カタヤマヒロキの「食べロック」
第14回:「バル的インド料理で臨死」
その日、江東区木場駅に降り立ったのは21時頃だった。
「久々にこの辺に来たなあ……」
さも、昔はよく木場を闊歩していたかのような口ぶりだが、実はまだ数える程度しか来たことのない町、木場。
だが、その一回一回の濃度が高く、木場、そして隣駅の門前仲町あたりに来た際は色々な居酒屋をはしごして、大概泥酔していた。
そんな魅力、いや、酒力を感じる町だ。
以前ここで記したホッピーの聖地「河本」もこのあたりで、呑兵衛にはたまらない下町、といったイメージ。
今回この土地にやってきたのは、とあるお店が目的だった。
そこは「タンドールバル カマンプール」
カレーやナンがメインのインド料理だ。
食べログでは、百名店にも選出されており、あの『孤独のグルメ』でゴローさんも訪れている。
いわば聖地巡礼なノリもあった。
店に着くと、店名にバルと付いてあるとおり、酒を飲みながらカレーや一品料理を楽しんでる人で溢れていた。
又、シックでお洒落な内装だった。
カウンター内には「この人たちが作るカレー絶対うまいっしょ……」的なインドの方々が数人。
兎にも角にもビールで乾杯したあとに、まずやってきたのは「ひよこ豆のサラダ」
ひよこ豆と角切りのタマネギに酢がサッパリと効いていて、これからカレーに挑むにはピッタリな食欲を増進させるサラダだった。
そして、本日メインディッシュと言っても過言ではないくらい楽しみにしていた「チーズクルチャ」
「んんんんんんん……まっ!」
訳の分からない頭の弱い発言が飛び出した。
インド風のピザ。今までにチーズクルチャが美味しいと評判の店で食べたものより数倍美味しかった。
生地にたっぷりチーズを包んで、自家窯で焼いていた。
程よくガーリックが効いていて、生地が甘くて、ツマミにもなるクルチャ。
この破壊力でハートはぶっ壊れた。
お次は「ブナ オイスター」
孤独のグルメでも出ていた牡蠣のスパイス炒めだ。
各種スパイスと牡蠣が限りなく香ばしい一品だった。
ライスやナンに付けて食べたいくらいオイルに旨味が滲み出ていた。
待ってました。
「ラム肉のクミン焼き」
じゅわ……
規定概念を覆す柔らかさ。
この辺から白ワインに切り替えたが、ワインと滅茶苦茶に合う。
「タンドリーチキンミックス」
ラムにも付いていたが、緑のミントソースがこれまた極上……。
ミントの葉やヨーグルトの酸味が肉ととても合うのだ。
そして、また肉の柔らかさに驚く。
「鴨肉のタンドール焼き」
「ラッサム」
カレースープのようなもの
実はこれが一番旨かったかもしれない……。
「バスマティライス」
インディカ米
「ラムミントカレー」
きたあ……。
とうとうやってきました、ラムミントカレー。
ミントのカレーなんて初めて食べたが、カレーのスパイス感をミントが爽やかにしていて、その中にラムのパンチが混在した逸品。
「ふふっ……」
思わず、静かに笑いが込み上げた。
そして、気になっていた「牡蠣チャーハン」も食べる。
最後にチャイを飲んで終了。
ワインは2本ほど空けて、デザートも食べて、実はラムミックスはおかわりもしていた。
これだけの量を食べられたのは味が想像のハードルをひょいっと飛び越えてきたから。
それと、ふんだんに使用されていたスパイス。
このスパイスのお陰で、油を多く使った料理に胸焼けせずに最後まで美味しく食べられたのだと思う。
インド料理屋で飲む、という経験はあまりなかったが、これは癖になりそうだった。
「また木場にやられちまった……」
気付いたら2軒目のカラオケで、
森進一「襟裳岬」をへべれけで歌いながら思ったのであった。
~♪
日々の暮しは いやでも
やってくるけど
静かに 笑ってしまおう
口に入れた瞬間BGM
森進一「襟裳岬」
1974年1月リリース作品
LIVE INFO
- 6月15日(土)高田馬場AREA
OPEN 18:30/START 19:00
前売 3,500円/当日 4,000円