但野正和の「闘いはワンルームで」
第3回:「略して、スズ」
SNSなんぞを眺めていると。たまあに、「炎上」と呼ばれる類のものを見かけることがある。
例えばミュージシャンにしても。
誰かと誰かがぶつかり合ったソレを。どちらが正しい、こちらが正しいと大勢で祭り上げている。
そんな風景を目にする度に、ひとりのミュージシャンを思い浮かべてしまう。いいや、あれはファイターと呼ぶべきか。
奴なら、どんな言葉でそれをカッ飛ばしてくれるのだろうかと。
ライブハウスでは、同日に複数のバンドが出演し、対バン形式でライブが行われている。
ステージにあがる出演者は、当然それぞれの性分があるので。どの様な心持ちでライブを行うか、それは千差万別で、決まりもない。
あくまで俺が出会ってきた人の話にはなるが。「他の出演者には負けたくない」と言う姿勢の人が多かった。要は「ライブは戦場だ」と言う者。
無論、俺もそうだ。(「自己との闘い」についての詳細は省く)
俺が知る限り、話したことのある中で、誰よりもそれに純粋だと感じたのが。
名古屋のバンド「鈴木実貴子ズ」の鈴木実貴子だ。
なにが正しいと言う話は出来ない。やりようがない。
そして、あくまでも俺が感じている印象なので、正解では無い。(誰かのことを文章に書くのは本当に難しい)
そやつの闘いは、エンターテイメントではなく、常に本気の殺し合い。
闘いに情けは無く。馴れ合いを極端に嫌う。ヤラセ一切なし。嘘を許さない。サイコパス予備軍。(あくまでも俺が感じ…略)
いつだったか、じっくりと話をしたとき。
ニコニコと笑いながら「だって勝ちたいじゃん」と闘いの魅力を話すそいつは、バトル漫画の主人公のような純粋さ。
しかし、息の根を完全に止めに行くバトルスタイルは、どちらかと言わずとも、完全に悪役のソレで。
その精神性に死角は無く。
自分には備わらなかったその格好良さを、本気で羨ましく思った。
(俺は、負けることを恐れないのか?と情けない質問ばかりしていた)
初めて会ったときからは随分と月日が流れ。すっかり俺は一方的に友達だと思うようになったが。(こういうことを素直に書いていると。鈴木実貴子ズの2人に比べると、俺はとても純粋で可愛いなあと思える)
奴らのライブを観るときにはグッと身構えてしまうし。
自覚している自分のズル賢さに、後ろめたさを感じている夜には、目を覚まされる。感情が動く。
闘いにこだわり続けたい。
古着屋で700円だったから買ったが、頭部だけ派手なオジさんになったため。家用になった帽子