カタヤマヒロキの「食べロック」
第5回:「ひょいっ、ポイッ、ぐび」
食べ物に重要な要素なひとつとして、「サイズ」がある。
外国の規格外の食べ物にはテンションが上がるし、飲食店などでつい「大盛でおねがいします」と言ってしまう時もある。
ただ、どちらかと言うと、自分は「一口サイズの食べ物に惹かれる傾向」にあるのだと最近ふと自覚した。
思えば、幼少期からそうだった。
駄菓子に例えると、特に小さくて、一口で食べられるものを無意識に選んでいた気がする。
駄菓子の10円コーナーに小さなものが沢山ある。
小さなクチビル型のグミ、一口サイズのおやつカルパス、らあめんババアが小分けで入っていて、おそ松くんのイヤミに限りなく似たキャラクターがシェー!と、かましている『ヤッター!めん』など。
言い始めたらキリがないのだが、そんな一口サイズの駄菓子を、うじゃうじゃ買うのに多幸感を得ていた。
今でも駄菓子屋を見つけたら、うじゃうじゃと買ってしまう癖がある。
『よっちゃんイカ』を10袋単位でガサッ!と鷲掴みにして、小さなカゴに入れる気持ち良さ、ったら、ない。成人男性がよっちゃんイカをニヤケながら爆買いしている姿はさぞかし不審なものだと思う。
そんな、よっちゃんイカは以前に1袋に1点の応募券が付いていて42点を集めて応募すれば、遊園地券が当たるといったキャンペーンをやっていた。
1袋13gなので、546g。ペットボトル約一本分の重さのよっちゃんイカを数日で食べ切った。
寝ても覚めても、よっちゃんいか。
酒を飲みながら、よっちゃんいか。
小さな頃は袋を開けてそのまま口にガサッと流し込んでいたが、酒のアテにする時は一旦袋から全てを皿などに出して、ひょいっ、と掴んで、ポイッ、と口に投げ入れる食べ方が好きだった。
「♪ あ~~らヨッちゃんのーォ す漬いか
するめじゃないよ酢漬けイカ
あらヨッちゃんの す漬いか 」
よっちゃんイカの歌がリフレインしていた。
眼をつぶると、よっちゃんの顔が浮かんだ。
「……よっちゃん、僕はいったい何をしてるんだろう」
パッケージをよく見ると、よっちゃんがなにか赤いモノを引っぱっている。その赤いモノが自分の魂のように感じ、よっちゃんは不気味な笑みを浮かべて、グイグイ、と自分の魂を引っぱっていた。
その後、無事に応募することができたが、残念ながら、当選はしなかった。だが、日頃から、よっちゃん食品会社には感謝の気持ちでいっぱいだったので、応募とともにハガキに感謝の意とよっちゃんイカのイラストを描いて送ることができたというだけで、満足だったことを覚えている。
よっちゃんイカ中毒は今でも続いている。
話を戻そう。
そうだ、一口サイズ、だ。
もちろん男子としてデカ盛りに憧れる気持ちもなかったわけでは、ない。大きな丼に、これでもかっ!と乗せられたラーメンであったり、海鮮丼であったり、トンカツ…。
だが、一口でポイッと口に入れる快感。
その行為が好きだ、と再確認した食べ物がある。
それが「細巻き」なのだ。
マグロの赤身を巻いた鉄火巻、
かんぴょう巻いた海苔巻き、
キュウリを巻いた鉄火巻き、
たくあん漬けを巻いた新香巻き、
すき身とネギを巻いたネギトロ巻き……。
「細巻き」を食べる上で必ず忘れてはならないことがひとつだけある。
ビールと一緒に、なのだ。
細巻きに夢中になったキッカケがある。
それは、とあるバンドの先輩が寿司屋で握りを食べてる最中に、おもむろに細巻きを頼んだのだ。
やってきた細巻きたち。
先輩はそんな細巻きをひょいっ、と掴んで、口へポイッと放り込んだ。そして瓶ビール、ぐびぐび。
「……。」
またひょいっと掴んで、ポイッ。ぐびぐびぐびぐび。
「……ごくり…。」
ガリを挟んで、ポイッ、ぐびぐび、ポイッ、ぐびぐび、ぷはーっ。
「…すっ、すんません!そのー、細巻きを、ひとつ頂いても、い、いいっすか?」
我慢できる訳がなかった。
大人になって、改めて味わった細巻きは格別だった。瓶ビールと合わさって、幼少期の記憶と違い、完成された“おつまみ”と化していた。
「…へへ、細巻きをポイポイっとやりながら、ビール飲むのって、俺、なんか妙に好きなんだよ。」
その人はニヤリとして、そう言った。
格好いいと思った。
そして、細巻きには種類が想像以上にあった。
穴子とキュウリを巻いたアナキュウ巻き
トロと刻んだたくあんを巻いたトロたく巻き
梅肉とシソを巻いた梅シソ巻き
他にも、納豆巻きや、わさび巻き……。
まだまだあるだろう。
細巻きに無限の可能性を感じた。
ひょいっと手で取り、ポイッと口に入れ、瓶ビールを、ぐびぐび。
「ひょいっ、ポイッ、ぐび。」
これが、大事なのだ。