但野正和の「闘いはワンルームで」
第20回:「あしたのためのその1 まずは風邪を治すべし」
体調が悪い。
症状としては、主に風邪の諸症状だ。
もうかれこれ5日目になる。
ここまで長引くことは、我が生涯でも非常に珍しい。
原因は早めの対処が出来なかったことと、発熱が無かったことにある。
先週、東京でライブをおこなった。
翌朝、起床すると喉への激痛と、身体中に痛みを感じた。
ただ、ライブ後というのは喉を傷めることもあるし。ステージ上を駆け回ったことによる後遺症で、多少なりとも身体は痛むものだ。
そうして風邪の諸症状だとは気付かず、多少のヤンチャをした。(薄着のオシャレ、夜更かし、菓子食い、etc)
結果。その翌日には、寒気と鼻水とフラつく脳が新たに追加されていた。
ここに熱があればすぐに病院案件だったのだが、ほぼ平熱(ただし自分の平熱は把握していない)だったことと、身体中の痛みはライブ後の後遺症だろうとまだ思い込んでいたため、市販のクスリとニンニクとポカリ。そして厚着で布団に包まっての大量発汗で、明日には治ると読んだ。
そうして私は数日間これを繰り返し、日々を無駄にした。
3月19日現在、まだ改善は見られず。本日やっと病院に行き、大量のクスリを処方されたところだ。
一度もスタジオに行っていない。
1日休めば自分に分かる。2日休めば周囲に分かる。3日休めば聴衆に分かる。
終わった。
俺はもう終わった。
病気時によるネガティヴシンキングに加わり、「寝たきりで過ごした数日」という確かな裏付け。
嗚呼、さらに思い出してしまった。
先日のライブで、体力不足により悔しい思いをしたばかりだったため。
また体力トレーニングを始めようと決めたんだった。
これでは体力は落ちてゆく一方。
不甲斐ない!
生まれてきてごめんなさい!
そういえば昔ランニング仲間の友人に教えられたことがあるのだが、
「風邪を理由に走らない奴はダメな奴だ」と、辰吉丈一郎がインタビューで言っていたらしい。
いや「雨を理由に」だったかもしれない。
どっちだったっけ。忘れた。
体調と天候には雲泥の差がありそうだが。俺はダメな奴なので、風邪でも雨でも走らない。
ところで俺はボクサーでは畑山隆則が好きなのだが、
(ちなみに総合格闘家では須藤元気がダントツに好き)
名前を出したのだからと、辰吉丈一郎について調べてみたところ、実は未だ現役のボクサーという事実に驚愕。
『ジョーのあした』という彼のドキュメンタリー映画の存在は知っていたものの、これは早急に観なアカンなと決意。(ちなみに現時点でコラム提出の〆切を過ぎているため、今からツタヤに行く時間は無い。あと体調悪い)
見切り発車で書き始めた文章であったが、ちょうど良いところに辿り着いてくれた。
僕らにはあるじゃないか。
闘う漢の教科書『あしたのジョー』があるじゃないか。
と、さも昔からの愛読書のように言ってしまったが。
俺はリアルタイムなジョー世代ではなく。この作品を知ったのはとっくに成人してからである。
(ちなみにリアルタイムなスポーツ漫画は圧倒的にスラムダンクである)
読む前のイメージは
「立て!立つんだジョー!」と絶叫する鬼コーチの丹下段平。
まず、読んで一番に覆されたのだが、丹下はこの台詞をほとんど言っていない。
(ETの本編で指をくっつけるシーンが存在しないほどの衝撃)
序盤でこそジョーにボクシングを始めるようしつこく付きまとうのだが、途中からはジョーを心配ばかりしていて、それはまさに闘拳狂いの息子に振り回され続ける人の良い父親なのである。
立てー! なんて言いそうにも無い。ハラハラしてばかりだ。クレイジーな眼帯野郎かと思えば完全にツッコミ役だし。
あと恐らく読者が大好きなシーンの上位にランクインするであろう。
「マンモス西、深夜のつるとんたん事件」というのがあるのだが。
ボクサーの宿命である減量の厳しさも生々しく描かれており。(力石の鬼の減量は必見!)
マンモス西というのは、ジョーと共に丹下闘拳クラブに所属するボクサーなのだが、なにかと人間味溢れる可愛い奴であり。
減量メニューに耐えきれなくなった彼は、ジョーと丹下が寝静まった夜中に、こっそりジムを抜け出し、屋台のうどんを食いに行ってしまう。
さぁいただきますってところで、背後のジョーに声をかけられブン殴られるのだが。
このシーンこそが、己との闘いの厳しさが詰まっている。
己に負けそうなときにこそ俺はこのシーンを思い出す。
マンモス西である現状の自分から、憧れのジョーになってやるんだと。
俺はまた、うどんが食いたくなるのである。
嗚呼、俺はまた肝心なことを書かずに文字数だけが積み上がっていく。
ボクサーというのは、リングの上ではどこまでも独りなんだと丹下のオッチャンは教える。
しかし矢吹丈はリングを降りてもどこまでも独りだった。
ライバルであり、密かに尊敬の念を抱いていた力石を己の拳で殺し、荒れるジョー。
ジョーに想いを寄せる紀ちゃんから、ボクシングを辞めるよう諭される。
それでもボクシングそのものが己であるんだと言い放つジョー。
白木葉子から、パンチドランカーであることを指摘されたジョーが言い放った「それがどうした」というひと言。
闘う漢の真髄!
これこそバイブル!
今日はクスリを飲み、早く寝る。
明日も体調が良くならなかったら、あしたのジョーを久々に読むとしよう。
先日の東京。リハ後に闇雲に走っていると、神田川を発見。観光はせずとも偶然にこういう景色を観られるのもツアーの醍醐味。赤い手拭いをマフラーにして西永福JAMに戻った。
DOUBLE SIZE BEDROOM「模倣犯深夜革命」
LIVE
DOUBLE SIZE BEDROOM
4月27日(土)東京 西永福JAM
6月15日(土)札幌 芸術の森 MOMENT KINGDOM
但野正和弾き語り
4月4日(木)札幌LOG
「どうしてそんなに扉を叩くんだい」
出演:奥山漂流歌劇団/ワタナベシンゴ/但野正和
4月13日(土)東京 豪徳寺lieaf room
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