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Rock is(ロックイズ)

但野正和が「闘う男」をテーマに綴る月イチ連載コラム

但野正和の「闘いはワンルームで」

2018/2/21

第7回:いつも心に御堂筋翔くんを

曲を作らねばならない。
「曲を作らねばならない」なんてよくよく考えると妙な言葉で、そんな状態がこの世界に存在して良いはずがないのだが。
今の私はまさにこんな状態で。
理由は一点のみ。音源を、アルバムを作りたいからだよ。世に出したいからだよ。

例えば
自転車競技部に所属する高校生は、己の全てを捧げてインターハイの頂点を目指している。たった一人しか存在しない一位。誰よりも早くゴールするため、朝も夜もペダルを回す。
勝てば全てが認められ。負ければ全ての努力が無駄になる。(御堂筋談)

自分にとってのインターハイを考えたとき。
毎回、最初で最後のつもりで全てを出し切って臨むライブもそうなのだが。
音源のリリースこそが、インターハイと呼ぶに相応しいのではないだろうか。

己の全てを出し尽くし作りあげた歌を、一枚の音源にする。
発売されれば、たちまち明確な順位が付けられる。ほとんどは圏外。
アルバムなんて一年に一枚作れりゃ優秀で。
それはまさに、インターハイ。

(当然、ロードレースと違い。音楽は順位が全てじゃない。だが、結果を出していない俺がその言葉を使うのは情けない)

勝負がしたい。自分の感覚を音源に込め、そいつで勝負がしたい。
今の俺じゃあ勝負にならない。インターハイのスタートにも立ててない。
曲を作らねばならない。

芸術ってのには、漏れなく産みの作業が付きまとう。
曲が出来ない不甲斐なさったらもう。なんだか顔を上げるのも困難になってくる。空を見上げる勇気もなくなる。
メンバーや社長や親族、そしてツイッターでフォローしてくれている人々にすら申し訳ない気持ちになり。
スタジオに入ってもなんだか肩身が狭くなり。
送られてくるラインには既読を付けなくなり。
SNSも開けなくなり。(だが第3水曜のコラムの〆切はしっかり気にしながら)
遂にはギターにも触らなくなり。
盛り上がるオリンピックを尻目に、カーテンを閉め切った部屋の中、なにをしていたのかと言うと、チョコパイを食べながら、ひたすらNetflixで弱虫ペダルを観ていました。本当にごめんなさい。

 

この回を観たら、投げ出しちまったメロディをもう一度考えてみよう。
この回を観たら、ノートを開こう。
この回を観たら、半端に浮かんだままのリフを形にしよう。
この回を観たら…。そうしてズルズルと。
もう完全にね。放送中の回に追いついちまったよ。

だってね。京都伏見の御堂筋くんが凄いんだよ。
勝利の欲しがり方が。
感情も友情も、勝つために必要ないもんは全部捨てて。
その挙句、「まだ捨てれるもんあったわ」って髪の毛切って坊主になっちゃったりするんだもの。

よし、劇場版観よ。

 

但野正和の「闘いはワンルームで」

愛機にも御堂筋翔くんを


但野正和 NEW PROJECT「DOUBLE SIZE BEDROOM」
MV「まるくなった」