぁ、おれがシンデレラなら
鐘が鳴って、この謎めいた“魔法”が解けるのに……
なんて考えながら

そして、耳を澄ました。

建物の間を吹き抜ける風の音に

海へと流れ行く川の音に

そっと、

ただ、そっと、

がらくたロボット「1983」

その時、

 

ギーン!!ゴーン!!!

ギーン!!ゴーン!!!!

 

鐘の音が鳴り響いた!
それはもう、世界中どこに居ても聞こえるくらいでっかい音で。
思わず耳を塞いでみたんだけど、悲しくも無意味
おれの身体から全臓器まで震えさせるかのよう。
轟音に包まれ、意識はどんどんと遠ざかってゆき
時計の針は物凄い速さでぐるぐると回りだすんだ。
(信じられないだろう? だけどこれはホントの話なんだよ。)

そして、
ふと、こんなイメージが浮かぶ。
脈を撃つ拍動はショットガンで、おれの身体を何度も何度も乱れ撃ち
頭の中はぐわんぐわんと揺れる絶叫コースターだった。

 

あぁ、こんな気分になった事があっただろうか。

もう完全にコントロールを失い

そう、

おれはぶっ倒れてしまったんだ!

 

ぼやけてゆく意識の中、
はっきりと見た。

時計台よりもずっとずっと高いところに浮かぶ月を。

 


あとがき

The Police「Synchronicity Ⅰ」。このお話にぴったしの曲さ。ポリス最後のアルバムがこの曲で始まる。それは時空間であり、心や知覚的であり、聴く人に依存したりしない……とか言いながらも、あまりわかっちゃいないんだけどね。
鐘の音が鳴り響いた瞬間、この歌が聞こえてきたような気がしたんだ。スティングの声がかぶさって来るみたいに。

The Police- “Synchronicity I” LIVE