カタヤマヒロキが「食」と「ロック」を綴る異色コラム

カタヤマヒロキの「食べロック」

2019/2/8

第10回:「!?…………え……うま……。」

本当に良いライブを見たとき。

人は、どう感じるだろう。

私の場合はひとことで言うと「感動」する。

漫画「宮本から君へ」の帯に書いてあったキャッチコピーが素晴らしくて記憶に残っている。

『人は感動するために生きている』

そうなのだ。感動したいんだ!

心を揺さぶって欲しい。ときめきたい。

それは誰にだって、常にある欲求。

そして、この「感動したい」という感覚は何事にも通じている。

音楽、映画、書籍、ファッション……etc

食べ物に関してもそうだ。

本当に美味しいものと出会ったとき「感動」する。

 

「!?…………え……うま……。」

口に入れた瞬間を文字にすると、こんな感じだと思う。

やはり美味しいものを食べたいという普遍的な欲求を紐解いてゆくと、感動したいという欲求がそこにいるのだ。

連載が始まって今回で祝10回目なので、ここ最近で最も感動したものについて書いてみようと思う。

 

単刀直入にいうと、それは肉。それも焼肉。

肉について書くのも意外と初めてだということに気付く。

 

「(食べ物)なにが好き?」

と聞かれると、肉と即答するようにしている。

まず、小さい頃から外食するといえば寿司か焼肉の2択だった。

家族の好みもそうだったが、地元の大分県別府市では飲食店も多くなく、大体寿司か焼肉だった。

いつも行く焼肉屋は決まって1店舗。

焼肉=その店。なにかあるといつもその店だった。運動会の後や、入学式、卒業式……。

上京して、何度も焼肉屋へ行ったが、どうしてもその店を上回る感動はなかった。

だが、去年の暮れに行った焼肉屋が凄かった。

それは鶯谷にある老舗焼肉屋「鶯谷園」。

食べログの評価も4点超えの人気店!

完全予約制で、肉の予約もしておかないとバンバン品切れになってしまうこの店。

そんな、鶯谷園へやっと行くことができた。

その日はできるだけ万全の状態で肉に挑みたかった為になるべく腹に何も入れずに耐えた。

店へ着いた頃は極限の空腹状態だった。

カタヤマヒロキ

まずは、焼肉といえば生ビール。
キンキンに冷えたアサヒの大ジョッキで喉を潤す。

すると、チャンジャとたん塩がやってきた。

カタヤマヒロキ

レモンにたん塩をつけて一口……。

「んまあい!!」

とろけるたん塩に思わず唸っていた。

そして、予約しておかないと品切れになるという特上ランプ(¥1300)と特上ロース(¥1200)

じゅわ……じゅわ……

網の上で肉汁を溢れさせている。はやる気持ちを抑えて焼けるのを待つ。

ごくり……

そしてひと口……

失敗だと思った。極限に空腹な状態でやってきたのは、失敗だった。もう何を食べても旨いのだ。この時点ですでに冷静さを失っていた。

そして、驚くべきはこの値段。他ではこの値段では食べられないクオリティだ。この店がこれだけ人気な理由がわかった。

次はとうとう今夜のメインディッシュ。

特上ヒレ(¥1800)がやってきた。

まるで上質なステーキ。

じっくりと、大切に、焼き上げる。

そしてひと口噛むと、じゅわっと肉汁が溢れて、サクッと切れる。

「!?…………え……うま……。」

本当にこうなってしまった。

それと、もう一つ忘れてはいけないのは、ここの“たれ”のうまさ。スタンダードなたれに加えて、“梅だれ”という珍しいたれがあり、これが肉をさっぱりさせてくれ、極上な旨さとなる。

また、生卵を頼んで“すき焼き風”にして食べるのも美味しかった。

最後は透き通った美しい冷麺で〆

店を出て、鶯谷を歩いた。

鶯谷という街は、どこか地元と雰囲気が似ている。

雑多でレトロな街。

汚くて、落ち着く街。

地元をふと思い出した。

久々に地元に帰ってみようか、いや、まだ胸を張って帰れない。

もっとこの街で成し遂げなければいけないことがある、と、気を引き締めて、そして膨らんだ腹を抱えて帰路へついたのであった。

 

加山雄三/お嫁においで (1966年)